クラウドの価値を引き出すための戦略
昨日のプログ「クラウド普及の足かせとなっている日米の企業文化の違い」でも紹介したようにクラウド導入を阻む「壁」の存在が、我が国のクラウド普及の足かせとなっているとすれば、米国と同じシナリオでクラウドの価値を見出すことはできない。
では、我が国では、クラウドは価値がないのだろうか。決してそんなことはない。米国とは「価値の重心」が異なっているだけなのだ。
我が国は、今、グローバル化の急速な進展、ビジネスライフサイクルの短命化、顧客嗜好の多様化に対応すべく、産業構造の変革を迫られている。この事態に対処するためには、ITを戦略的に活用することが欠かせない。そのためには、経営環境の変化に合わせ、迅速に(スピード)、俊敏・柔軟に(アジャイル)、そして、必要に応じてシステム資源を容易に拡大でき、不要となればすぐに手放すことができる(スケール)システムが必要とされる。まさに、我が国におけるクラウドの価値の重心は、ここにある。
「クラウドは生産性向上の手段であり、コスト削減につながる」という期待は、中長期に見ればその通りでも、短期的視点に立てば、残念ながら、我が国では簡単に受け入れられない。むしろ、経営環境の急激な変化に対応できる「戦略価値」こそ、クラウドに期待できることだといえるだろう。
また、ガバナンスの観点からもクラウドへの期待は高い。ガバナンスとは、本来次のような意味がある。
「ガバナンスとは、命令や指示などをうけなくても、普段通りの業務をこなしていれば、業務や経営の目的が達成されるビジネス・プロセスを構築し、それを運用すること」
詳しくは、以前のブログ「クラウドではガバナンスが担保できないという都市伝説」に書いたので、こちらをご覧いただきたい。
グローバル化を急速に進める我が国の企業にとって、同じ企業文化や価値観を共有し、その企業が求める品質や効率、社会的価値を生みだしてゆくためには、ガバナンスを確保することが必須となる。これに対処するためには、その企業の文化や価値観を正しく理解し、現地の言葉や文化にも精通し、かつ統率力に優れたマネージャーをそれぞれの国に配置し、ガバナンスを築いてゆくことである。しかし、そんなことが、かんたんにできるはずはない。そうなれば、「業務や経営の目的が達成されるビジネス・プロセス」をITに埋め込み、これを利用することが、現実的な選択肢となるだろう。
グローバルに対応すべく、このようなビジネス・プロセスをクラウドに構築しておけば、システム構築や導入の手間はかからず、進出、撤退にも迅速に対応できる。また、国境を越えたリソースの共有やリカバリー対応も容易だ。このような点もクラウドの戦略的価値と言えるだろう。
クラウドに限らずITは、米国発祥のものが圧倒的だ。だからこそ、「米国ではうまくいっているから」というだけで新しいテクノロジーの評判を鵜呑みにせず、このようなビジネス文化の違いを正しく理解し、その価値を我が国流に再定義することが大切だ。その上で、自らの事業や経営に活かしていくべきだろう。
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目先の忙しさとは裏腹に、その背後で劇的なITトレンドの転換がすすんでいます。しかし、エンジニアや営業はそういうビジネスに関わるチャンスを与えられず、ひたすら従来型のビジネスに奔走し、疲弊しているようにも見えます。
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