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2017年以降のデータセンターに関する展望

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調査会社のガートナー ジャパンは2017年3月29日、「2017年以降のデータセンターに関する展望」を発表しました。

今回発表した、ガートナーによる2017年以降のデータセンターに関する重要な展望は、以下のとおりとなっています。

2021年までに、日本のユーザー企業の30%は、デジタル・ビジネスに向けたデータセンター戦略の見直しに着手するが、その大半は単なるクラウド・サービスの利用実績を作ることにとどまる

多くの企業は、デジタル・ビジネスやモノのインターネット (IoT) がデータセンターの展開に何らかの影響を及ぼすと考えているものの、明確な見通しを持っていません。実際に、日本企業を対象にしたガートナーのユーザー調査では、デジタル・ビジネスやIoTが3年以内に自社のデータセンター展開に大きな影響を与えるという回答が全体の61%を占めていますが、データセンターの将来像を描こうとする企業の意識は低いままです。そうした企業は、アプリケーションやデータの散在という足元の変化を認識しつつも、将来のデータセンター像として、情報とデータへのアクセスをコントロールできる「クローズド」なシステムを想定し、その運用と維持管理に注力しています。その結果、短期的にはクラウドの利用や自社で利用するサービスの多様化が進むものの、長期的にはパフォーマンスおよびセキュリティの一貫した保証とガバナンスを欠き、デジタル・ビジネスにおける俊敏性という点でも行き詰まる恐れがあります。

ITリーダーは、データセンターに関する考え方とアプローチを、「継続的な安定性」から「管理の効いた変化とイノベーション」へ切り替える必要があります。ビジネス部門の視点から見た場合、IT部門とデータセンターは、インフラストラクチャの所有者というより、むしろ非常に俊敏なサービスの提供者であることが理想です。デジタル・ビジネスに向けたデータセンター戦略では、使用するインフラストラクチャやテクノロジ、アプリケーションではなく、提供するサービスに重点を置かなければならないでしょう。

とありますように、ユーザー企業自身がサービス提供者であり、提供サービスに重点を置くことの必要性を示しています。


2021年までに、日本の企業データセンターの30%が、施設の老朽化や能力不足に対処するためデータセンターを移転せざるを得なくなり、移転プロジェクトの計画、推進、資金確保に多大な労力をつぎ込むことになる

データセンターを利用する企業において、施設の老朽化やキャパシティ不足の問題が拡大しています。ガートナーが2016年に日本で実施した調査では、自社保有か外部利用かにかかわらず、回答者の36%がデータセンターの老朽化やキャパシティ不足への対応が最優先の課題であるとしています。さらに、6割近くが、10年後のデータセンター利用面積は拡大していると予想しています。しかしながら、企業の対応は全般的に緩慢です。既存のデータセンターの刷新や外部データセンターの新規利用は、施設の建設や移転を伴う大規模で複雑なプロジェクトとなり、多額の費用が発生します。このため、ユーザー企業はデータセンター刷新に関わる決断を先延ばしにする傾向にあり、具体的に動きだすのは切羽詰まった状況に陥ってからになります。特に、外部データセンターを利用している企業では、プロバイダーから移転を提案されて初めて老朽化を意識することも少なくありません。

こうした事態に対処するために、企業は自社データセンターの長期的な展開方針を確立しておかなければなりません。その上で、老朽化やキャパシティ不足に対応したデータセンターの刷新については早期に決断し、時間的な余裕を持って進める必要があります。

今後、データセンターの老朽化に伴う移転問題は深刻化していくと想定されます。ユーザー企業もプロバイダのデータセンターの施設状況を踏まえ、中長期的な展開方針を検討しておくことも重要となっていくでしょう。

2021年までに、企業の70%で、国内データセンターにおける現行ディザスタ・リカバリ (DR) 計画の実効性の低さが認識されるが、そのほとんどは放置されたままとなる

企業における事業継続性に対する取り組みは広く進められており、多くの企業が事業継続計画 (BCP) を策定しています。しかし、ITにおけるDR対応は、計画の難しさや投資コストが障壁となり、必ずしも十分なものになっていない、と認識している企業が多いのが実状です。近年では、多くの企業がデータセンターの無停止運用を必須事項としており、その重要性はデジタル・ビジネスによってさらに高まっています。デジタル・ビジネスの拡大に伴って、IT部門が対象とすべきシステムの範囲は広がり、従来は内部向けであったITシステムが顧客や外部に直接さらされる頻度も増える見込みです。事が起こってからDRに対処するという通常のやり方では、収益を失うか、さらに深刻な結果を招くことになるでしょう。ビジネス・オペレーションがITオペレーションに依存する傾向は強まっており、根本的な原因が何であれ、不測のサービス・ダウンタイムを大幅に短縮する必要が生じています。ガートナーの調査でも、回答企業の68%が、データセンターの1日24時間/週7日の運用は必須であるとしており、デジタル・ビジネスに向けてその重要性はますます高まるでしょう。

企業のIT部門は、従来のIT DR管理 (DRM) とITサービス可用性管理をITサービス継続性管理として一本化し、もしものときの保険ではなく、ITリソースの機能不全がいつでも発生し得ることを前提とする取り組みの一環として、DRサイトの構築や見直しを進めることが必要です。

最近、クラウドサービスの大規模故障を多く目にするようになっていますが、サービスの停止を前提としたDRサイトの構築や見直しが益々重要となっていくでしょう。

2021年までに、データセンター間ネットワークの多様化と共にもたらされるデジタル・ビジネスの拡大の機会を生かせる企業は、日本において全体の10%に満たない

外部データセンターやクラウド・サービスの利用が進むにつれ、アプリケーションとデータが、自社データセンターのみならずコロケーションやホスティング、クラウド・サービスなどさまざまな環境下に散在し始めています。これに伴い、これまでDRへの備えが中心であったデータセンター間接続が、企業のデータセンターと外部データセンター、あるいはクラウド・サービスのデータセンターの間を接続するネットワークへと、その目的も含めて多様化しています。さらに今後、デジタル・ビジネスとそれに関連するIoTやIT/オペレーショナル・テクノロジ (OT) の融合といった取り組みが進むことで、データの激増とその供給源および消費主体や保存先の多様化、リアルタイム分析に対応するニーズが高まり、エッジ・コンピューティング、マイクロデータセンターといったテクノロジ・ソリューションが企業データセンターやクラウド・データセンターのネットワークに加わってくると想定されます。

アプリケーションとデータが散在する環境がさらに多様化することで、企業はそれぞれ異なる環境間で生じるトランザクションのパフォーマンスやセキュリティ、ガバナンスを保証する相互接続の仕組みを構築する必要に迫られます。この相互接続は、デジタル・ビジネスの基盤である企業、パートナー、サービス・プロバイダーのエコシステムを生み出すことにも寄与するでしょう。

アプリケーションとデータの散在する環境がさらに多様化、データセンター間接続の多様化などにより、相互接続の仕組みを構築する仕組みや、デジタルビジネスを基盤としてエコシステムの創出が期待されるところです。

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