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「2017年版 情報通信白書」を読み解く(6)データ流通・利活用の進展

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総務省は2017年7月28日、「平成29年「情報通信に関する現状報告」(平成29年版情報通信白書)」を公表しました。

今回は、「第2章 ビッグデータ利活用元年の到来」の「第1節 広がるデータ流通・利活用」について、まとめてみたいと思います。

ネットワークの高度化、センサー等の発達によるIoTの実現により、物理空間とデジタル空間の融合が加速し、様々な事象がデータ化され、データ流通・利活用の進展が今後期待されています。スマートフォン・タブレットの普及や利活用拡大、LTEなどの4Gの普及、HD(高精細)映像などの高品質なコンテンツの流通、医療や政府情報等を含む多様な情報のデジタル化など、あらゆる要因がデータトラヒック量の増大に寄与しているとしています。

日本のデータトラヒックについてみてみると、ブロードバンドサービス契約者(FTTH/DSL/CATV/FWA)の総ダウンロードトラヒックは2014年以降急速に伸びており、直近では前年同月比52%増となっており、特に、総アップロードトラヒックも直近1年で急激に伸びたています。日本の移動体通信のトラヒックについても1年で約1.3倍というペースで堅調に拡大しており、総ダウンロードトラヒックについては前年同月比35%増となっています。

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また、世界のトラヒックをコンシューマおよび企業などのビジネス の2つのセグメントの別でみると、コンシューマが全体の 約8割とトラヒック全体の大半を占めている状況となっています。

データの処理速度を高める技術革新も大きな進展をとげています。インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報や、小型化したセンサーから得られる膨大 なビッグデータを効率的に収集・共有できる環境が実現され、膨大な計算処理能力を備えていない機器であってもクラウド上で計算を行うことが可能となり、計算環境が進化しています。

特に、ビッグ データ化してAIなどで処理して付加価値を創出するデータの集中化と、必要なデータを必要な領域で局所的に処理してフィードバックするいわゆるデータの分散化(エッジ・コンピューティング等)の両面から技術革新が進んでいるとしています。

「データの集中化」は、クラウド上に集約したビッグデータの機械学習・深層学習が行われ、良質な学習 データを集約することで競争上優位となるデータ集約型社会の典型的な形態であり、「データの分散化」は、IoT 時代の膨大なデータ量を見据え、その価値の密度に応じた最適な処理を行う観点から、クラウドにおけるデータ処 理のみならず、より端末に近いネットワーク階層であるエッジ側にAIも活用したデータ処理を分担することで、 その課題を解決しようとする形態となります。

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データ種別も多様化しており、

  • 政府:国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」
  • 企業:暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したデータ(「知のデジタル化」と呼ぶ)
  • 企業:M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ(「M2Mデータ」と呼ぶ)
  • 個人:個人の属性に係る「パーソナルデータ」

の4つのデータに分類しています。

今後はIoTなどの進展により、多種で大規模だが形式が整っていない非構造化データがリアルタイムに蓄積され、ネットワークを通じて相互につながり、指数関数的に成長する 演算能力を用いて分析されることで、社会システムを大きく変えていくことが想定されるとしています。

。トラヒックの増大やこうしたデータ種別の多様化は、データの生成・保存に係るコストの大幅な低減が背景にあ る。実際にデータを保存するためのストレージの大幅なコスト低減とトラヒックの爆発的な増大の関係性がみてとれ、こうしたデータの保存に加え、AI等データを処理するコストの低減が、さらに多様なデータ種別の流通を生み出す要因になるとしています。

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データ流通・利活用の価値の増大しています。「インターネット経済(Internet Economy)」の新たなステージとしての「デジタル経済(Digital Economy)」の観点から言及されケースが多く、データの蓄積とその利活用が競争力の源泉となり、経済貢献にも寄与する動きが進んでいます。

2016年9月に開催されたG20杭州サミットにおいても、「デジタル経済」 が成長の鍵となるという理解のもと、デジタル経済を発展させるための原則として、

①イノベーション、②協力、 ③シナジー、④柔軟性、⑤包摂性、⑥オープンなビジネス環境、⑦経済成長、信頼と安全のための情報の流通、 ⑧重要な価値の共有

について言及がなされています。

新たなデータ利活用・流通モデルの進展しており、エコシステムやそれを変化させるイノベーションの中核となる事業者が、レイヤー1「ネットワーク要素事業者」やレイヤー2「ネットワーク事業者」から、レイヤー3「プラットフォーム・コンテンツ・アプリケーション・事業者」へシフトしており、IoTの進展を踏まえた新しいエコシステムが形成されています。

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新たなデータ流通・利活用モデルのメリットとしては、各産業分野や企業等にバラバラに存在する同種 データを統合することのみならず、時系列的にデータを収集し、異種データの横断的な組み合わせを実現すること で、データの価値向上が期待されています。

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