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2005/10/18
私は経営のプロフェッショナルを目指して米国の大学院に学びましたが、最近の若い人たちも意識が変わってきていると感じます。生涯同じ会社に勤めようと考えている人は半数を割ってきていると思いますし、プロとしてのスキルを磨き、転職していくことが前提となり始めています。
一方、M&Aやファンドによる買収、外資の本格参入など、日本企業を取り巻く環境は劇的に変化しており、それはさらに加速していくでしょう。自分の会社が朝起きたら外資になっているかもしれませんね。それはもう身近なこととして起こり得るのです。
大企業に入ったら40年間勤め上げて子会社に出向するといった、いわゆるレールが敷かれたようなキャリアというのはもはや存在しないのです。若い人たちはそれを理解しています。
「サラリーマンライフ」は昔ほど安定していないかもしれませんが、でも逆にチャンスはたくさんあると思います。戦国時代のようで面白いのではないでしょうか。特に、ITは特別なスキルが必要とされるため、いろんなチャンスがあり、ITの専門家たちの将来は明るく開けていると思います。
私はデルで日本のビジネスだけでなく、韓国と中国の一部も統括しています。彼らと仕事をしながら感じるのは、リーダーを目指そうとする人たちのエネルギーです。韓国では働きながら博士号を取るのが一種のブームになっていますし、中国の人たちも貪欲です。
彼らは、自分のキャリアに対して明確なビジョンを描いていて、その目標を達成するために頑張っています。日本人も忍耐強く、こつこつと努力するところは不変の強みなんですが、彼らは自己主張も強く、残念ながら日本人は一対一の勝負ということになると負けてしまうのではないでしょうか。
ITだけでなく、韓国、中国、インド、そして米国の人たちが積極的にどんどん自己主張する中、彼らと対等にがんがんやり合う術を学ぶべきです。優しさも日本人の美徳ですが、仕事の場では、やり合うコミュニケーションスタイルも身に付けなければいけないでょう。
また、先週、このブログでも書きましたが、ITの専門家はまた、ITのプロジェクトごとにビジネスプランを策定しなければいけないわけですから、ファイナンスのような数字の知識も持ち合わせなければいけません。
ITのことが分かり、世界で通用するコミュニケーションスタイルを身に付け、数字も分かれば、ITの世界のスーパースターになれます。将来、社長も夢ではないでしょう。
スポーツの世界では、イチローや松井などが世界的なプレーヤーとして活躍しています。音楽でも小澤征爾を筆頭にさまざまなアーティストが世界に羽ばたいています。それではビジネスの世界はどうでしょうか? 海外の企業でも社長が務まる人が何人いるでしょうか? 世界第2の経済規模を誇る国なのに、世界に輸出できるグローバルプレーヤーがビジネスには非常に少ないのです。日本からもカルロス・ゴーンが生まれるべきなのです。そういう人材、スター経営者をつくることが、われわれの次の世代に夢をつなぐことではないか、と私は思うのです。
1週間にわたって、日ごろから考えている組織の在り方やリーダーの在り方について書いてみました。お読みいただいた方々に感謝したいと思います。
2005/10/17
私が新卒でサラリーマンになった1980年代初め、会社の電算室には、超大型のコンピュータが鎮座していました。そこで働いている人たちは社員ではなく、メーカーからの出向でした。今考えてみるとおかしいですよね。企業の心臓部にメーカーの人たちが入って作業している。しかも、社員はメーカーに任せっきりでよく分からない。これは、家に帰ったら、台所に八百屋さん、魚屋さん、肉屋さんがいて食事を作っている。そして、「この肉は少し高いですが、一番良いものだから大丈夫です。全部ウチに任せてください」と言ってるようなものです。
とにかくITはブラックボックス化していたし、良いソリューションも今ほどなかった。そもそも、非効率な流通経路でITのシステムが届けられていたため、コストが高くついていたのです。また、標準化も進んでいなかったので、コストを下げながらパフォーマンスを高めていく手法も浸透していなかった。ベンダーに任せっきりという状態が長い間ずっと続いてきたのです。しかし、そんな状況はどんどんと変化してきています。
デルは1990年代に日本市場に本格参入した新興企業です。そのため、日本の企業と何十年の付き合いがあるわけではなく、ましてや資本関係や人的関係があるわけでもありません。だから、デルのシステムを導入してくださるお客様というのは、革新的なマインドを持ったところが多いと感じます。
デルのお客様に共通しているのは、コストや生産性に対する高い意識です。そうでなければ、長年、ITを任せてきたベンダーからデルに切り替えてはくれません。
お客様にデルはIT支出の7割を新規開発に充てられるようになった、と話すと、みなさん「どうやって?」と身を乗り出して聞いてきます。日々、メンテナンスコストを抑えられれば、新規開発に予算を回して営業部門を支援できるのに……、会社はもっと成長できるのに……、そうしたことを問題意識として持っているのだと思います。身を乗り出してくるITリーダーというのは、経営の課題を理解していて、そのためにITは何をしなければならないか、を理解しています。私は日々お客様とお話しして、実に多くのことを学ばせていただいています。
2005/10/14
昨日は、ITの専門家といえども、経営的視点に立ち、生産性の改善や利益の増加などに直接貢献すべきだと書きましたが、経営的視点からITを引っ張っていくCEOなくして、現場にだけ「経営者として考えろ」と言ってもそれは酷だし、難しいですね。
CIOの役割とは何なのか? そういうことをCEOや社長がきちんと理解していなければなりません。
CEOや社長が、「ITってよく分からないなぁ、CIOって何だ? ITはXX社に任せてるんだろ。幾ら支払ってる? 年間15億円? それはひどい、少し安くしてもらおう」といった認識ではダメなんです。
CEOは何もCIOである必要はありません。CIOがどういう役割を果たすのかを理解して、きちんと指名すればいいのです。社内に適任者がいないのであれば、社外に求めればいいのです。
営業1人当たりの売り上げが低く、非効率なところがたくさんあるという課題を抱えていた場合、経営トップであるCEOは、「ITの力で生産性を2倍に引き上げられないか」とCIOに対して経営のイニシアチブ、つまり戦略的重点項目を示し、きちんとしたシステム構築のプラン策定を求めます。
CIOはシステム部門に戻り、経営上の課題を示し、達成したいことを示し、それが可能となる新しいシステム構築に取り組みます。CIOは、現場に入って腕まくりして、「これが経営の方針だ。俺たちシステム部門もこれを実現していこう」と鼓舞していく必要があります。
こうしたCIOの存在なしに、あるいはやり取りなしに、CEOや社長が「よく分からないが、とにかく15億円を半分にしろ」と言っても現場は困るでしょうし、戦略的な動きも取れないでしょう。
現場でも変革はできますが、戦略的な、あるいは長期的なビジョンに基づいた変革は、トップが行うべきものです。また、ITの専門家たちが経営的な視点に立ち、主体的に変革していくには、このように経営トップが率先して彼らのマインドを変革していく必要があります。単に「この経営の本を読んでおけ」と言うだけでは、彼らのマインドはなかなか変わらないでしょう。
デルでも幾つものITプロジェクトが進行していますが、きちんとビジネスプランを策定し、あるアプリケーションへの投資によって生産性がどれだけ改善されるのか、どれだけビジネスを成長させることができるのか、といった数字を示すことが求められています。今まではできなかったマーケティングが可能になることもあるでしょう。物流の管理がうまくできるようになり、リードタイムが短縮し、在庫を減らすこともあるでしょう。そして、さらに重要なことに、結果的にお客様の生産性向上に貢献できることが多いのです。
こうしたビジネスプランをITのプロジェクトごとにきちんと策定し、その結果として財務諸表上、例えば、売り上げを何億円引き上げられる、コストが幾ら削減できる、ということを示します。そうする中でITの専門家たちの経営的センスも養われていくはずです。
もちろん、最後はCEOや社長が判断を下すのですから、やはりトップがきちんと理解していないといけません。CIOをきちんと設置し、ITプロジェクトごとのビジネスプランを評価して判断するのは、どちらもCEOや社長の仕事なのです。
2005/10/13
今日からは、このブログのテーマでもある次世代のITリーダーらがどうあってほしいか、について書いていきます。
先ず、ITリーダーというのは、技術そのもののリーダーというよりは、企業のシステム部門において、企業の生産性向上を図っていく、そうして経営そのものに貢献していく存在であるべきだと私は考えています。
お客様とお話ししていると、昭和40年代から何億円もするメインフレームコンピュータを3年ごとに更新してきたという話をお聞きすることがあります。すべてのアプリケーションがその環境で稼動しているため、ほかに軽くて速くて簡単なインフラがあるのに移行したくても移行できない、そういった悩みを抱えておられるのです。
もちろん、メインフレームやUNIXを否定するわけではありません。すべてをそれに依存する必要はない時代になったということだと思います。
ITリーダーは、経営の効率を高め、セールス、マーケティング、バックオフィスから生産現場に至るまで、最適なソリューションを提供するためにはどうしたらいいのか? どうすれば違ったことができるのか? 何か新しいことはできないのか? どうすればもっと付加価値を提供できるのか? そうしたことを常に考えなければいけないでしょう。
大半の企業はIT支出の7割から8割をメンテナンスに費やしています。新規開発には2割から3割しか割けません。かつてはデルもそうでした。われわれがサーバ製品を提供していなかった時代です。バックエンドでは大きなサーバが稼動していましたし、われわれ自身がITの使い手として今ほどは洗練されていなかったのです。
しかし、バックエンドも自社で開発したサーバやストレージで置き換え、基幹業務に使っていく中で、低コストで堅牢なシステムを構築できるようになり、その結果、ITのコストが売り上げに占める比率は、およそ半分近くになりました。
メンテナンスと新規開発の比率も、7:3だったものが3:7と逆転し、より多くの予算を、生産性の改善やCRMのように売り上げの増加のために投じています。IT投資は、まさに経営にダイレクトに貢献しています。
セールスの手法などは毎年変わるというわけではありませんが、ITの技術やソリューションというのは、毎月のように新しいものが登場し、劇的に変化しています。つまり、ITに携わっている人たちは、企業を取り巻く環境が激しく変わる中にあって、最も変化の波に晒されているといっていいでしょう。したがって、ITの専門家には、何と言っても新しいものに挑戦していく柔軟さや、自ら作り上げたシステムでもぶち壊して再生させていくガッツ、勇気、スキルが求められるし、それをやるべきかどうかの経営判断能力も必要になります。
また、新しいものを貪欲に吸収して、少しでも良いものを作っていく努力を日々重ねることはもちろんですが、さらに一歩進め、常に自分が何のためにシステム部門にいるのかを考えるべきです。
肥大化した会社のシステムのお守りのためにITの専門家がいるのではありません。先輩が築いたシステムをうまく稼動させていくためにいるわけでもありません。企業として優れた製品や優れたサービスを提供し、利益を上げ、社会に貢献していくためなのです。ですから、ITの専門家にとっては経営的な見方も大切となるのです。技術そのものの勉強だけでなく、財務やマーケティングなど、幅広く勉強していくことが求められるのではないでしょうか。
明日は、現場を含め、組織全体が経営的視点を備えるためにCEOが果たす役割について書いてみます。
2005/10/12
はじめまして、デルの浜田宏です。私はITの世界に入って、まだ10年強です。それまでの日本のITを知らないがゆえに、非効率な流通や、経営へのITの活用度、ホワイトカラーの生産性に大きな疑問を抱いたのがきっかけです。そんな立場から、1週間という短いあいだですが、日本企業の生産性向上を担うITリーダーらにメッセージを送りたいと思います。
私は、大学卒業後、日本の企業などでしばらく働いたあと、米国のビジネススクールに学びました。卒業後はコンサルタントになるか、実業界で経営者を目指そうと考えていましたが、最終的にはサンフランシスコの小さなコンサルティング会社で働くことを決めました。そこでは、米国企業が日本市場に、あるいは逆に日本企業が米国市場に事業を拡大する際の組織戦略や人事システム、トレーニング体制などをグローバルカンパニーとして、どう作っていくかというコンサルティングを行っていました。
そんなとき、その会社がテキサス州オースチンのデル本社から「日本に本格参入するので手伝ってくれないか」という依頼を受け、私がそのプロジェクトリーダーになりました。サンフランシスコから東京に戻り、デルで組織戦略の策定や人事システム作りを進めていく中で、マイケル・デルのビジネスモデルや、デルが起こそうとしている革命に次第に惹かれていきました。
ITの外の世界から入ってきましたから、考え方は非常に単純でした。マイケル・デルが言うように、長く複雑な流通経路を通って販売店に届いたら、製品は顧客にとって高いものになってしまいます。また、製品を一番理解し、愛しているのはそれを作った人たちです。だからメーカーが直接売って、直接サポートする。それがお客様の満足度につながる。まさにデルのダイレクトモデルの真髄です。このことを目の当たりにしました。
一方、これからのビジネスにはIT活用は不可欠、という強い思いもありました。米国ではパソコンをカンガン使い倒しているのに、当時の日本のオフィスにはまだパソコンが十分普及していませんでした。帰国したとき、日本のホワイトカラーの生産性の低さにも大きな疑問を抱いていたのです。
私の基本姿勢は、「頑張れ、ニッポン」です。当時はバブル経済崩壊の後遺症から立ち直れていない1993年、94年でしたが、どうすれば、生産性を上げ、再び日本の企業の競争力を高めていけるか? 重要な回答の1つはIT、まずはパソコンの普及と活用だと考えたのです。
デルのダイレクトモデルであれば、日本でもパソコンの価格が手ごろになって普及するし、普及すれば生産性も向上する。「頑張れ、ニッポン」が根っこにある私は、これは面白い、それに大きな社会貢献にもなると考えたのです。これが、その後デルに入社を決めた一番の理由です。
日本の企業は長らく「現場力」に支えられてきました。日本の経済は、本社の人たちのホワイトカラーの生産性が高かったからではなく、工場や研究開発という現場の地道な改善によって伸びてきたのです。日本経済がさらに発展していくには、今度は本社の生産性を高めていかなければなりません。それはセールスであり、マーケティングであり、人事であり、ファイナンスなんです。ITはそれを支援できるし、経営者の方々もそれを理解しているため、ERPをはじめとするエンタープライズアプリケーションの導入に取り組んできたのです。
私は、デルで10年以上働きましたが、モチベーションは今も変わりません。「頑張れ、ニッポン」「非効率な流通の改善」「ITによる経営効率の改善」「日本のホワイトカラーの生産性向上」です。
明日からは、次世代のITリーダーらがどうあってほしいか、について書いていきたいと思っています。