Lotus DominoはEnterprise 2.0の夢を見るか
Lotusphere2008でのLotus Notes / Dominoの方向性のメッセージからすると、Web2.0(文化、技術、活用環境)の企業情報システムへの適用「Enterprise 2.0」をLotus Notes/ Dominoを中心に展開しようとしていることは明らかだ。
さて、ではDominoにどの程度の実力があるのだろうか? Domino8(一部8.5)では以下のWeb2.0的機能の提供を予定している。
・Dominoサーバー上のNotes DBをRSSフィード対応とNotesクライアントへのRSSリーダー機能の統合
NotesDBが社内に散在しているNotesユーザーには大変便利だ。社内外のWebサイトの情報と共にNotesDBの更新情報が送られてくるため、いちいちDBを開いて見に行く手間がなくなる。
・ブログ・テンプレートを利用した個人・チームブログ
ブログの機能としては決して高くはないが、カスタマイズ性が高いことを考えれば業務や様々なコミュニケーションツールと連携させた新しいブログコミュニケーションに広げていけるだろう。また、Lotus Connectionsとその関連サービスを組み合わせ企業情報システムとして有効なSNSとして利用していくことも出来る。
・My WidgetsとLive Textを利用したコンポーネット利用とWebサービス連携
いかにもWeb2.0といったユーザー・エクスペリエンスを提供してくれる。 Googleガジェットの組み込みが可能で、同時にNotesのViewやWebページ、RSSFeedも取り込み可能である。また、Live Textは、メールの内容を解釈して、関連するプラグインを 自動的に呼び出すことができる。My Widgets との連携もスムーズで、見た目にはNotesであることが信じられない。
様々なコンポーネントの活用や各種サービスとの連携はエンドユーザーコンピューティングを復活させてくれるのではないかと期待させられる。
・AJax化されリッチ&軽快になったDomino Web Access8 の利用
ヘビー・ユーザーはLotus Notes 8 スタンダードが基本だが、Web2.0型のユーザー・エクスペリエンスニーズを考えれば、充分(すぎる)ではないだろうか。 LITE版での軽快な利用環境は価値が高い。
・Eclipse版 Lotus Notes 8 による業務システムのLotus Notesのコンポジット・アプリケーション化
Web2.0の世界でのリッチクライアント化がどの方向に進んでいくかがまだ、わからないが、オフライン利用と業務システムとの連携を考えれば、企業内ではこれも一つの解だろう。 最大の課題はPCのリソースと軽さか。
また、将来はLotus Mashupsによるマッシュアップ機能の一般利用者への展開へも発展させられるだろう。
・強化されたLotus Notes DBをWebブラウザからAJAXインターフェースで利用
Domino Web Accessはメール、スケジューラーをWebブラウザベースのリッチなユーザー・エクスペリエンスで提供していたが、NotesDBのWebブラウザからの利用ではJAVAアプレットを利用したものであった。 これで、他のWebアプリケーションに負けない操作環境でNotesの様々なアプリケーションが利用できるようになる。
・オープンソース・ベースの無料オフィスツール提供
「Lotus Symphony」という無料のオフィスツールがついた。 昨年、この製品を利用したときには今一つ(二つ、三つ)だったが、通常利用ではまったく問題ないレベルに仕上がっている。 マイクロソフトオフィスへの投資をNotesバージョンアップに向けていくというシナリオもなりたつようになった。 Googleではオンラインでしか使えないが、どこでも使えるという意味ではメリットがあるが、これがWeb2.0に関係あるのだろうか? 社内の有識者に聞いてみたところ「永遠のベーター」と「オープンソース」というところがWeb2.0の要素にはまるそうだ。
・Lotus Quickrによるエンタープライズコンテンツマネジメントと業務用コミュニティの提供
ブログや通常のSNSがなかなか社内に浸透しない問題をこれで解決でき(るかも?)、業務に特化したコミュニティは企業には効果的だろう。 また、NotesDBの代わりにQuickrをセキュアな情報共有、ドキュメント管理をWeb2.0型ユーザーインターフェースから利用できるようになる。
・SaaS型のサービス提供
IBMではWeb2.0の3つの要素の一つとしてSaaSを上げている。 今回のLotusphereでSaaSの意向表明が行われた。 詳細は明らかになってはいないが、企業や利用者にとっては新しい選択肢が増えたわけだ。
Notes/DominoでWeb2.0だEnterprise2.0だと言われても今ひとつピンとこなかったが(今でもなんとなく違和感がある)、NotesDBがAJAX化されて、そこでWidgetsが利用されているデモを見ていると、Web2.0の定義は別としてWeb2.0技術を取り込んで新しいEnterprise情報システムの方向性は、Dominoベースの方が正しいのではないかと感じるようになってきた。
古いイメージがなかなか払拭できなかったLotus Notes/Dominoであるが、Web2.0を取り込んでリポジショニングする日もそれほど遠くないのかもしれない。