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2013年のエンタープライズクラウドとこれから

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2013年は、クラウドビジネスにおいて、特にエンタープライズクラウドの導入が顕著だった年だと言えるでしょう。

調査会社のMM総研が2013年8月に発表した法人ユーザ1500社を対象に調査した「国内クラウドサービス需要動向」によると、ICT投資総額が伸び悩む中、クラウドサービスの需要は急拡大を続ける国内クラウド市場は2015年度に1兆円、2017年度に2兆円に達すると予測しています(リリース記事)。

特に、システム構築の際にクラウドを優先的に検討する「クラウドファースト」企業が7割にのぼっており、クラウドの選択基準は「コスト」よりも「セキュリティ」重視へと転換している傾向にあります。

2013年は、クラウド市場をリードする「Amazon Web Service」が、2012年のエンタープライズレディから本格的にエンタープライズ市場に参入した年になったと言えるでしょう。代表的なERPパッケージである「SAP ERP」を「Amazon Web Services」で稼働させたケンコーコムは特徴的な事例と言えます。

AWSのエンタープライズの事例では、東急ハンズのPOSシステムや、ミサワホームの基幹系システムや人事情報システム・文書管理システムや会計システムなど、企業の基幹系に関わるシステムもAWS上で稼働するという事例も増えてきています。

エンタープライズクラウドの導入は国内にとどまらず、グローバル拠点展開までを想定した基幹システムのグローバルクラウド環境構築の取り組みも始まっています。

NTTコミュニケーションズは2013年10月9日、日本に所有している基幹システムを、2014年1月からNTT Comのクラウドサービス上に移行し、2018年までに国内の全システムをクラウド化し、世界各地域で運用するシステムについても並行してクラウド化を進めると発表しています(リリース記事)。

ヤマハ発動機グループにおいて世界各国から利用される基幹システムのサーバー台数は700台規模で構成され、生産・調達管理システム、製品開発システムや人事・財務等コーポレート系などのシステム群の多くは、オンプレミス環境で自社運用となっており、世界30の国と140社のグループ会社を含めた基幹システムのクラウド環境構築への移行計画を進めています。

現在、エンタープライズのクラウドでは、製造業や流通業の事例が多くみられますが、今後は、FISC(日本の金融機関がシステム構築を行なう際の指針)など、セキュリティが懸念される金融業界への採用も進んでいくと考えられます。

また、エンタープライズクラウドの進展に伴い、SIビジネスを自社のコアとしていた事業者が大きな転換が必要となっていくでしょう。クラウドを使った付加価値のあるインテグレーションビジネス、つまりCI(クラウドインテグレーション)ビジネスで収益を得られるための事業モデルの再構築が求められているのかもしれません。

 

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