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息子との絆を深める最高の方法~走って、涙し、笑って、、、(ホノルルマラソン)

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 最初の給水所で離れ離れになった息子を見つけたのは、このホノルルマラソン(フル)のコースで最も長い直線コースを走っていたときだった。 15、6km付近だろうか。

 痛みをこらえて足をかばいながら歩く息子を次女がサポートしていた。既に日が昇り朝8時前。42.195kmのこのマラソンがスタートして3時間近くが経過していた。

 72歳になる私の親父が「フルマラソン走る」と言い出し、危ないので経験者である私(フルは最高で3時間33分)が伴走することになったのがきっかけだったが、結果的に、

 10才になったばかりの小学4年生の息子、女子大生、女子高生の二人の娘、妻

が加わり、家族全員、親子3代でのフルマラソンへの挑戦となった。

<リタイヤするかどうかの息子の葛藤>

 マラソンは一度止まってしまうと簡単には復活できない。筋肉が固まり、気力も衰えるからだ。息子はふくらはぎとヒザが痛いと訴え、「リタイヤしたい」とグズリ始めた。

 私は、息子からの言葉を受け流し、手をつないで、ゆっくり歩きながら、

「ゴール近くは、びっくりするほどの人が応援してくれるよ」

「ゴールしたら、おっきなプールで泳ごうぜ」

「ゴールを通るときは、みんなバンザイするんだ。後で写真が届くはずだ」

「ホテルに戻ったら風呂に入ろう。チョー気持ちいいぜ」

 私と手をつないで歩く息子は、うなずくだけだが、人は夢やゴールを強くイメージできたときに困難を乗り越えられる力が一気に蓄えられるので、ゴールした後のことについて話すようにした。

 しばらく歩いたが、息子は、歩くことさえつらそうになってきたようなので、一度止まって休ませ、リタイヤするか、走るかを決断させることにした。

 いつまでも歩いているわけにはいかない。

 息子をガードレールに寄りかからせ、アミノ酸飲料を飲ませながら聞いた。

「4時間かけて、一緒に歩いてもどるか。 3時間走ってゴールするか、今決めてくれ。」

「お父さんは、どうしたい?」と息子。

「今回はお父さんは関係ない。自分で決めろ。どちらでもお父さんは一緒についていく。」

Futari 息子は、クラスで一番チビで、仲良しの友達4人の中では、学校での運動やサッカークラブ、そして勉強、全ての面で他の友達より劣っているので、マラソンで「頑張った後の達成感と自信」を持たせたかった。

 だからこそ、自分で決断しなくてはならない。 その選択が間違えたものでもあっても経験になる。そして、私は黙ってそれをサポートするべきなのだ。

<息子、次女と3人で走る>

 息子は、しばらく考えていたが、

「お父さん、走ろう。頑張ってみるよ」

 と言い、私と次女を残して走り始めた。 慌てて後をついていく。

 まもなくハーフ地点を通過した。 4時間近くが経過してた。

 ほとんどの人が歩いている中を、3人で気持ちよく走っていたが、途中、次女が脱落。

 長い上り坂の途中で、私の親父が歩いているのをみかけて声をかけるが、息子に「元気じゃのう。先に行け」と、疲れた顔に精一杯の元気な笑顔を作って送ってくれた。

<自分と戦う息子>

 息子は途中、足の痛みで走れなくなり、時々歩き、そのたびに弱音を吐いたが、私は励ましも気遣いの言葉もかけず、「走りたくなったら、走ればいい。お父さんは、ついていくから」とだけいい。痛い部分に鎮痛スプレーをかけてやる。

 フクラハギから太ももまで痛みが出て、後半は足の裏の土踏まずも痛いと訴えはじめたが、スプレーをしてあげると、自ら走り始めた。

 25km付近の登坂で、歩いている大学生の長女を抜き去った。「凄ーい、早いねー」と後ろから声がかかった。 長女とは10歳離れた息子は軽く手を上げてそのまま走る。悔しそうな長女の顔が見える。

<そしてフィニッシュ>

 沢山の人が歩いている中を、右に左によけながら二人で抜いていく。

 時々後ろから「げげ、あんなちっちゃなメッシー(息子はサッカーウエアで走っている)に抜かれちゃったよ」とか「あんなに小さい子が走ってる。頑張ってー」と応援されて少し気分が良さそうだ。

 最後の長い下りに入った。あと7、8km。ここからが長い。スタートの豪雨が嘘のように青空が見え始めた。

 息子は黙って走る。いや、何か自分に対して語りかけながら走っている。

「痛いけど、もう少しだ」

「終わったら風呂入ろう」

「あそこで、あと5km。ピカチュー・ゲットだぜ」

 動かなくなってきた自分の足に言い聞かせながら懸命に頑張る小さな姿に感動し、涙がこみ上げてくる。

 前の週に、息子があまりに言うことを聞かないので、持っていた雑誌で思い切り叩いた。親として絶対にしてはいけないことだった。ずっとそれが私の心に引っかかっていた。息子も、めったに怒らないお父さんの怒りに触れてとまどっていた。

 しかし、マラソンで、もう一度、二人の絆が結ばれたように感じる。

 ゴールまでの長い一直線の両側で沢山の人がゴールする人たちに声援を送っている。そして、この小さなFinisherを見た誰もが、盛んに声をかけてくれた。

 ついに、42.195kmを走りきってゴールだ。

 二人でガッツポーズでゴール! 無意識のうちに息子を抱き上げた。

「凄いぞ!良くやった」

 そして、息子が言った。

「お父さんが、いなかったら完走できなかったよ。ありがとう」

Finisher_9  その言葉に感動して、さらに涙が出た。 6時間40分も本当に良く頑張った。

 親父、娘たち、妻、私の弟の全員が完走し、今回、この場をセットしてくれた弟のおごりで、盛大に夕食をとった。話題はつきない。

<フルマラソン完走の勲章に笑う>

 朝、目を覚ますと、強烈な筋肉痛だった。家族全員が筋肉痛で、ロボットかミイラのような歩き方になる。

 なぜか筋肉痛なのに、そんな自分に笑いが出る。筋肉痛は初フルマラソンFinisherの勲章だからだ。 不思議な満足感がある。

 息子がロボットのような姿で歩くのを見て私が笑い。息子がそんな私の姿を見て、また笑う。笑うと腹筋が痛いと言ってまた笑う。

 家族で買い物に出かけたが、筋肉痛のため、ひざが曲がらず、全員ミイラのような歩き方をしている。

 横断歩道で、点滅しはじめて急いで歩く私たちの姿が店のガラスに映った姿たが、それは、まるでゾンビの集団。 それを話してまた、みんなで笑う。

 もう、単なる親子の関係ではない。苦しいマラソンを一緒に戦った戦友である。

 マラソンは切れかけた息子との絆を強める最高の場となった。 息子あるいは娘とギクシャクし始めたら、一度試してみてはどうだろうか。 少々体にはこたえるが、効果はあるはずだ。

ちなみに、スバルのコマーシャルに私の息子が! 映っていた。 http://www.subaru.jp/about/cm/honolulu/index.html

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