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震災直後とクラウド

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クラウドで広がる支援の輪

震災の影響により、被災地の自治体や日本赤十字などの公的機関のWebサイトに全国からアクセスが集中したため、つながりにくい状況になり、被災地の被害状況や避難所の情報収集などができないなどの支障が生じた。

こうした事態の解消に向け、ICT各社は即座に対応を進め、クラウドサービスを無償で提供するなど、支援の輪を広げ、被災地での情報発信や復興活動を陰で支えた。

クラウドとは、インターネット上のあちら側にあるコンピューターリソースを必要なときに必要な分だけサービスとして利用でき、システムを共通化しコストを削減でき高機能のサービスが利用できるなどのメリットがあり、今回の震災でその真価を発揮した。

震災後の3月12日、ツイッター上でクラウドサービスを提供する事業者の担当者から様々な情報が書き込まれた。

日本マイクロソフトは震災翌日の12日、同社が提供するクラウドサービス「Windows Azure Platform」を90日間無料で使える、東北地方太平洋沖地震対応用パスの提供を開始した。当時のマイクロソフトのクラウドサービスのWindows Azueのエバンジェリストの砂金氏などが拡散した。

当時のアマゾンデータサービスジャパンの玉川氏は、「地震の被害救援情報のWebサイト等、サービス接続のためにサーバーやITリソースが必要な方、ご連絡ください。また、大事なWebサイトなのに遅くて不要なものを見つけたら教えてください。」とツイート。

アマゾンウェブサービスは国内ユーザグループ「JAWS-UG」などが東日本震災後、情報提供サイトの無料作成サービスを開始した。

さくらインターネットの田中社長はTwitter上で、「さくらのVPS、さくらのレンタルサーバ2週間無料です。使い捨て大歓迎です」とコメント。

ニフティの担当者は「二フィティクラウドも、今回の震災対応のための情報サイトなどを運営するサポートします。インフラを貸し出すことしかできませんが、できる限り協力します。ご連絡ください。」とコメント。そのほか、多くのクラウド事業者の担当者からも支援の声が広がった。

岩手県庁は3月13日午後5時28分、ツイッターの公式アカウントで「アクセス集中により開きにくい状況が続いています」とツイート。ツイッター上では「岩手県のホームページがつながらない」と書き込みが相次いだ。災害関連の情報を記載したウェブサイトに全国からアクセスが殺到したためだ。

この状況に即座に反応し無償支援に乗り出したのが日本マイクロソフトやさくらインターネットだ。岩手県の担当者に連絡を取り、サイトにつながりやすくさせるために、自社のデータセンターに岩手県のWebサイトを複製し、ミラーサイトと呼ばれる同じ内容のサイトを立ち上げ、アクセスの集中を緩和させた。ミラーサイトの作成を開始してから約40分後には最初のミラーサイトが立ち上がった。

その後も、クラウドサービスを提供する事業者によって、日本赤十字社の募金に関するサイトの「ミラーサイト」を作るなど、自治体や復興支援で活動をするNPO、そして、震災に立ち向かう企業への支援を続けた。

東京電力は3月13日の午後9時ごろ、翌日の計画停電の計画を公表した。テレビなどの報道を見て、自分の住まいの計画停電の確認のため多数のユーザが東京電力のWebサイトへアクセスしたため閲覧できない状態が続いた。

ここでも日本マイクロソフトやさくらインターネットなどの多くの事業者が「ミラーサイト」を無償で立ち上げた。

東京電力でも、Webサイトへのアクセス急増への対応のため、ネット配信大手のアカマイ・テクノロジーズに支援を要請した。アカマイ・テクノロジーズは、世界72カ国に8万台以上のサーバを保有し、オンライン・サービスや映像配信などのコンテンツ配信を行うCDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者で、アカマイが各地に持つキャッシュ・サーバから情報を分散配信させ、14日の午前1時にはWebサイトが閲覧可能となった。

アカマイは3月17日には、東日本大震災に関連する緊急情報を提供する公的機関や団体、組織に対し、「東日本大地震 緊急配信無償提供プログラム」の提供を開始した。

IIJは3月14日、公共情報を提供される企業・自治体向けにクラウドサービス「IIJ GIOホスティングパッケージサービス」を提供し、3月16日には、地震被災地域の市町村など自治体Webサイトのミラーサイトを独自に設置したと発表した。IIJがミラーサイトを提供しているのは、3月16日17時時点で、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県の200以上の市町村にのぼった。IIJの発表によると、今回のミラーサイトのデータセンター設備は関西地方にあるため、東北、関東の電力不足の影響を受けずに、快適に閲覧できたという。

震災と自治体クラウド

震災直後、津波による被害で多くの公共施設が流失、破壊され、住民生活に関わる多くの基本データが失われた。本人性の確認や、被災者の安否や所在の確認が困難となり、医療や介護などでの診療や心身のケア、子どもの教育や各種生活支援の実施や行政手続を進める上で支障が生じた。

宮城県南三陸町の役場は、建物が全壊して庁舎全体が津波により水没。住民関連データを格納したサーバーが流され、電子化された戸籍の原本データが消失した。また、紙で保管していた土地台帳なども津波で流されている。その結果、生活を支える行政手続が困難となるという事態が生じている。宮城県の女川町や岩手県大槌町などの3市町でも住民基本台帳サーバーをはじめとしたハードが破損しデータが消失するなど、被災各地の自治体で、情報システムの破壊や停止などの大きな被害を受けた。

戸籍のデータは、地方法務局で保管していた戸籍副本をベースに復元できたものの、個人情報保護など制度上の障壁もあり復元するまでに相当の時間を要した。紙台帳のデジタル化やデータの安全な保管など、災害時の業務継続や行政機能を早期に回復するための行政情報システムの見直しの必要性が浮き彫りとなった。

東日本大震災復興構想会議は2011年6月25日、「第12回東日本大震災復興構想会議」において、復興ビジョン「復興への提言~悲惨のなかの希望~」を菅直人首相(当時)に提出。本提言では、ICT(情報通信技術)やクラウドの方向性についても示されている。

ICTについては、情報通信基盤の整備とともに、ICTを活用した的確な情報提供や、被災地自治体と地域住民が円滑にコミュニケーションを行える地域コミュニティの再生、そしして、ICT(情報通信技術)の利活用による地域産業の再生・創出に取り組む必要性が明記されている。

クラウドにおいては、行政をはじめ、医療、教育等の地域社会を支える分野のデータが震災により滅失したことを踏まえ、公共分野においては、情報の一層のデジタル化を進め、クラウドの導入を強力に推進すべきとした。

本提言を受け、東日本大震災復興対策本部は2011年7月29日、「東日本大震災からの復興の基本方針」を公表。次世代の発展につながるよう地方公共団体をはじめ幅広い分野へのクラウドサービスの導入推進などICT(情報通信技術)の利活用促進を行うことを明記している。

IT戦略本部の「電子行政に関するタスクフォース」では2011年7月4日、「電子行政に関するタスクフォースの提言」を公表し、事業継続の観点から、必要なデータのバックアップ、クラウド技術の活用等による拠点の移設などの対策を講じる必要があると提言した。

医療分野

震災によって、患者の紙のカルテ情報や院内に設置した電子カルテシステムが津波などにより流出・毀損し、患者情報を紛失してしまった医療機関も多い。少なくとも宮城・岩手県沿岸部で、少なくとも14病院のカルテ情報が流されたという。石巻市立病院では、津波により、電算室に保管していた約4万人分の電子カルテが水没。山形市の病院との提携で電子カルテの相互保存をしていたため復元することができたが、震災後は、各地でカルテの保管方法を見直す動きが進んだ。

震災の避難所での診療は困難を極めた。避難所にかかりつけの医師がいて、被災者の患者のカルテ情報があれば、適正な処置ができるが、震災ではカルテが津波で流されるなどで、避難所に患者ごとの過去の診療記録や投薬情報などがあることは少なかった。避難所では、65歳以上の高齢者が約4割を占めるといわれており患者自身が自分の過去の病歴を正確に把握しているケースは多くはなかった。避難所の診療所で被災地に入った医師が被災者を治療しようとしても、患者の病歴が把握できないため、問診から始まり、必要に応じて検査を実施し禁忌薬やアレルギーを考慮した上で処置が必要となる。患者一人ひとりの診療に時間がかかってしまい、医療サービスに支障をきたした。

被災地では、被災直後は緊急医療が中心であったが、高齢者を中心に糖尿病や高血圧などの慢性疾患への治療も必要となり、適正に処置をするためのカルテ情報が必要となる。診療情報をもとに十分な診療を実施していくためには、複数の機関同士が診療情報をクラウドで医療データを共有し、どこの病院でも患者の病歴を確認し、医療効率を高めて適正に診療を受けられる環境が必要となる。

この場合、クラウドなどを活用し遠隔地にデータを安全に保管することによって、震災などでカルテ情報を失うリスクも軽減できる。緊急搬送などの緊急時にも患者情報にアクセスし、迅速に処置ができるなどのメリットも見込まれている。

教育分野

教育分野においても震災による大きな被害を受けた。(社)全国教科書供給協会の調査によると、被災地で計50万4千冊の教科書が津波などで流された。また、指導要録などの児童・生徒の記録も津波で流され、新学期への対応や避難先の学校に児童・生徒の記録を引きつぐことが困難となるなどの問題が生じた。

震災により、授業に遅れている児童・生徒へのケアも必要となる。教科書が準備できない中、避難所にテレビチューナーや電子黒板やタブレット端末を運び、情報収集の手段とするなど、学校におけるICT環境は災害時においても有効活用されている。特に、震災により子どもたちの心身への負担は大きく、特に学業への遅れなど自分の将来への不安を感じる児童や生徒も多く、児童ごとの学習履歴の管理や、どこでも学習できる環境など、教育の情報化へのニーズも高まった。

※本ブログは、2011年に記載したものを再編集しています。

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