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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

『システム・インテグレーション崩壊』から読み解く、情報システム部門の役割と事業者の新たな存在意義

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斎藤昌義さんの著書『システム・インテグレーション崩壊 ~これからSIerはどう生き残ればいいか? 』を拝読しました。

本書は、国内需要は先行き不透明で、クラウドコンピューティングなどの新たな技術変革によりSI事業者のこれまでの工数を前提としたビジネスモデルは過度期を迎え、SIのビジネスからサービスモデルのビジネスへと変革させていくことの重要性を、背景や事例などをとりあげながら指摘しています。

本書でポイントになるのは、7章の「新たな存在意義へと役割へシフトする」です。

ユーザの情報システム部門は、クラウドサービスの普及に伴い、新たな役割を求められています。本書では、情報システム部門は、ユーザの経営者にIT活用の可能性や戦略的価値を理解させ、その実践をマネジメントできる人材を育成するといったように、経営者の良き相談相手となる人材を育てるといったCIOの役割を果たす必要性があげられています。

また、情報システム部門では従来のウォーターフォール型の開発プロセスではなく、クラウドなどの活用によりアジャイル開発型で短納期ながらも高品質で利益を両立させる開発プロセスを行い、働き方そのものを変えていく仕組みも示しています。

SI事業者は、サービスビジネスへの転換が求めらており、従来の担当するお客さまから現状や課題を理解し、提案から受注に結びつけるといった営業スタイルをあわせて変えていく必要性があげられています。さらに、これまでのソリューション営業では差別化できなくなり、お客様の変革を支援するイノベーション営業が重要であるとしています。

また、営業の個人の力だけではビジネスは維持できず、サービスビジネスでは、事業領域の拡大や市場の創造を生み出すマーケティングによる中期的なアプローチが重要となってきます。本書で指摘されているマーケティングでは利用ユーザに加えて、パートナーとの連携を促すアプローチも重要となっていくでしょう。

2020年の東京オリンピック開催、金融機関のシステム更改や、マイナンバーに関わるシステム構築など、SIビジネスの需要は、ここ5,6年は引き続き続く可能性があります。しかしながら、中長期的な視点でみると、サービスモデルへのシフトは避けて通ることのできない大きなテーマであり、本書はこれまでのIT業界のあり方とこれからの方向性について、大きな示唆を与えてくれています。

 

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