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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(80)WHOによると「福島で健康被害が出る恐れは極めて小さい」 と NHKが報道

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こんにちは。本業とはまったく関係の無い原子力論考をいまだに書き続けている開米瑞浩です。

ようやくNHKでも報道したようですね。

"WHOが原発事故の健康リスクを公表 NHKニュース"
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130228/t10015867521000.html

WHOが2月28日東電福一事故によってどのような健康影響が予測されるかを見積もった報告書を公表した。

結論:住民のがんが増える恐れは極めて小さい

影響を「最大限に見積もったとしても」「住民のがんが増える恐れは小さい」。

ざっくばらんにまとめますと、事実上ほとんどゼロということです。

厳密には、極めて小さいがゼロではない、と受け取れることを言っているわけですが、その見積はほとんどありえない過大な仮定に基づくもので、現実的な仮定をするならそれこそ事実上ゼロと思っていいのです。

だから、これに対して飯舘村村長は「過剰に評価してどんどんと住民を不安に落としていくようなことに非常に怒りをおぼえる」とコメント。

確かにWHOの「見積り」は、現実にはあり得ないような過大な仮定をしてめいっぱい「危険性を過大評価」する側に振ってそれでもなお「極めて小さい」という話です。普通に考えたら、排気ガスだらけの都会に避難する方がよっぽどリスクが高いという話です。

環境省も「(見積の前提となる仮定が)実態にあっておらず問題だ。リスクが大きく見積もられており、報告書が示している確率でがんになるという認識は誤りなので、誤解しないようにして欲しい」と注意喚起しています。

まあ、こういう話が出たとしても、「日本政府の言うことなんか信じられない」とする人々は「WHOの言うことだって信じられない」なのでしょう。

ちなみに「福島原発事故では健康被害は起こらない」というのは意外でもなんでもなくて、2年前の4月時点でだいたいわかってました。ただ、それがわかっても大きな声で言えない、そういう雰囲気がありました。言っても報道はされないどころか「危険」を煽るメディアが売れるという時期が長く続いたわけです。

それがようやく正常化に向かってきたようですが、菅直人前首相の法的根拠のない「要請」によって止められた浜岡原発を初めとする各地の原子力発電所が再稼働を果たし、異常なFIT政策が廃止され、原子力規制委員会が活断層恐怖症から脱するまでは、完全に正常化したとは言えません。道はまだ長いです。

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