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グローバル化する地球の中に、日本はどう立つのかを考える日々

どうiPadを買うべきかコスト試算しつつ考えた。SIMロックをどう評価すべきか悩ましい。

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#不十分な情報の中、予測で書いている部分もあります。修正して参りますのであしからずご了承ください。

現在並んでいる人も多いだろう、本日は5月10日iPad日本予約開始日。

iPadは重すぎるのではないか?日本の生活スタイルに馴染まないのではないかという疑問も呈されつつ、似たような前評判のiPhoneもそれなりに普及し、Twitterが米国と違ったスタイルで定着したりと、実際は日本なりの使われ方をして一定の市場を造り出すのだと思う。

問題は高度経済成長終わりし今、新たに造り出した市場は基本的に何かの既存の製品から市場を奪う物だが、iPadは一体何の市場を奪っているのだろうか?

iPad(+ iTunes Store)のもつ意味・意義・スタイルについては以前細かく論考を書いたが、大雑把に出版/書籍販売市場、音楽&映画販売・レンタル等々の既存のコンテンツ産業から市場を奪う形になるだろう。

iPadはAppleの戦略上どういった意味をもっているのか考えてみた
http://blogs.itmedia.co.jp/ibamoto/2010/04/ipadapple-9bfe.html

そしてこれは、基本的に通話を目的としていないので当然なのだが、既存の携帯電話の市場を奪っているわけではなく、iPadが別のカテゴリの製品であることを示している。

これがiPadを買う上でどう問題になるかというと、SoftBankがSIMロックをかけている、そのことをどう評価するのかというところに繋がってゆく。

まず、日米でのiPad維持費用を比較する。

■日米での【本体販売価格・通信費用】は下記のようになっている。

現在、日本で発売予定のiPad WiFi+3G 64G(データ定額プラン:月月割・24ヶ月縛りあり)の本体価格は、77,280円。通信量は月2910円。

iPad WiFi+3G 64G(プリペイドプラン1G)は81,840円。通信量は1GB/月で4410円。
#正確には、プリペイドプランは月ではなく、30日当たり。

米国Apple Storeでは、iPad WiFi+3G 64G単体で829$(今のところ76,000円程度)である。
AT&Tで計算したときデータ定額のプランは29.99ドル(2800円程度)で、250MB/月の通信量プランは月額14.99$(1370円程度)である。

■そして日米において通信費も含めた【24ヶ月当たりの総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)】を考える。

日本の場合は、データ定額で147,120円、データ月1GBプランで187,680円となる。

米国の場合は、データ定額で143,120円、データ月250MBプランで108,800円となる。


結果として、データ定額で考えた場合日米はほぼ同額となった。
データ量に制限のあるプランだと一概には言えないが、日米の比較の上ではデータ量を考えると差はあまりないということになりそうだ。
しかしながら、250MBというのは余り通信しないという点でユーザー層が明確な一方、1GBは結構使ってるなとも捉えられるので、データ定額プラントの差があまりにも大きいように感じる。

もっとも総合して日米の差はあまりないと言えよう。


■しかし、問題なのはSIMロックも含めて【縛り】が日米で相当違うことである。
日本の場合、データ定額プランは24ヶ月契約を継続する必要があり、途中解除の場合1万円弱かかるという縛りがかかっている。
そして、24ヶ月の縛りのない250MB/月プランの顧客対象の不透明さからいって、実質的にデータ定額プランを選択するしかないように誘導していると思える。

さらに、日本販売のiPadはApple Store・ソフトバンク共に、ソフトバンクのSIMロックがかけられている(と現時点では言われている)。

米国の場合、AT&Tでは、30日前に手続きなどの作業はあるが、基本的に契約・解約を自由に行うことが出来る。
そして、SIMロックがかかっていない。

こう考えると、日本販売のiPadは対してソフトバンクからのインセンティブも注がれていないのに、縛り・SIMロックをかけられているように見える。
結果として日本の消費者は制限された物を買わされているようにみえる。

しかもiPadは既存の携帯電話市場を侵食しない別物の商品であるのに、携帯電話市場の習慣を持ちこまれてしまっているように思える。

■これは問題ではないかと思う。縛り・SIMロックに見合った対価を消費者は得られているのか?健全な競争環境の維持上問題ないのだろうか?といった疑問が浮かぶ。

SIMロックをかけているソフトバンクが使用している周波数帯域は、携帯「電話」が利用することを想定して割り当てられ、0円ケータイ・ガラパゴス等と言われつつも、日本の携帯「電話」の商習慣上で運用されてきた。
そのため、嫌われる面がありつつも、縛り・SIMロックを前提とした市場が発達し、日本型の携帯電話市場を形成してきた。
iPhoneもやはり電話としての性格があり、そのため縛り・SIMロックで販売される一方iPhone everybodyキャンペーンなどを通じ安くiPhoneを使用することが出来るという、日本の携帯「電話」としてiPhoneは普及してきた。

つまり、日本市場においては、縛り・SIMロックの対価として安くて高機能な携帯電話を提供するということが、企業と消費者の関係をWin-Winにしてきたという歴史がある。

しかしながらiPadになるともはや電話としての性格は殆ど無い。しかも縛り・ロックの対価としてのインセンティブが消費者に供給されているかというと為替レートの問題もあるが非常に怪しい。
そうなってくると、ソフトバンクのiPadは電話の商習慣である縛りを流用して一方的に利益を得ているのではないかという疑惑が生まれる。
さらに、ドコモや日本通信がiPadでも使用可能なSIMを販売するという機会を奪っていることになり、健全な市場環境の維持の観点から、Appleとソフトバンクは共謀して独占禁止・不正競争をしているとさえ言えるのではないだろうか。

ソフトバンクの使用している周波数帯域はあくまで国民から預かっているものであり、ソフトバンクが周波数帯域を使い続けるためには、ソフトバンクが十分効率的に帯域を運用し、またドコモ・KDDIなど他社も含めて全体最適な帯域運用に寄与していることが前提である。

そう考えると、現在のソフトバンクのiPad販売状況は、この前提に反しているといえるのではないか。


■もっとも、一人の消費者としてあまりその問題に拘泥しても仕方がない。たとえソフトバンクがiPadの販売で不当に利益を上げていたとしても、ソフトバンクが表れてくれたことによる市場活性化効果、定額・ホワイトプラン・iPhoneなど様々な面でこれまで日本の携帯電話市場を先導したことに対する評価に揺らぎはないだろう。

iPad購入を検討する一消費者としては、iPadという生産性向上のための革新的な商品を如何にして早く、比較的安めの価格で手に入れるかがテーマとなる。

そのとき、米国のiPadの値段やSIMロック無し等に魅力を感じるなら、輸入という手段も考えられる。
最近はスピアネットの用に個人輸入をサポートしてくれているサービスも普及しているが、こういったサービスを活用すると100$も追加せずに、合計85,000円程度で本体を購入できるだろう。
#電波法的にグレーゾーンな部分もあるが、原口大臣も利用しているためOKと考えた。


そして3G回線用のSIMとして、b-mobileのb-mobileSIM U300を使うとすると、年29,800円で24ヶ月の総保有コストが144,600円となる。
http://www.bmobile.ne.jp/sim/index.html
#b-mobileSIM U300は通信速度が300KBとなる。ソフトバンク3Gは7.2MB


Ipad_cost_2


結果として、ソフトバンクから購入するのも、米国から輸入してb-mobileで使用するのも、24ヶ月保有コストとしてはそこまで差は大きくない。縛り・SIMロックがあるのに米国と似たような価格というのは納得いかない部分もある。しかし、そこで得られる物、失われる物はそれぞれあり、現在の一消費者としては十分情報収集して比較検討する必要があるだろう。

もっとも本質的にはiPadを電話のようにして売って良いのか。iPadで使えるSIMを出そうとしたドコモの努力を無にしてしまうことは国民経済全体としてはいかがなものなのか。といった問題もある。iPadも契機にSIMロックフリーの議論がさらに盛り上がることを望みたい。

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