オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

SFAが使えない理由、使えるようにする方法(2)

»

SFAが、その役割を果たすためには、次の2つの前提がクリアされなくてはならない。

  • 営業担当者が、案件状況が変化するたびに即座にデータを入力してくれること。
  • 進捗段階の判断に主観を交えず、客観的事実に基づいて判断できること。

前者は、「SFAは、“営業管理者”が案件の進捗段階と予実を管理するツール」でしかなければ、営業担当者とっては、「SFAは、管理者への報告手段」でしかなく、「やらされ感」を抱いてしまう。結局、「報告のための報告」となり、月末「集計」の前に駆け込みで入力するようなことになってしまう。これでは、SFAにタイムリーな状況把握の役割を期待することはできない。

後者は、各案件が、進捗段階の境界線のどちらに位置するのかの判断を主観に頼ってしまうと、報告者ごとに判断基準のばらつきが生じ、報告の精度が落ちてしまう。

一般的に営業担当者は、案件の進捗状況をポジティブに評価する傾向が強い。実際、案件毎のやるべきこと、確認すべきことができているかどうかを個別に聞いてみると、「あとで何とかするつもりでした」、「まあ、なんとかなりますよ」、「わすれてました」といった話も多く、到底その段階の案件ではないということも少なくない。

このような状況にあるので、営業管理者が、営業担当者の報告を鵜呑みにし、そのまま集計してしまうと予実の乖離が大きくなりすぎてしまう。そこで、営業管理者は、SFAのデータを一旦EXCELに移し替え、案件毎、あるいは、営業担当者の個別の“事情”を考慮しつつ、主観でフォーキャストを調整し、報告をまとめてしまう。

昨日のブログでも申し上げたように、SFAが生まれた米国では、営業は、「会社の看板を背負った個人事業主」のような存在であり、コミッションが稼ぎの大半を占めることも珍しくない。そのため、管理者への報告は、自分の収入に直結しており、当然の仕事であるという意識が定着している。また、報告の精度が低ければ、営業としての資質を問われ、報酬にも影響する。個人事業主としてのプロ意識とでもいうべきだろうか、精度の高い報告が集まりやすい状況ができている。

このようなコミッション型、個人責任型のビジネス文化を背景に、彼等の報告業務の生産性を上げるためのツールとしてSFAは普及してきた。管理者は、その結果を集計することで、組織全体の予算の達成状況や見通しを精度良く把握することが可能になっている。

しかし、我が国においてそのような文化はない。確かに営業目標はあるが、それは個人単位ではなく組織単位であり、数字が直接個人の収入と連動しない固定給が一般的だ。

「ちゃんと報告しなければいけないことは分かってはいるんですが・・・」という意識はあっても、「ちゃんと」報告するモチベーションを生みだせない現実がある。

このようなSFAは「営業プロセス」という、組織の目標予算達成の進捗段階を区分した枠組みで、状況を把握するように作られている。

  • どこまで達成されているのか
  • 今後どれだけ達成する必要があるのか
  • 進捗段階(パイプライン)ごとの案件数と見込数字

しかし、先にも申し上げたが、この「営業プロセス」を営業担当者の視点でみれば、管理のための枠組みでしかなく、それを自分で入力し報告することにメリットがない。

そこで、視点を変えて営業活動における「受注までに必要なアクション」をひとつひとつのプロセスとして定義し、それを時間軸に沿って整理してみる。つまり、「営業が受注までに行うべきアクション」を一覧にまとめたものだ。これを私は、「営業活動プロセス」と呼んでいる。

「営業活動プロセス」は、案件を受注するための行うべきアクション一覧表であり、次の点を把握するために作られている。

  • 案件を受注するために行うべきアクションがどこまで実行されているか
  • 案件を受注するためには今後どのようなアクションを行う必要があるのか
  • 今行っている受注活動で行うべきアクションに抜けや漏れはないか

つまり、「営業活動プロセス」を確認すれば、案件獲得のための自分の行動を冷静に評価し、手堅く確実に営業活動をすすめてゆく手助けとなる。また、今なすべきことに気付かせてくれますので、タイムリーな判断と行動を促し、勝率を高めることにも役立つ。

9e20e375c844d98033ce645988447d0c


進捗段階の境界線は、「このアクションができているかできていないか」という事実に基づいて客観的に判断する。たとえば、「〇〇に説明した」、「〇〇を確認した」、「〇〇を提出した」といった具体的行動を記述したもので、「やった/やらない」の客観的な事実によって評価でき、主観をはさみにくい表現とする。

この「営業活動プロセス」をチェックリストの形にして、案件毎にこれをチェックするような仕組みにすれば、営業担当者にとってもメリットがある。つまり、営業が自分の仕事の効率や勝率を高めることに役立つことになるからだ。これをSFAの営業入力として、使えるようにしてはどうだろう。

結果として、案件ごとの営業活動の状況が高い精度で入力されるので、それを集計すれば、精度の高いフォーキャストがまとまるのではないかと考えている。

このように営業担当者と管理者の相互の利害を一致させようという取り組みだ。

「営業活動プロセス」での評価した結果は、「営業プロセス」に送られ集計される。そこで見える化された結果をみて、管理者は、必要な指示を部下に下す。部下は、再び、「営業活動プロセス」に照らし合わせながら、自分の営業活動を進め、その結果確認のためにチェックリストに入力すると、案件の進捗状況が管理者にフィードバックされる。

Cdac2336507e914b6d721213f645bf57


このようなサイクルが実現できれば、管理者にも担当者にもメリットのある仕組みができあがるのではないかと考えている。

【参考】SI営業の「営業活動プロセス」を組み込んだ、プロセス・チェックのための無料アプリを作ったので、ご興味があれば、ご利用ください。

定員間近【無料】イベント『受託開発ビジネスはどうなるか、どうすべきか

来る8月27日(水)に、「納品のない受託開発」でおなじみのソニックガーデンの倉貫さんとトーク&ディスカッション・イベントを開催します。SIビジネスや受託開発まの課題、今後どうしてゆくべきなのかを話し合います。こちらの一方的なスピーチではなくご来場の皆さんを巻き込んだイベントにしようと考えています。

ほぼ、同じ時期にお互いに本を出版したことをご縁に開催することとなりました。詳しくは、こちらのFacebookのイベントページをご覧いただき、「参加する」ボタンを押して下さい。

*更新しました* 今週のブログ 

「営業スキルの強化」か「売上の増大」か・・・両方同時は無理です!

営業スキルを強化すれば、売上は増大するのでしょうか?こんな単純な論理は成り立ちません。ではどうすれば良いのでしょうか。今週のブログはそんなテーマで考えてみました。

Kindle版 「システムインテグレーション崩壊」


system_cover

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

Libra_logo300x53

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA

Follow Us on Facebook Facebookページを開設しています。「いいね!」やご意見など頂ければ幸いです。

Comment(0)