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リップルとXRPを理解するには? 偏った情報で見誤るな

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リップル(Ripple)についての記事『仮想通貨のカオスの中で、送金に革新を起こすリップル』(Forbes JAPAN)を4月18日に公開し、たくさんの方に読んでいただいたが、リップルについての報道・記事と自身の取材について感じたことを簡単に記してみたい。

小生はSLUSH TOKYO 2018でのリップルCTOインタビューを含む取材をもとに執筆したが、一般読者向けに記事をまとめるにあたり、かなり難儀な作業となった。

主な理由は、

・リップルは、複数の顔を持ち、そもそも分かり難い。

・仮想通貨のカオスの中で、さらに捉え難い。

・SLUSHという単一のイベントの中で異なるアングルのメッセージが発せられ、まとめ難い。

などだ。

 

わかりにくいリップル 関連記事を読むときはご注意を

 

同時期に著されたリップルを取り上げたSLUSH関連記事に、次の二つがある:

●『仮想通貨への期待今も 海外勢、起業家祭典で発言』2018/3/28日本経済新聞

「サイトの閲覧者が運営者に直接支払いできる技術を紹介した」とある。

●『ブロックチェーン新領域へ スタートアップが開拓者 リップル「投げ銭型」決済 シビラ、行政の仕事支援』2018/4/16日本経済新聞

二つとも、初日のメインステージでのCTOプレゼンを受けてのものとみられ、そこでのテーマとされたInterledger(ledger=台帳、W3Cでのオープンソース的なプロジェクト)の話に限られ、(投げ銭型と)断片的に捉えてリップルを紹介したに過ぎず、一般読者にとっては偏った情報にとどまっている。(下の写真はメインステージでのプレゼンのサマリー)

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また、次のような最近の記事があるが、一般読者にとってはミスリーディングなものとなりやすい:

●『仮想通貨市場の今後を率いるのはリップル、金融機関の導入進む』2018/4/24 Forbes JAPAN

リップルは、xVia、xCurrent(銀行など金融機関向け)、xRapid(ペイメント業者と金融機関向け)の三つのサービスを企業に提供している。このうち(リップルが言う)デジタルアセット(日本では仮想通貨と呼ばれる)XRPを用いているのはxRapidのみであり、金融機関での導入が進んでいるのは、XRPを用いないxCurrentが主だ(xRapidは米国―>メキシコ送金に採用されるなど実績はあるが、リップルCTOも「xRapidに利用しているXRPが、長期的に売上に貢献するかもしれない。」と述べているように、まだ少なくパイロット段階にある)。

次回のブログに記すが、「勘違いしてXRPを買ってる初心者がそこそこいるように見えます。」との指摘がNewsPicksにもコメントされた。

 

わかりにくさ・誤解について、次のような二つの記事もある:

●『仮想通貨の米リップル社トップが断言「金融機関は誤解している」』2018/4/4 週刊ダイヤモンド特別レポート | ダイヤモンド・オンライン

リップルCEOは「仮想通貨の「リップル(XRP)」と、その技術を基にした送金プラットフォームを提供している「リップル社」が同じだと思われている」などと金融機関の誤解について指摘し、リップルの送金プラットフォームの「普及が進んでいないのは、リップルについて多くの人が誤解しているから」という。

●『SBI主導の邦銀仮想通貨連合から地銀が一斉離脱した理由』2018/4/25 inside Enterprise | ダイヤモンド・オンライン

銀行幹部の声として「仮想通貨は価格変動が大きく、銀行送金に使われては困る」と報じているが、取引実行の所要時間が3秒とごくわずかなため問題にならないとリップルは説明している。

 

また、仮想通貨の投機熱を背景にこういった記事がけっこう目立つ:

・次の二つは、リップル創業者の資産について

●『世界の「仮想通貨長者」首位はリップル創業者、資産8200億円』 2018/2/8 Forbes JAPAN

●『下落続く仮想通貨、リップル創業者は2ヶ月で5000億円喪失』2018/4/2 Forbes JAPAN

・次の二つは、仮想通貨長者となるも亡くなったメロン氏について

●『リップルで1千億円稼いだ「名門財閥」の御曹司、54歳の狂気』2018/3/5 Forbes JAPAN

●『仮想通貨長者マシュー・メロン、鎮痛剤依存を克服できず急逝』2018/4/20 Forbes JAPAN

ある種センセーショナルなこうした記事は、リップルにとってはノイズになっているのだろう。しかし、仮想通貨ブームで、読者ニーズの大きなテーマであるのも現実だ。

 

なお、新しいものであり、かつ変化が常態なので、情報の受け手も、何か判断や行動を起こすときには、しっかりと調べることが肝要である。記事のせいにしても誰も助けてくれはしない。

 

どうしてリップル記事は偏りがちなのか?

 

では、(仮想通貨投機熱に関するものはさておき)なぜリップルの記事は断片的で、リップルは誤解されやすいのか?

分かりにくいので、しっかり調べるべき、というのが原則かもしれない。しかし、不勉強・取材不足と一方的に記者を批判し難い状況もある。

例えばSLUSH TOKYO 2018では、小生は4つの取材にもとづいて記事を書いた。

・メインステージでのCTOプレゼン:主にW3CのInterledgerプロジェクトについて

・SLUSH CaféでのCTOトーク:メインステージの続きとQ&A

・サブステージでのFireside Chat:プロダクトの説明、Bitcoin等とXRPの比較

・CTOインタビュー

先にあげた日経記事のように、メインステージではInterledgerがフィーチャーされ、Fireside Chatでは三つの主要プロダクトの説明に続きBitcoinに対するXRPの優位性の訴求がされた。

 

Fireside Chatについては、ウイングアーク1st株式会社マーケティング部のデータのじかん編集部による記事が詳しい:

Slush Tokyo 2018 レポート:リップル社の野望とその仕組み

なお、XRPの優位性の訴求が強調され、リップルのスピーカーは、アンチ・ビットコインではないと言いながら、ペイメントというユースケース(用途)において様々な点でビットコインじゃダメでXRPは適していると指摘を続けた。

これについて、PR・マーコム(マーケティングコミュケーション)的な視点から、もっとうまくできるのにもったいないと思うこともあった。会場では「自慢大会だな」という声も聞かれたほどで、仮に論理的に正しくとも、勝手なことばかり言って、などと思われるのは損だ(比較広告が限られた日本と当たり前の米国の文化ギャップも作用したかと)。

ペイメントという用途において、リップルが革新的かつ実用的なソリューションを提供していることを伝えるのが目的だったのではと思うが、結果としてそう伝わらないと目的は達成されない。

また、ビットコインやイーサリアムを例に出して、相対的にXRPの位置を高めようとしたが、逆効果と副作用を伴ったかもしれない。逆効果というのは、エンタープライズ・ソリューションの視点では、他の仮想通貨と一生懸命に比べられると逆に同列に受け取られる点。副作用というのは、比べられた仮想通貨のコミュニティに敵を増やしてしまう点。どちらも、リップルにとってメリットは乏しい。

 

話を戻すと、SLUSHという単一のイベントの中で異なるアングルのメッセージが発せられ、小生もやや混乱し、CTOインタビューで、やっとペイメントについてのエンタープライズITソリューションを柱とした企業だと理解できた次第だ。

 

なお、ブロックチェーン・コミュニティの方々からは次のような声(粗くまとめてみました=青字)も聞かれた。

リップルはXRPを用いたシステムで当初有名になった。銀行間システムのプレスリリース等により、XRPはどんどん値上がりした。

ブロックチェーン・コミュニティの人々は銀行間システムではXRPを使っていないのではないかと声をあげたが、しばらくリップルはだんまりだった。

銀行が実証実験ならびに導入しているほとんどのシステムではXRPは使われていない。

知識の無い人たちがXRPを買い漁り価格が高騰することで、自社や創業者などが大量に持っているXRPの資産が増えるのを眺めていた。

誤解なのだろうし、仮想通貨への投資は自己責任かつコントロールできないのだが、もっとよいPR・マーコムができたのではと感じた。

リップルの発信でなくジャーナリストの手によるものだが、先にあげた記事『仮想通貨市場の今後を率いるのはリップル、金融機関の導入進む』も、これに符合するものだ。知識ある読者でないと、タイトルをうのみにしかねない。先にあげた記事のように地銀が抜けたのも、こうしたコミュニケーション不全が一因と考えられる。もったいない話だ。

 

SLUSHでは、「Use case(用途)」「ペイメント」が共通して何度も強調されたが、もともとわかりにくいものは、かなりコミュニケーションに知恵と努力を注がないと、なかなか受け手は適切には理解してくれない。

伝わらないのが当たり前という前提でコミュニケーション戦略を考え、実情をにらみながら、ターゲット層と対話しながら、コミュニケーションを実行し、修正しながら進めるのが定石だ。

スタートアップは、試行錯誤を繰り返しながら前進するもので、はなから完全な行動(ここではコミュニケーション)を期待する方がおかしい。リップルもしかり。このブログ、おせっかいだが一面は公開メンタリングになってしまったが、建設的批判ととらえて、どんどん発展して欲しい。

ペイメントを変革するリップルを伝えることが第一の目的だとすると、シンプルなメッセージに統一することをお勧めする。そして、分かりやすくフォーカスしたストーリーを繰り返し発信し、対話の努力をしていけば、大きなプラスになるだろう。

ご興味あれば、次のブログ記事「記事『仮想通貨のカオスの中で、送金に革新を起こすリップル』への反応と追記」も簡単ですが書きましたので、ご覧ください。


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