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Enterprise2.0(企業内ブログ)成功例--情報の4S<整理編>

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 Enterprise2.0(ブログなどWeb2.0の企業内への適用)について「1%の原則で2.0は支えられている 」というコラムを投稿したが、その具体例としてふさわしい中小企業の事例を見てきたので紹介する。

 従業員百人程度のの中堅の部品製造販売メーカーであるこのW社は、10年近くかけて製造部門にトヨタ生産方式を自社に馴染ませて(導入とは呼ばないそうだ)大きな成功を収めてきた。

 しかし、製造現場の改善が進み、個別の注文に応じるビジネスが大きくなるにつれ、営業現場や営業管理業務、企画部門の問題が露呈し、ホワイトカラーの生産性向上が大きな課題として浮上してきた。 そんな時に、あいおい損保や郵政公社がオフィスワーカーも含めたカイゼン策としてトヨタ生産方式を導入したことを知り、営業をはじめとするオフィスワーカーの生産性向上と風土改革にもトヨタ生産方式を適用させることにした。(”トヨタ生産方式をオフィスワーカーに適用”と言うにははおこがましいと言っているが、、)

 生産現場へのトヨタ生産方式の適用はコンサルタントに入ってもらったが、費用の関係と、この分野での適切なコンサルタントが見つからないことから、トヨタ生産方式を生産現場に適用をリードしてきた部長が、オフィスへの適用でも旗振り役となって推進することになった。

<方針、目標>

 方針・目標は以下の3つである。

① お客様から帰ってきた営業が必要とする情報・人材(チーム)・業務処理環境(プロセス)を、過不足無く必要なタイミングで提供するために営業・商品企画プロセスの滞留(ムリ、ムラ、ムダ)を徹底的になくす。

② 商品企画、営業、営業事務、製造部門からマネージャ、経営者の意思決定のプロセスまで可能な限り「自働化」(自動化+人プロセス適正化)し、それぞれのプロセスにおける問題(提案品質、トラブルの種、コンプライアンス含む)を各自が発見し、原因を徹底的に追究し各自が自分でKAIZENできる仕組み作り。

③ 社員全員が楽しく生き生きと仕事が出来、”オフィススタッフの給料を平均10%UPを3年後に”実現できる会社に変革し、社員旅行も復活

<まず、4Sからはじめる>

 製造部門にトヨタ生産方式を入れる前に行ったことは4S(整理、整頓、清潔、清掃)だった。 ITと紙を相手にするオフィスワーカーであっても、まず「4S」を行って、自分の情報を整理・整頓する習慣とノウハウを身につけさせ、その後、各自がオフィスワークのカイゼン活動を推進できるスキル、文化を創ることが重要だと考えた。

・規則を守る意識

・全員が問題点を見つけだす意識

・本来の業務の中でトヨタ生産方式を自然に実践するリズム

・全員が問題を改善していくという意識

・それらを成功に結びつけるための管理職の意識

を根付かせることにした。

 ちなみに、オフィスワーカーには4Sはわかりにくいことから、以下のように定義した。

<この会社の4Sの定義>

・整理=法律上必要なものを除き、指定のバケツ(アーカイブ)に捨てること:全員

・整頓=ルールに沿って必要な情報を誰でも直ぐに利用できる状態を作ること:全員

・清潔=整頓された状態を維持すること、させること:管理職の仕事

・清掃=パソコン、コピー機、ソフト、セキュリティ監視の仕組み、電話(携帯含む)などが正常に動くことの点検全員

整理=日々、バケツに捨てる>

 まずは、情報を捨てることで情報の整理を行っている。 なにしろ、物理的な書類も電子的な情報も、捨てるかどうか迷ったら捨てるのだそうだ。

○机や引き出しの整理

 各オフィスに”バケツ”と呼ばれる6つの分別ボックスが用意されており、そこに机・引き出しの中・オフィス内で仕事中に発見した文書、文房具などを入れることで廃棄を行う。 このバケツは、2ヶ月間保管されて廃棄される。 うっかり捨てた、あるいは、誰かに捨てられたものがあれば、取り出して、所定の場所に保管する。

○電子的な情報の整理

 次に電子文書(ワープロの文書ファイルなど)であるが、既に正式文章はNotesDBを利用しているので、否定形の情報に関して個人で所有している文書・情報を”電子バケツ”と呼ばれるNotesのDB(Web参照可能)にアーカイブする。 各自が自分の判断で本当に廃棄するのは憚られるという社員もバケツにアーカイブする形をとったことで積極的に廃棄されるようになった。(Notesでなければならない理由はない。Webコンテンツ、リンク、メール文書、各種ファイルが同じ検索対象、分類体系で管理でき、文書単位にアクセス制御が出来れば何でも良い)

 廃棄の対象は、机の上・引き出しの中・ローカルフォルダーのフォルダー・ファイル、Webブラウザのブックマーク、PCのデスクトップ、Notesのデスクトップアイコンなど多岐に渡る。

 どのように捨てるのかを各自に判断させて、整理するノウハウと習慣を付けさせることが重要だ。

○捨てない情報の整理

 捨てるかどうかを判断して、捨てない情報をどのように整理するかが重要であるが、ここは「整頓=ルールに沿って必要な情報を誰でも直ぐに利用できる状態を作ること」の中で触れたい。

○捨てた情報の履歴をブログに掲載

 情報は随時捨てるが、捨てた情報の履歴をブログに毎日記載して、バケツの該当文書のリンクを張っている。 定型的な情報活用の中でNotesの検索でバケツの中も検索されるが、日々利用する否定形な情報活用の場合にNotesのバケツDBがヒットしないため、ブログに書くことで定型、否定形の両面から捨てる情報の再活用も図られることになる。

 ブログの本来の利用は、次回紹介する。

 廃棄したものも一定期間利用できる仕組みがあるからこそ、「整理=廃棄」が思い切って行われるのである。

次回はブログを利用した整頓方法とカイゼンへのブログの利用について書くことにする。 お楽しみに。

追伸

 大量生産の時代から、多品種少量、さらには特殊用途向けに毎回、カスタマイズして提供しなくてはならない注文が増え、さらに、最大の得意先がトヨタ生産方式を導入し、それらに対応できなければ生き残れない状況になってきたことから、取り組むことになった。

 企業内Web2.0/ブログ成功例と紹介されながらも、実態は機能していない企業が多い一方で、ブログを業務改善ツールの一つとして導入して非常に有効に社内の業務改善に適用して成功させているのがこのW社である。

 ノーツも使っている企業なので自社製品アピールになってしまうのと、「トヨタ生産方式とかWeb2.0の成功例として名前を出せるレベルではない」との責任者の意向もあり、今は企業名を出せないが、私としては、これぞ、業務改善という視点から入ったブログの社内利用成功例だと感じた。(本例は、企業が特定できないように実際のものとは一部変えてあります。)

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