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「デジタル教科書」に関する今後の検討の視点について

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文部科学省は2015年7月21日、「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議(第3回)を開催し、デジタル教科書教材協議会(DiTT)などの関係団体からのヒアリングおよび、「デジタル教科書」に関する今後の検討の視点について議論を行っています。

デジタル教科書」に関する今後の検討の視点では、教科書の意義・役割、「デジタル教科書」の導入による効果・影響、教科書の質を担保するための検定、「デジタル教科書」の範囲、「デジタル教科書」の各法律上の位置付け、「デジタル教科書」の導入に当たって必要となる環境整備、などがあげられています。

いくつかの検討の視点の項目をとりあげてみたいと思います。

「デジタル教科書」の導入による効果・影響について

○ 紙との比較においてデジタルが有するメリット又はデメリットを踏まえて検討する必要がある。
○ 学力の向上等の客観的な効果が見込まれるか、また、学校段階、教科・科目、児童生徒の学力の状況等によってその効果に違いはあるかについて検討する必要がある。
○ 児童生徒の健康(視力、睡眠等)に悪影響を与える懸念はあるか、また、あるとした場合の対処方策について検討する必要がある。 ○ 障害を持った児童生徒の学習に特に有効であり、関連する取組をさらに進める必要がある。
○ 「デジタル教科書」の導入に当たっては、その使用によるメリットとデメリットを十分に考慮する必要がある(例:時間や場所を越えた教育機会の保障、個々の児童生徒へのきめ細かい対応、授業の一定の質の担保(授業の質に顕著な差が出る危険))。

デジタル教科書の導入にあたっては、メリットだけでなく、デメリットも十分に考慮した上で、導入を進めていく必要性を指摘しています。

「デジタル教科書」の範囲について

○ コンテンツ・ビューア・ハードウェアのどこまでを「デジタル教科書」と捉えるかについて検討する必要がある。コンテンツのみと捉えるか、ビューアまでとするか、それともハードウェアまで含めるか。
○ まずは、紙の教科書のデジタル化に対応することを考えるべきか、これに加えて、紙の教科書に含まれない機能やコンテンツを「デジタル教科書」として位置付けることも考えるべきかについて検討する必要がある。
○ 「デジタル教科書」にどのような機能を付加するか(例:拡大、音声再生、アニメーション、参考資料、書込、作図・作画、文具、保存、正答比較 等)について検討する必要がある。 【関連】
○ 「デジタル教科書」として位置付けられない機能やコンテンツについて、「デジタル教科書」と組み合わせて一体的に使用することの有益性及びその活用方策について検討する必要がある。

「デジタル教科書」の範囲もコンテンツからビューア、ハードウェアなど、機能の付加方法など、定義を整理して、検討していく必要性も示しています。

「デジタル教科書」の各法律上の位置付けについて

○ 各学校における使用義務を果たす「教科用図書」として位置付けるべきか。【学校教育法】
○ 義務教育段階においては、児童生徒に対して無償給与を行うべきか。【無償措置法】
○ 「デジタル教科書」の導入に伴う保護者の経済的負担をどう考えるべきか。
○ 「デジタル教科書」について、教科書発行者に対する発行指示、定価認可という考え方が馴染むものか。【発行法】
○ 「デジタル教科書」の位置付けを踏まえ、教科書に関する著作権法上の権利制限規定の在り方をどのように考えるべきか。【著作権法】

「デジタル教科書」はコンテンツ、ビューアからハードウェアまで含めた場合は高価な価格帯となり、これらの「デジタル教科書」を無償給与など経済的負担は重要な検討事項となる点も指摘しています。

「デジタル教科書」の導入に当たって必要となる環境整備について

○ 学校のネットワーク環境や電子黒板等の整備、児童生徒への情報端末の配布、デジタル教材の製作・開発、教員のICTリテラシーの向上、家庭におけるネットワーク環境の整備等のほか必要な環境整備について検討する必要がある。
○ これらの環境の整備は、「デジタル教科書」の導入の前提条件と考えるか、特にネットワーク環境の整備や情報端末の配布について、その整備状況により、「デジタル教科書」を導入できない地域・学校が存在し得ることについてどう考えるかについて検討する必要がある。
○ 既に先行して普及が進んでいる「指導者用デジタル教科書」のさらなる普及方策について検討する必要がある。
○ 「デジタル教科書」のコンテンツ・ビューア・ハードウェアの標準規格を国が定めることについて、必要性を含めて検討する必要がある。
○ 個々の意識の高い教員だけではなく、保護者、地域住民等を含めて学校全体として受け入れられるようにするための方策について検討する必要がある。

特に、ネットワークや、情報端末や教材、さらには教員のリテラシーや、家庭の環境など、さまざまな環境整備が必要となります。

「デジタル教科書」の導入と普及推進は、さまざまなメリットを得られる一方で、検討すべき課題も山積しています。本検討会で、どのように「デジタル教科書」を位置付けて、普及推進に結びつけていけるか、子どもを持つ立場としても注目してみたいと思います。

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