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ハリウッド的「すべらない映画」8つのポイント(シナリオ編)

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 ハリウッドで活躍する、ある映画プロデューサーの話を聞く機会を得た。

 「メガヒットのために」ではなく「売れない映画に”ならない”ために」「ビジネス的に滑らないために」の視点で、企画、販売促進、販売、チャネルのシナジーをどのように作り出していくかのポイントを聞いた。

 プロデューサーは映画制作そのものに関わることは稀で、映画のシナリオに関しても基本的に口出しをしないが、余談として「ハリウッド流の作品作りにおける、失敗しない8つのポイント」について説明してくれたので、今回はそちらを紹介したい。

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 ハリウッド流「滑らない映画」のシナリオ8つのポイントは以下だ。

・無敵ではない人間味のあるポジティブな主役

 例えば「スーパーマン」があらゆる困難をなんなく解決してしまっては観客を引き込めない。 無敵と思われているスーパーマンでさえ解決できないような困難があって、それを何らかの工夫で解決させなければならない。 また、主役が、そんな困難に積極的に向き合う理由も明確にしなくてはならない。生まれながらの正義感では駄目だ。

・典型的な悪役

 日本映画やフランス映画と違い、USでは典型的な悪役が好まれる。 逆に日本映画がヨーロッパなどで評価されるのは、悪役にまで「犯行理由」「生い立ち」など、そのような行いをする理由を知らしめ、悪人にも人格を与えるが、ハリウッドでは悪人は最初から悪人。 また、自然環境や宇宙人など、悪の一つであり、それらが次々と嫌がらせをしたり、悪事を働いて、主役を逆境に追い込んでいく。

・主役をピンチ、またピンチに追い込む

 アクションの有無に関わらず、観客が「このピンチを切り抜ける方法はないだろう」「ついに死んでしまう」と思う大ピンチを次々に与えて、見ているものに考えさせ、映画に引き込ませる。 この時、そのスピード感は重要だ。 タイタニックなどはその典型。

・わかりやすいストーリーの流れ

 観客が感情移入しやすくするために、わかりやすいストーリー展開をさせる。また、同時にメインシナリオに関係ない内容を排除する。 例えば、主題に無関係だったり、カット可能な昔の回顧や主役・犯人の移動を削除してスピード感を高める。

・論理的で現実感のある場面設定

 「そりゃーありえないよ」というような場面設定では、観客はその場面に入り込めない。例えば、観客が納得できるだけの論理的な説明がないまま「旅客機が墜落した時の地面の亀裂から火山活動が始まった」と言われたら、観客はせっかく入った映画の中から、現実の世界に戻ってしまうだろう。

 かといって、「なぜ、サルが地球を征服したのか」「なぜ、スーパーマンは飛べるのか」「なぜ日本は沈没するのか」などを時間をかけて説明してはならない。 映画の中でおきる自然な出来事の中で「観客が気がつく」ように進める。

・直後に起こることの予兆と将来への糸口を示す

 ジェットコースターに乗ると、まず、ガタガタ音を立てながら高いところまでゆっくり上っていく。 これにより、その後起きるであろう絶叫の世界に向けてのムードが高まっていくのである。

 何かのハプニングやピンチを起こす場合、直前のシーンで「氷にヒビが入る」「命綱がとがった石で、こすれはじめる」などのシーンを入れて、それから起きる事にへの予兆や気配を与えるのである。 例えばトンネルでエイリアンが襲い掛かってくる場面の場合、唾液のような液体が垂れてきて、音楽が止まって静かになり(または、不吉な音楽が流れたり)、トランシーバーが交信できなくなり、それを確認するために主人公が後ろを向いて「あ、来るぞ」というタイミング、、、を一度外して、観客が「あら、何も無かった」と主人公と一緒に観客がホッとしたタイミングで「グワッ」と出す。

 また、映画の前半で、最後に起きるとんでもないこと、または、事件解決の糸口を短く意味深に映しておく。「土星の輪を巨大惑星が吸い込む」「不振なコンテナが飛行機に積み込まれる」「病原菌に犯された猿が檻にいる」などがそれだ。

・主役の努力によって誰かが大きな幸せを得るハッピーエンド

 主役の努力によって、主役に関係する誰かがハッピーになって終わることが望ましい。 例えば、映画の全般としてデカプリオが主役として動いていても、最後には主役は死んで、その彼女が生き残ってもそれはハッピーエンドと見なされる。

 「ジョニーは戦場に行った」のようなものは、ビジネスを成功させるという観点では好まれない。

・恋愛のテイストを入れる

 恋愛は、年齢を問わずあらゆる人の琴線にもっとも触れやすい出来事である。

 まったくロマンスと関係ないアクション映画であっても、様々な出来事の中で魅力的な女性(男性)を入れて、観客を映画に引き入れる。 恋愛や恋愛の予感は観客を高揚させ主人公の気持ちになりきらせる効果がある。

 タイタニックなどは典型だが、ターミネーターやランボーでさえ魅力的な女性を加える。通常は、最初から加えず、何かの大きな出来事の中で何らかの破天荒な女性に出会い、最初は不信感を持つが、その後の事件の中で徐々に惹かれあってくる形をとる。

 そして、主役が絶体絶命の場所に行くのを見送らせたり、自分の代わりに犠牲になるなどと展開させていく。

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 テーマ(プロットのアウトライン)を決めたら、そこに、8つの要素を当てはめるだけで、あらゆるヒット作(メガヒットになるかどうかはわからないが)を組み上げられのだ。

 ハリウッド映画の多くは「ウイルスの恐怖」「最新鋭潜水艦」「山登り」「船の沈没」「恐怖の巨大生物(サメなど)」、「目に見えない宇宙からの生物」「大地震」「惑星の衝突」「敏腕刑事の奮闘」「野球の弱小チーム」などの一つのテーマと8つの要素で成り立っているそうなので、今度映画を見るときにはチェックしてみると面白いのではないか。

 しかし、それに飽きてきた観客も増えており、日本やヨーロッパでのような脇役、悪役の人間性や葛藤にまで深く入り込んだものも好まれるようになってきている。

 さて、映画プロデューサーの仕事だが、私たちの世界だとマーケティング・マネージャー、プロダクト・マネージャーに近い。 映画監督と違い、(狭義の)映画製作には関わらず、その映画がビジネスとして成り立つためのあらゆる活動をリードしてくのが仕事となる。

 日本では「踊る大捜査線」などを手がけた亀山 千広さん(フジテレビ系)が映画プロデューサーとしては有名であろう。

 今、この時代のどのターゲット(視聴者)に対して、どのようなテーマでの作品を出すとビジネスとして成り立つかを考えて、新しい(あるいはシリーズ)映画をビジネスの視点で企画し、放映のタイミング、販売促進方法などをチャネル&マーケティングミックスで組み立て、実施していくのである。

 このビジネスとしての部分に関しては、私が自分なりにしっかりと咀嚼してから皆様に紹介していきたいと思う。

追伸:

 実際に聞いた話は「ビジネス的にすべる映画を作るには」のような逆説的な話であったが、昨日、長女がセンター試験を受けてきたばかりなので、「すべらない映画」というポジティブなタイトルで投稿することにした。 ハリウッド映画のように、波乱万丈があっても果敢にそれを乗り切り、結果はハッピーエンドになることを祈っている。

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