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TEDxTokyoTeachers Ken RobinsonのTED talk、そしてスタートアップ教育

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3/2に三田TISで開催されたTEDxTokyo Teachersではいくつか刺激を受けた。その一つがKen Robinsonのビデオ。

■2006年TEDでの「Ken Robinson says schools kill creativity(ケン・ロビンソン:学校教育が創造性を殺してしまっている)」は和訳もついている。
Kevinは、子供に未来があるが、いまの教育はそれを殺していると世界的ダンサー/振付師の例などをあげながら説く。

小生と大江建・前早稲田大学教授の1986-87年頃の(日本での)研究で、(起業家度というか)自分は他と違うというアイデンティティー度が、年齢とともに低下する傾向が示されたことを思い出した。個性や創造性を削ぐ圧力が社会にあるのだ。

(それから余談…女性はマルチタスクができて、男性はそれがうまくできない、という小生の仮説をKevinが確認させてくれた。)

2010年TEDでの「Sir Ken Robinson: Bring on the learning revolution!」でKevinは、
・poor use of talentsの問題
・創造的な人はlove what they do -- this is meだから
・いまの教育はbroken model
・not evolution but revolutionが必要 -- innovate fundamentally education
・幼稚園の入試で3歳にインタビューする?アホか。
・いまの教育はfast food model - standardizedされ過ぎ
・human talent はdiverseだからpersonalizingが大切
・passion, energy, spiritを重視すべし
などと語っている。
まさにその通りだと思う。

特に、「passion, energy, spirit」については、多摩大で実践アントレプレナーシップを担当していて常に感じるところ。

■3/2のTEDxTokyo Teachersで2010年の力作ビデオ「Ken Robinson: Changing education paradigms」が上映された。


YouTube: RSA Animate - Changing Education Paradigms

Entrepreneurship(起業家精神/ベンチャー)を「教える」ことができるのか、というテーマについては、論文がいくつも出ているが、ここでpaperについて言及はしないが、課題についていくつか。
・日米のentrepreneurship教育の多寡
・日本でしばしば聞く声と現実
・基本的知識
・生命エネルギーとコミュニケーション

日米のentrepreneurship教育の多寡
米国ではentrepreneurship教育の歴史が日本より長いが、それ以上に日本ではこの分野の教育の絶対量(人×時間)が乏しい。これは風船と宇宙船くらい差がある。
なお、日本でスクールを開講した例もマルコ―とか含め様々なあるが、うまくいった例は少ない。教育を受けようという人が少ないことが大きな課題だ。米国では、何年も前からKauffmanほかのスポンサーによる教育プログラムが普及しており、新しいところでも小生がmentorの一人である500 Startupsのコミュニティでは、Startup metricsなどのコースも人気だ。

日本でしばしば聞く声と現実
「ベンチャーを勉強する?そんなこと言ってるんじゃなくて、ヤレよ!」という言葉を数多く聞く。それも大した知識人からもだ。竹やりや根性、猪突猛進ですむのは、ごく一部の業態だけ(それでも無知だと転ぶ)。気合でなんとかするといった風潮・・・ては何ともならない、あるいは転ぶといった結果を増やしているというのが現実だ。気持ちと頑張りだけで通用する時代はとうに過ぎている。

基本的知識
ベンチャーのイロハというか、基本的な知識を持っていないと当然だが失敗の確率が高くなる。マーケティングやマネジメントもだが、先日「起業のファイナンス」著者の磯崎さんと話してベンチャーをとりまく投資家や株主もかなり基本的な知識が欠落していることを再認識したところだ。基本知識は、個性がどうのと言う前の不可欠なものである。

生命エネルギーとコミュニケーション
これらを経て、やっとKevinが言う「passion, energy, spirit」の話になる。小生も起業家成功の鍵は生命エネルギーだとよく言っている。ただし、単に「やれー、燃えろ―」とか周囲が言っても始まらない。本人の中に核があり、それに気づき、さらにアンプリファイ、ナビゲートすることだ。
これは個人が基本だが、個人で完結はしない。他のTEDxTokyo Teachersプレゼンで「inspire」されることの大切さが説かれたが、エコシステム生態系での対話やぶつかりあいで、エネルギーは高まり、正しい方向へとspiritは導かれる。
そのためにはコミュニケーションが重要だ。自分を表現し、他と議論をし、それを経て未来(次なる自分)が生まれる。しかし、概して表現や議論が下手な起業家が多い。だからこそ教育の価値がある。これは講義を聞くだけでは上達しない。実際に話し、議論する、これを繰り返し、専門家が導くことで、アイデアを練るプロセスを体感し、自信が生まれ、自己発見につながる。その場で知識を得るだけではダメだ…生涯学び続け自らを開発し続けること…そのための学び方を習得する機会を与えることだ。

多摩大のコースやTechWaveのVanguardスタートアップ・スクールでも、こうしたトライをしている。そして、中でも「無知の知」が大きい。新事業とは、これを乗り越えることでもある。

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