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デジタルとアナログの間を行ったり来たり

有明にて事件発生(後)

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 ハルトの頭についていたのは血ではなく染料だったって?

 キャサリンは話を続けた。「まだあるのよ。ニセの血の成分、つまりコーンスターチがハルトとヒナタのシューズにもついていたわ。ふふっ、どういうことかしらね」

 なるほど、意味深だ。一方、メモ用紙を調べると「ひなたへ 準備があるから早めに来て H」というメモが読める。Hのイニシャルはヒナタとハルトしかいない。ヒナタはあて先だから残りはハルトだ。ということは、ハルトはヒナタに何か協力を求めたことがわかる。それと靴に付いたコーンスターチと関係がありそうだ。

 それからバスルームのブラシについていた毛はヒナタのだった。不審な点はない。タオルの残り香はどうやらハルトの香水だ。ハルトはバスルームに入って汗をぬぐったようだ。また、ヒナタの携帯にはヒナタの指紋のほかにハルトの指紋もついている。ハルトはヒナタの携帯に触って何をしたのだろうか。ただバスルームを覗いただけじゃなさそうだ。

 外出したカイトとペペ、アヤネだが、アヤネの服にペペの毛がついていたので途中で合流したのだろう。ユウトに関係するものといえば、ベランダにはユウトのギターのピック、ユウトのペンで描かれたペーパータオルのしみ、またユウトの衣類(紺色コットン)の繊維が落ちていた。だがユウトがベランダで読書をしていたなら、これが事件との直接の関連性を示す決定的な証拠とは言えない。

 一緒に捜査しているギル・グオッサム捜査官は言う。「これは自作自演じゃないか?」

 私もそう思っていたところだ。そもそも、頭にニセの血をつけて倒れているというところからしておかしい。犯人が相手に危害を与えず、ベランダに寝そべってもらい、頭に赤い染料をつけたままにさせるなんて不自然だ。ハルトが自ら赤い染料をつけて倒れたと考えるのが妥当だろう。だがなぜそんな狂言を仕組む必要があるんだ?殺されたかのように「見せる」ことに何の目的があるのか?

 あとこれは単独の行動ではなく、共謀者がいる。ヒナタだ。二人の靴にはコーンスターチが残っている。恐らく事前に「血」を作ったのだろう。メモにあった「準備」とは、ニセの血を事前に生成しておくことだったと考えられる。

 事件直前のユウト宛ての電話だが、これはヒナタがバスルームからかけたものだろう。後で通話記録で確認すれば裏が取れることだ。この時、ユウトはベランダにいた。ハルトは事件を起こすため、ユウトを一時的に自分から離す必要があった。そこでコーラを取りに行く時にバスルームのヒナタに指示したのだろう。数分後に携帯から別荘に電話をかけるようにと。よし、ハルトに話を聞いてみよう。

 ハルト、あの血はニセモノだろう。なぜ自分の頭に血をつけて倒れていたんだ?

 しばしの沈黙の後、ハルトは自白した。「ぼくは、ただ、みんなにどう思われているのか知りたかったんだ……」

※本投稿はパナソニックセンター東京にて開催されたミステリーフェスティバルを元に、脚色して作ったものです。事件から登場人物まですべて架空のものです。

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