自治体RPAの導入状況と今後
RPA(Robotic Process Automation)の注目度が高まっており、自治体がRPAを導入する動きも出てきています。
■茨城県つくば市の事例
茨城県つくば市では、2018年1月から、株式会社NTTデータ、株式会社クニエ、日本電子計算株式会社と共同で、自治体業務においてRPAを活用するための共同研究を実施しています。
本共同研究では、つくば市役所職員のアンケートやヒアリングを実施し、定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を抽出し、業務量、難易度、RPAの作業特性などを評価して、既存システムにRPAソフトを導入し、職員の稼働時間の削減やミスの軽減による業務品質向上などの、改善効果の測定を行い、RPAの適合可能性の高い業務や処理を分析しています。
自治体では、特に確定申告時期の税務処理には多くの時間外労働が担当課職員に課せられている状況にあり、れらの課題解決のためにRPAを活用することで「作業時間の短縮(効率化)」と「ミスの少ない正確で的確な処理」の効果を測定しています。
つくば市の市民税課では、新規事業者登録や電子申告の印刷作業等の全5業務にRPAを導入し、結果として、3カ月で約 116 時間の削減、年間換算で約 336 時間の削減見込んでいます。市民窓口課では、異動届受理通知業務にRPAを導入し、結果として、3カ月で約 21 時間の削減、年間換算で約71 時間の削減見込んでいます。
今年度は、市民税課・市民窓口課に加え、納税課・資産税課への導入を予定し、来年度以降効果が見込まれる部署を対象に順次導入を行う予定となっています。市民税課業務全体の5%にRPAが適用できた場合、年間で約 1,400 時間の作業時間が削減でき、約 370 万円相当の時間外勤務手当が削減できる見込んでいます。
出所:つくば市 報道発表 2018.5
参考文献:つくばイノベーションスイッチ第1回公募~RPAを活用した定型的で膨大な業務プロセスの自動化~
■宇城市の事例
宇城市では、 「ふるさと納税」と「時間外申請」業務について職員が行っていた作業(端末操作)を自動化する実証実験を実施しています。
繁閑差の大きい「ふるさと納税業務」でRPAの実証実験を実施し、電子メールの受付からデータのダウンロードや当該データのアップロードなど、これまで、職員が手作業で行っていた端末操作を、全て自動化しています。これにより、職員の業務負担が大幅に削減され、時間外勤務が不要になったという結果が出ています。
出所:総務省 地方公共団体における行政改革の取組 2018.3
■和歌山県、大阪府の事例
和歌山県、大阪府では、富士通と共同で、RPAを活用した自治体職員の業務効率化の有効性を実証しています。
和歌山県では、30市町村と連携して実施する総務省からの統計調査業務や、官報情報検索サービスから取得した企業情報を県税事務所に通知する業務などにRPAを適用し、作業時間を大幅に削減できることの効果を確認しています。
大阪府では、所属別職員の時間外勤務の集計・報告作業など、大量の確認作業を伴う定常業務にRPAを適用し、職員の作業負担の軽減やミス防止への効果を検証しています。
■政府の政策について
政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)は2018年6月15日、世界最先端デジタル国家」の創造に向けて「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」の改訂を閣議決定しました。
「重点取組②:地方のデジタル改革」では、IT戦略の成果の地方展開に向けて、地方公共団体におけるクラウド導入の促進やオープンデータやシェアリングエコノミーを推進するとともに、地域生活の利便性向上のための「地方デジタル化総合パッケージ」の5つの柱の一つに、「RPA(Robotic Process Automation)などを活用したデジタル自治体行政の推進」が入っています。
自治体でのRPA導入の成功事例をもとに、自治体向けRPA導入支援を行う「自治体RPA」 の水平展開が期待されるところです。