オルタナティブ・ブログ > ひといくNow! -人材育成の今とこれから- >

HRD(人材の育成、教育研修)の現場から、気づいたこと、アイデアを発信します。初めて人材育成や教育担当になった方でも、わかりやすく、取り組みやすい情報提供を目指します。特に、20代~30代を元気にしたいご担当者様、是非このブログにご参加ください。

オムニチャネルー「海外企業」と「日本企業」何かが違うと思うのはなぜ?

»

海外のサービス業の一部で、大きな業績改善効果があったことから、国内大手流通業、小売業がこぞって取り組む「オムニチャネル」。
いつでも、どこでも、手軽に、楽に、お買い物ができるようになるーという消費者にとっていいことづくめの取り組みのようですが、いち消費者としては、まだその恩恵にはあずかっていないなぁ、と感じる今日この頃。

一方で、海外企業は静かに、そして、地道に取り組みを進めているような実感があります。と言うのは、ある化粧品ブランドのサービス体験から、そのことを感じたから。

今回は、海外企業のサービス体験から、オムニチャネルについて考えてみます。

これも1つのオムニチャネル?
女性にとって毎日のお付き合いとなる化粧品。出来れば出費は抑えたいもの。そのため、私は化粧品を、海外旅行に行くときに(あるいは行く人に頼み)免税店で購入していました。

しかし、ここ数年海外に行く機会がなく、人に頼むのも気がひけたことから、「高いなぁ」と思いつつも、百貨店の化粧品売り場に行くことに。

売り場でお目当ての化粧品を購入すると、同時に勧められるのがカードへの登録。登録料は無料。自分の肌に関する情報を登録しておけば、次回からは、その情報を基に対応してもらえることと、DMでお得な情報をいただけるとのこと。(メール登録は極力しないようにしているので、DM登録で対応)

今では、ポイントカードなど、カードがないサービスの方が稀なので、その1つとして受けとめていました。

登録後しばらくして、DMが送られてきました。それは、「バースデイカード」。
バースデイの月は多くの企業から「ハガキ」は送られてきますが、「バースデイカード」はそう多くありません。さらに、そのカードはラグジュアリー感溢れ、「大切にしてもらえている感」があるもの。

カードを開けると「プレゼントをご用意しております。是非ご来店ください」のメッセージが。ちょうど、買わなければならない商品もありお店に足を運んでみると、そこに用意されていたのは、思っていた以上に素敵なプレゼント。
それは、箱に入ったハンドケアのセットと携帯に使えるストラップのアクセサリー。
とてもゴージャスで、バースデイにもらって嬉しいプレゼントでした。

また、お買い物もとてもスムーズ。店員さんが持つハンディ端末には、私の購買履歴やいただいたサンプルの情報が残っているため、「前回と同じので」と伝えれば、すぐに対応してもらえます。さらに、肌質に合った季節ケアのポイントやそれにあわせたサンプルもいただけるので、徐々に「お店でのお買い物が高い」という風に感じなくなりました。

ロイヤルカスタマー扱いは、意外と嬉しい
その後、カード会員であり続けるためには、ある一定以上の購買実績が必要となりました。しかし、その企業のサービスをいたく気に入ったので、自分以外の人に差し上げるものをそこで買うことで、ハードルをクリア。

企業側から見ると、カード登録後、ある一定以上の購入額をラインとして設けることは、オムニチャネルの戦略で言う「ロイヤルカスタマー」への誘引でしょう。

しかし買い手の私は、そのこと以上に「その企業のお客様として扱われたい」という気持ちが強いので、「うまく戦略に乗せられたな~」と思いながらも、「ロイヤルカスタマー」という扱いが嬉しいものでもあるのです。

無機質な戦略を有機的にするものとは?
しかし「大切にされている」と感じられたことは、バースデイカードやプレゼントがあったからだけではありません。やはりそこには、販売員の接客姿勢がモノを言っています。

例えば、「母にクリスマスのプレゼントなので」と言って購入すると、サンプル品をいつもより余分に入れ、丁寧にラッピングをし、「お母様に喜んでいただけるといいですね」と、声をかけて姿が見えなくなるまで見送ってくれる。

このようなことが、ブランドへのロイヤリティをより高めています。

補足情報としては、私が行く百貨店のそのブランドは、土日は混んでいることが多く、時間帯によっては3~4人お客様が並んでいます。同時刻の他のブランドには、それほどお客様が多くないことから見ても、そのブランドの取り組みは奏功していると言えるでしょう。

「がんばり型」オムニチャネル
このような海外ブランドの取り組みがある一方で、日本のオムニチャネルの取り組みは、企業側の「がんばり」に目がいきます。「オムニチャネル」という用語ばかりが先行し、買い手の気持ちに寄り添えていないなぁ、と感じるのは私だけでしょうか?

その一例として、オムニチャネルの話をしていたときに、私の友人が次のような体験を教えてくれました。

「最近、洋服を見にいくと、すぐにスマホで在庫を調べてくれてね。何だか押し付けられているみたいで。ちょっと見たいだけの時に、「在庫をお調べいたしましょうか?」って言われると、引いちゃうのよね」

オムニチャネルで成果を上げる企業に備わる「世界観」
身近な体験を通じて、私は、海外のブランド企業は、「自社の世界観を、お客様により効果的、効率的に演出するために」オムニチャネルに取り組み、日本の企業は、オムニチャネルのために「ビジネスの進め方を変え(ようとし)ている」、このような印象の違いを感じています。

個人的な体験以外の例としては、バーバリーは、オムニチャネル化により成果を上げている企業の1つ。日本企業とのライセンス契約終了も、その戦略推進の中で起こったことのようです。その理由の1つは「世界観」を統一する必要があるためと言われています。この「世界観」というのも、オムニチャネル推進においては、注目しておくポイントかもしれません。

と、海外企業のことばかり、よい面を書き連ねましたが、これから日本企業は、オムニチャネルの推進の仕方によっては、大きなビジネスチャンスが生まれる、と、私は考えています。次回も引き続きオムニチャネルについて考えてみたいと思います。

Comment(0)