オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

オープンデータ・ビジネス(2)民間企業との連携による産業創出

»

オープンデータの普及においては、民間企業の活用によって、ビジネスにつなげていくことが鍵となります。今回は、民間企業との連携による取り組みやスタートアップ支援に焦点をあてて整理をしてみたいと思います。

オープンデータを活用した民間企業との連携

ニューヨーク大学のGovLabは2014年4月8日、オープンデータを利用する企業の包括的な研究として「Open Data 500 」を公表しました。

od500-banner
http://www.opendata500.com/

政府が公開したオープンデータをもとに、ビジネスモデルを構築するための500の手法を公開し、オープンデータを買う超した新たな産業の創出や、企業におけるオープンデータの利用促進を図っていく取り組みとしています。

本サイトの「Open Data Compass」では、どのような分野の企業がどのようなデータを活用しているが、ダッシュボード的に確認することができます。

image_thumb[7]

http://www.opendata500.com/

オープンデータを活用したスタートアップ支援

オープンデータを活用したスタートアップ支援の取り組みも世界各地で広がっています。その代表的な事例をご紹介しましょう。

イギリス政府は2011年11月、オープンデータを活用したビジネスを本格的に支援するオープンデータ研究所「Open Data Institute(ODI)」を設立し、ODI設立後の5年間にわたり政府より1000万ポンドを拠出することを発表しました。

ODIの設置を支援しているのは、イギリス政府の「技術戦略審議会(Technology Strategy Board)」だ。ODIは投資会社の「Omidyar Network」から75万ドルの保証を受け、オープンデータにおける市場創出など事業拡大に伴い、マッチングファンドや直接収入などでの事業の継続が想定されている。

image_thumb[10]

http://www.theodi.org/
Open Data Institute

2012年5月には「ODIのオープンデータ実行計画(Implementation Plan 2012 and beyond) 」を公表し、民間事業者の参入によるビジネスの創出とイノベーションを最重要に位置づけています。

ODIでは、オープンデータに関する技術やサービスの開発に取り組み新たなビジネスを創造するスタートアップ企業の支援や人材開発を目指しています。また、オープンデータを利用するスタートアップ企業のインキュベーターとしての機能を持ち、収益獲得が可能なビジネスモデル事例を開発し、オープンデータのためのインパクト分析手法とビジネスモデル開発によるイノベーションを促進することを狙いとしています。

ODIでは最初の1年間で4つのスタートアップ企業を支援し、4年間で12のスタートアップを育成することを目指しています。

ODIは2012年9月に非営利の非党派の有限責任保険会社として設立し、2012年12月より正式に始動しています。オープンデータ実行計画にもとづき、支援を実施している4つのスタートアップ企業を公開しています。この4つのスタートアップ企業は、ビッグデータの活用コンサルや環境配慮型のクラウドサービスを提供する 「Mastodon C」、公共交通機関のオープンデータ向けのアクセスAPIとデータセットを提供する「Placr」、不動産情報と不動産を探している人のマッチングを支援する「Locatable」、世界中にある企業データを収集して提供する「OpenCorporates」となっています。

新しいアイデアやイノベーション促進にあたって、2012年11月に、学識経験者や開発者などが参加するハッカソン「Hack4Health」を開催し、「国民保健サービス(NHS, National Health Service)」が提供する処方箋データを活用し、フィットネスアプリなどのサービスを創出する取り組みを行なっています。

ODIが支援した医療系サービスでは、国民保健サービス(NHS, National Health Service)の医者や技術者が参加する医療データを活用した患者の治療改善を目的としたコンソーシアム「Open Health Care UK」があります。

イギリス政府はこのほかにも2012年12月12日に、オープンデータ活用の推進のために新たに800万ポンド(約12億円)投資することを発表している。また、750万ポンドの「データ戦略委員会ブレークスルー・ファンド(Data Strategy Board Breakthrough Fund)」を創設し、政府や自治体がデータの公開にあたって技術的な課題など解決するための資金支援を行なっています。

さらに、オープンデータを活用したビジネス展開を検討している中小企業やスタートアップ向けにはODI主催による85万ポンドの「オープンデータ・イマージョン・プログラム(Open Data Immersion Programme)」を創設し、このプログラムに応募し審査に通れば、資金支援などのビジネス化に向けた支援を行っています。

インキュベーションでは、ODIがオープンデータを活用して事業を進めるスタートアップ企業のためのコワーキングスペースを提供し、スタートアップの経営者や開発者などがお互いに情報交換を活発に行い、事業を創出するための環境を整備しています。ODIでは、これらの活動を通じて、初年度に25名のオープンデータ技術者の育成を計画しています。

ODIは2013年6月13日、台湾のノートPCなどの受託生産大手企業のQuanta Computer(広達電脳)と業務提携を結び、国内にとどまらず、オープンデータを通じて台湾など海外に進出することで投資を呼び起こし、オープンデータによるグローバル規模での新たな産業のイノベーションを生み出し、オープンデータにかかわるビジネスの主導権を目指しています。

ODIは公開されるオープンデータのデータの品質にも力をいれはじめている。2013年6月17日、オープンデータ認証サイトβ版「Open Data Certificate」を開設した。オープンデータの提供者(発表者)がオンライン上の質問に回答することで、「Raw」「Pilot」「Standard」「Expert」の4つのレベルの認証が発行される。これにより、公開するデータのレベルを公開する事業者、利用者、企業、政策立案者などが、データのレベルに応じてデータを評価し、利用できるようになっています。

https://certificates.theodi.org/
Open Data Certificate

ODIとOKFN はオープンデータに関するコンテストやイベントなどに積極的な支援を行い、2013年4月22日~24日にW3C、OKFN、ODI、主催によるオープンデータに関するグローバルな会議「Open Data on the Web」を開催している。オープンデータに関する議論・情報交換で、グーグル、マイクロソフト、アドビがスポンサーとなっています。

http://www.w3.org/2013/04/odw/
Open Data on the Web

「Open Data on the Web」では、国連が世界開発銀行と共同で開発を計画しているデータ解析プロジェクト紹介や英国国立公文図書館の事例紹介や富士通研究所のLinked Open Data (LOD)を活用したヘルスデータ活用事例など、政府や国際機関、民間企業などのオープンデータの活用事例や開発技術などの情報共有を行ってます。

2013年10月には、英国、カナダなど世界に13拠点の設置を発表し、その後大阪も拠点

image_thumb[13]
http://theodi.org/nodes/osaka

ODIの事業モデルは、ODIがが主体となり、政府や民間ファンドからの資金援助や、起業人材に対する支援や、オープンデータ化の支援などを行い、それらを具体化するために、ハッカソンやコンペなどを開催しています。

image_thumb[16]
出所:

出所:第2回 IT融合フォーラム 公共データワーキンググループ 20143.6

イギリスでは、OKFNやODIによるオープンデータに関するツール開発やプロジェクト運営、事業支援といった取り組みをグローバルに展開しており、世界におけるオープンデータ推進の仕組みづくりを大きく牽引しているといえるでしょう。

オープンデータ・ビジネス(1)データの価値 2014.7.8

 

Comment(0)