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3つのクラウド・ビジネス・モデル

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昨日のブログ「クラウドの価値を引き出すための戦略」で、クラウドの戦略的価値について、述べたが、それでは具体的にどのような「クラウドビジネス」のシナリオを描けば良いかを今日は考えてみたい。

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「クラウドビジネス」というと、GoogleやAWS、SFDCなどの大手サービスプロバイダーをイメージされるかもしれない。たしかに彼らはクラウドというビジネスを主導し、トレンドを築いてきたプレーヤーであることにまちがいはない。しかし、だからといって、彼らのように膨大な設備投資を行い、そのリソースを低コストで提供するというビジネスばかりがクラウドビジネスではない。

そこで、クラウドビジネスを3つのタイプに整理してみた。

クラウドプロバイダー

GoogleやAWS、SoftLayer、SFDC、Office365などがこれに当たる。自分たちが所有するシステム資源や独自のサービスを低廉に提供するビジネスモデルだ。

このタイプは、魅力的な機能や性能を高いコストパフォーマンスで提供しなければならない。システム資産に大きな投資をすることで、サービスを充実させ、スケールメリットで広範なお客様を獲得することを目指す。

自分たちで膨大なシステム資産を持つことができなくても、既存のコストパフォーマンスの高いクラウドサービスを利用し、その上に得意とする業務分野やノウハウを駆使してサービスを稼働させ、それを自分たちのサービスとして提供することもこのタイプに分類できるだろう。たとえば、Dropbox、Pintarest、Netflixなどのように、数千万人、数億人をユーザーに持つサービスをAWSのクラウドサービス上に構築し、提供している企業もある。

クラウドアダプター

クラウドプロバイダーのサービスはコストパフォーマンスにおいて大きな魅力だが、その見返りとして独自の標準化に対応することが求められる。また、インターネットの介在、マルチテナントなどが前提となり、「セキュリティへの不安が払拭できない」というユーザー企業もある。

そのようなプロバイダーの提供するサービスの課題を補完し、共生する形でビジネスを展開するのがクラウドアダプターだ。たとえば、アプレッソのDataSpiderは、クラウドサービスごとに異なるデータ形式を、かんたんなGUIの操作により、プログラムを書くことなく、さまざまなデータ形式に変換・加工(構造変換、フィルタリング、マッピング、統合、計算など)し、必要とする自社のアプリケーションやほかのクラウドサービスに取り込んで処理・実行することを仲介します。また、グルージェントのGluegent Gateは、一般にはユーザーが企業内で複数のシステムへその都度ログインをする必要があるのに対し、メインのログイン画面で一度認証されるとすべてのシステムが利用可能になる。さらに、Google Appsなどのクラウドサービスもこれに組み入れ、アクセス制御、管理ログインの一元化、ユーザー・グループ管理を行うことができる機能を提供する。

ただし、このような補完機能を持つサービスを開発・提供しなければならないので、ある程度の初期投資は覚悟する必要がある。

クラウドインテグレーター

プロバイダーやアダプターのサービスをお客様個別のニーズに対応して組み合わせ、お客様専用のサービスとして提供するもの。従来のSI事業者が行っているオンプレミス(自社で所有し、自ら運用するシステムの利用形態)商材を組み合わせたシステムインテグレーションを、クラウドサービスの組み合わせに置き換えたものと考えてもいいだろう。

このようなビジネスでは、大きな初期投資は不要だ。しかし、WebアプリケーションやWebサービスの技術、モバイルUXに対応できるセンスやスキル、さまざまなクラウドサービスを目利きできる力、それらを使って最適な組み合わせを作り上げるプロデューサーとしての能力が必要となる。

どのビジネスモデルがいいかは、それぞれの事業者が置かれている状況によって異なるが、これからの事業戦略を考えるうえで、ひとつの整理の仕方として参考としていただけるのではないだろうか。

この3つのタイプに共通するのは、開発と運用が継続時に、かつ一体で進行することだ。ウオーターフォールを前提とする開発手法や体制、開発と運用の分離といった「所有」を前提としたやり方では、うまくいかないだろう。収益構造も見直す必要がある。

これまでのやり方を変えず、システム基盤がクラウドにかわるだけということではないことを心得ておくべきだ。この点については、こちらのブログ「クラウドでSIがダメになる本当の理由」に詳しく書いているので、ご覧頂きたい。

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蟻になるかキリギリスになるか、いまそんな選択が求められています

目先の忙しさとは裏腹に、その背後で劇的なITトレンドの転換がすすんでいます。しかし、エンジニアや営業はそういうビジネスに関わるチャンスを与えられず、ひたすら従来型のビジネスに奔走し、疲弊しているようにも見えます。

夏が過ぎ去り秋を迎え、冬になるのならば未だ良いのですが、夏の後にすぐに冬が来ることにでもなったら、どうすれば良いのでしょうか。

今週のブログは、こんなテーマを取り上げてみました。

また、「ソリューション営業」の本質についても私なりの考えを紹介しています。

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〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/ LiBRA

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