人に指示をするときの「状況・しくみ・不都合・指示」のパターン
こんにちは、ドキュメント・コンサルタントの開米です。今日は、「状況・しくみ・不都合・指示」というパターンについて。
たとえば、「人に指示をする」場面を考えてください。
- 「食中毒を防ぐために手をよく洗ってください」
- 「雨が降るかも知れないので傘を持ってきてください」
などなど、ごく簡単な例を挙げましたが、「指示をする」時に役立つ便利なパターンのひとつに「状況・しくみ・不都合・指示」というものがあります。
あるしくみによって、ある不都合が起きることがあるので、状況を限定した上で、それを防ぐためにこうしなさい、という指針を示すわけですが、実際に「人に指示を出す」時にはこの情報構造の一部が省略されて伝わることが多く、いろいろと問題を引き起こします。
まず、「状況・しくみ・不都合・指針」のパターンは通常、このままでは使われません。一般には、「結論を先に、理由を後で」言うのがビジネスコミュニケーションでは望ましいスタイルとされています(例外も多いですが)。その場合、「状況+指示」をまとめて「結論」、「しくみ+不都合」をまとめて「理由」となります。
そして、こうした「結論優先」のスタイルを取ったときに注意しなければならないのが、「単純化による結論の変質」です。
「理由の省略」は、理由の説明が専門的で長く複雑になるときによく起きます。
めんどくさいから細かい理由は聞きたくない、どうしたらいいか教えてくれ、というタイプの人は「理由の省略」を求めがちですね。
「専門用語の回避」も似ていて、専門用語を使うとどうしてもその説明が必要になるので、「めんどくさいから専門用語は使わないでくれ」という聞き手に過度に迎合すると、こういうことが起きます。
上の例では「緑皮」を「皮」に変えたのが「専門用語の回避」です。「緑皮」自体は大した専門用語ではないので変えなくても通用することを期待できますが、もっと専門性の高い概念の場合は、非専門家向けに説明をするときは回避されてしまいます。
そうしてこれらが重なったときに起こりがちなのが、「過度の一般化」です。理由を省略し、専門用語を回避して③まで来ると、それが④のように理解されてしまい、非専門家の間で伝わってゆくケースがあります。
もちろん、④は間違いです。④が正しいのであれば、ジャガイモを皮ごと使う料理はできません。ジャガイモの皮で毒が多く含まれるのは「緑色をした皮」の部分なので、それ以外は食べても問題ないのですが、過度に一般化した結論だけが広まると、こういう誤解が起きやすくなります。「単純化」は行うべきですが、なにごとも加減が問題なので、やりすぎてはいけないんですね。
実のところ、前回話題にした「歯みがき指導」の話も、「理由が省略」された「過度に単純化した結論」が広まってしまったケースと考えられます。
(続く)