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日本や日本人って何だろう。改めて「海外」を考えるヒントを身近な話題から

給料が上がらない理由を考えるべく、主要国の1人あたりGDPを分析してみた

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冬のボーナスの話題がサラリーマン雑誌に出始める時期である。
中には、「世界の給与水準比較」というような特集もあり、マクロ的な見地からキチンと見てみようということで、自分でも簡単な分析をやってみた。

上から順に、主要国の1人当たりGDPで、名目ベース、実質ベース、購買力平価(US$)の3種類である。普段それほど海外に出るわけでもない一般的な人間の生活実感に併せるため、為替レートの影響をできるだけ除くべく工夫をしてみる。

最初の2つは自国通貨で、2000年=100と指数化した名目と実質ベースの1人当りGDPを見ている。統計データに詳しくない方のために申し上げると、両者の違いは、手取りの額面の給料(名目)と、物価を考慮した両的な実感(実質)ぐらいに考えると良いだろう。

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結果を一言で言うと、「まあ、なんということでしょう。」 日本ってこんなに長期低迷していたとは。。。
先進国だけで名目で見てみると、日本とイタリアがマイナス成長。
給与明細を見ながら、「なかなか給料上がらない」って実感とピッタリきてしまう。。
これじゃあ、グローバル企業の経営者から見えば、「日本市場は無視してもOK」となっても仕方がない。

もう少し詳細にデータを見てみよう。数字からは以下のことが読み取れる。

  • 実質ベースでは、欧米諸国は日本と同様に低迷。イタリアは最低。名目で見ると日本も同じ最低レベルだが、デフレの分でかろうじて実質べ-スで日本は成長。イタリアではアジアからの輸入デフレとか起こらないのかも知れない。
  • 欧州諸国は、リーマンショックまでは堅調に成長。ショック後、名目で成長が止まり実質でマイナスに転換。今後は、日本の後を追って20年間の低成長になる可能性が感じられる。やはり、日本は「課題先進国」なのだ。
  • 韓国、シンガポールは、リーマンショックの影響は一時的であり、長期的には着実に成長路線上にある
  • BRICsの成長は確かに凄いが、ブラジルは意外に大したことない。インフレ率が凄いということなのだろう

最後に、購買力平価で見ると、以下のような事実が見えてきた。

  • 日本もそれなりには成長している。円ベースのデータと比較すると、この成長は為替レートによるものだと推察できる。すなわち、海外に出ないと成長のメリットは享受できないということだ。個人レベルで言えば、「沖縄や北海道に旅行に行くよりも、中国、韓国、ハワイに行って豊かさを享受しよう」というのと同じ。IT業界で言えば、オフショア開発や海外拠点のサーバーホスティングなどグローバル化によるコストメリットを駆使しないと成長できないわけだ
  • アジアの中ではシンガポールが高い。日本はオーストラリアにも負けている。英語圏による開放経済型が強いということか。
  • 日本は、2000年ごろから欧米諸国にも抜かれた。欧米諸国が比較的堅調だったのはユーロ導入の影響であろうか。
  • 中国の1万ドル超えは、意外に早いかも知れない。後2-3年程度であろうか?
  • 韓国がかなりのスピードで後ろから迫ってきている

データ的には、今の韓国は日本の5年前と同じ水準であり、時間差が詰まってきている。1人当りGDPで20000$を超えたのは日本が1991年、韓国が2003年。「冬のソナタ」は2002年の作品なので、この頃の話だ。日本で言えば1990年頃の水準であり、「織田裕二の東京ラブストーリー」などトレンディドラマ全盛の頃だ。10年間あまり成長のなかった日本が、バブル時代のトレンディドラマ再放送を韓国版で見ているような感覚だったのではないか。

こうやって見てみると、改めて韓国やシンガポールのしたたかさが目に浮かぶ。
為替レートを上手く使って、シンガポールで日本円で暮らすというのが最高なのかも。。

これじゃあ、この先も日本の景気は明るくなりそうな気配もないし、人口を減らすことで一人当たりの豊かさを維持しようと少子化に向かうのは、ある種の本能であるような気がする。
国の少子化対策としても、単純に出生率向上を狙うだけでなく、増えた若者が競争力を持って稼いでいける教育・雇用施策とセットでないと、却って潜在失業者を増やすだけになりかねないリスクがある。

また、こういう状況であれば、主要先進国がこぞって新興国市場へ向かうのは仕方ないいだろう。。今後益々競争は厳しくなりそうだ

さあ、日本人としては、何を強みにして生きていこう。

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