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SFAが使えない理由、使えるようにする方法(1)

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「SFAを導入してはみたものの、営業の意識が低いので、ちゃんと入力してくれない。」

そんな話を聞くことがある。しかし、本当にそうなのだろうか。昨日のブログで紹介させていだいたが、これには日米のビジネス文化の違いが大きく関わっている。言うまでもないことだが、SFA発祥の地である米国では、広く普及し活用されている。なぜそんな違いが生まれるのだろうか。

米国の営業報酬は、基本的にはコミッション(成果報酬)だ。商材やテリトリー、売上や利益などの達成目標が雇用主から提示される。専門職としての営業は、その達成を個人として承諾し、書類にサインし、達成することをコミットする。コミットとは、「なんとしてでも達成する」という契約であり、達成できなければ、報酬が減らされる、あるいは、もらえないことを承諾することでもある。

営業は、目標を達成すべく営業活動を行うわけだが、その進捗過程を正確に報告しなければならない。報告された計画通りに数字が上がらなければ、営業の評価は下がる。また、正確な報告がなされなければ、コミッションも支払われない。計画にない売上が突然計上された場合は、それは偶然であり、営業努力が伴うものではないので、コミッションの支払いが減額されるというルールを適用している企業もある。

このように、営業は専門職であり独立した個人事業主のように扱われ、雇用主、すなわち会社に活動状況を正確に報告しなければコミッションが支払われない。結果として、営業管理者や経営者は、精度の高い営業活動状況を手に入れることができる。営業担当者と営業管理者の利害が一致しているからこそ、米国ではSFAがうまく機能しているのだ。

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一方、日本ではこのような関係は存在しない。営業は総合職である場合が多く、専門職としては扱われていない。また、報酬は固定給であり、グループや組織単位で営業することも多く、個人の成果と報酬が直結していない。だからといって、営業目標の達成にモチベーションが働かないわけではない。彼等も又同様に目標達成は営業の評価や昇級、昇進につながるし、名誉や達成感が後押しすることもある。しかし、結果として、期間目標が達成されればいいわけで、個々人の活動状況や個別の案件毎の進捗や結果が、自身の報酬につながることはない。直接のメリットがないのだ。つまり、SFAのような案件毎のきめ細かな報告はオーバーヘッド以外の何物でもない。ここにタイムリーで精度の高い予実の見通しを必要としている営業管理者との間で、利害の不一致が生まれている。

このことからもおわかりの通り、SFAに営業が案件毎の状況をタイムリーかつ正確に入力しないのは、彼等の意識が低いからではなく、組織のメカニズムとしてその必然性がないからだ。この問題を解決しない限り、どんなSFAを導入しても本来の役割を果たすことはできない。

これは表現を変えれば、「営業活動にガバナンスが効いていない」ということになる。

本来「ガバナンス」という言葉は、経営や事業の目的を達成するために組織や個人を自律的に機能させるための仕組みを意味する言葉だ。指示や命令によらず日常の業務を適正に行うことで自然と実現される運用プロセスを実現することと解釈することができる。こちらについては、以前投稿した記事が参考になるだろう。一方、「コントロール」とは、マネージメントを行うために意図する方向に向かわせるために指示命令を下し、組織の動きを制御することだ。

つまり、営業担当者が、案件毎の情報をタイムリーに高い精度でSFAに入力する自発的な行動を促す仕組み、すなわち「ガバナンス」がないままに、コントロールによって入力させようとすることに本質的な問題がある。

管理者から見ればSFAは、タイムリーな状況判断と精度の高い予実管理の手段として必要なツールだが、営業が自発的に、タイムリーに、精度の高いデータを入力する仕組み、すなわち「ガバナンス」が存在しない。この両者のギャップを埋めることができなければ、どんなSFAを導入してもうまく使われることはない。

では、どうすればいいのか。詳しくは、明日のブログで紹介しよう。

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