データサイエンティスト(2)深刻化するデータサイエンティストの人材不足
ビッグデータの普及に伴い、データサイエンティストの人材不足が様々な場面で指摘されています。
IT業界の取り巻く雇用環境においては、大規模SI案件が縮小傾向にあり、SI案件に対応する人材の余剰感が生まれています。一方で、クラウドコンピューティング案件およびビッグデータ案件の増加に伴い、クラウドビジネスに対応できる開発運用、データ分析に対応できるデータサイエンティストの深刻な人材不足が指摘されています。
主要ベンダなどで共通課題認識となるデータサイエンティストの育成
2013年8月21日、ITPro主催による「ITpro EXPO ステアリング・コミッティ」では、NTTデータ、日本ヒューレット・パッカード、日立製作所、富士通、野村総合研究所、日本IBM、NTTコミュニケーションズ、アクセンチュア、NEC、日本マイクロソフト、EMCジャパンのユーザー企業6社のCIOと、主要ベンダー11社の経営幹部が参加し、第3回「ITpro EXPO ステアリング・コミッティ」の宣言文を以下のとおり、公表しています。
ICTの飛躍的な進化により従来は可能だったことが可能になった。その代表例がビッグデータである。ビッグデータの活用を推進することで、企業の成長に貢献するだけでなく、社会全体にイノベーションを起こし、豊かな未来を創造しよう。
データの戦略的活用を推進するために
ユーザとベンダー、ユーザ同士、ベンダー同士が協力し合って、異なる分野・業界を横断的につなげていくことで、データをインテリジェンスに変え、新たな価値を生み出していく。
ICTの知識と統計の素養を備えデータを分析できるとともに、経営視点を持ち現場の業務にも精通するデータサイエンティストの育成を急がねばならない
パーソナルデータについても、説明責任を果たしプライバシーを保護することを前提に、個人や社会にとって利便性が高まることを理解してもらい、積極的に活用すべきである
企業内だけでなく農業や医療、交通などの分野、さらには道路や都市、エネルギーといった社会インフラにも適用範囲を拡げていく
宣言の中には、ICTの知識と統計データなどの分析に加えて、経営視点を持つデータサイエンティストの早期育成が指摘されています。
そのほかにもデータサイエンティストの不足する情報や記事などについて、紹介しましょう。
大量データを扱える技術者不足
TechTargetジャパンが公表した「大規模データ活用動向についての調査レポート」によると、データ活用における課題は、「大量データを扱える技術者がいない」が最多で32%「リアルタイムにデータを扱えない」(25%)、「マスターデータマネジメントができていない」(23%)などが続いています。つまり、データ活用においての課題は、技術者が確保できていない点にあります。
データセットのアナリティクスを活用できる人材が世界で150万人不足
世界におけるデータサイエンティストの人材不足も深刻です。2011年5月に米マッキンゼーが公表した「McKinsey Global Institute「Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity」によると、米国では2018年までに、高度なアナリティクス・スキルを持つ人材が14万~19万人不足で、大規模なデータセットのアナリティクスを活用し意思決定のできるマネージャーやアナリストが150万人不足すると算出しています。
McKinsey Global Institute「Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity
ビッグデータ関連の意思決定や人材不足感や予算やリソースの不足が顕著に
EMCが、2011年12月に公表した「New Global Study EMC」によると、ビッグデータとデータ分析の連携により生み出されるビジネス・チャンスを利益に結び付けるために企業で必要とされるスキルが世界的に不足していると指摘しており、ビッグデータ関連の意思決定や人材不足感や予算やリソースの不足が顕著となっています。
急迫する人材不足:
データ・サイエンス・プロフェッショナルの65%は、データ・サイエンスに携わる人材の需要が今後5年間で供給を上回ると考えている。
統計学や機会学習の経験を持ちデータ分析ができる大学卒業生が減少する日本
一方、統計学や機械学習に関する高等訓練の経験を有し、データ分析に係る才能を有する大学卒業生数は、米国の2万4,730人、中国の1万7,410人、インドの1万3,270人、日本は3,400人となっており、その他先進国と比べても低い数値となっています。
大学や大学院で統計学、もしくはそれに類する専門分野を学ぶ人材が欧米に比べて圧倒的に少ないことが原因
McKinsey Global Institute「Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity」2011.5
日本の大学では、統計学部や学科がほとんど存在せず、各学部の履修科目の一つに過ぎず、統計学や機会学習やそれに類する専門分野を学ぶ人材が欧米と欧米諸国などを比べると、圧倒的に少ない状況となっています。
世界におけるデータ分析の才能を有する人材の推移
中国は年率平均10.4%の成長率でデータ分析の才能を有する人材が増加するなど諸外国が増加傾向にあるのに比べ、日本は年々減少(平均-5.3%)しています。
McKinsey Global Institute「Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity」2011.5
データ分析スキルを持つ専門家の需要は今後8年間で24%増加
米労働統計局によると、ビッグデータの増大により、今後8年間でデータ分析スキルを持つ専門家の需要は24%増加すると予測しています。
The U.S. Bureau of Labor predicts a 24 percent increase in demand for professionals with data analytics skills during the next eight years
http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/41733.wss
日本では25万人が不足
「Gartner Symposium Report:201x年に情報システム部門はどうするべきか?」によると、企業の情報システム部門が受け持つIT予算は次第に減少し、2015年にはIT支出企業のIT支出の35%がIT部門の予算外となり、2017年にはマーケティング部門が行使できるIT予算が情報システム部門を上回ると予測しています。
さらに、日本では、ビッグデータ関連の雇用が36万5000人分増える見込みに対して、実際に雇用条件を満たせる人材は11万人程度となり、25万5000人が不足することになります。
Gartner Symposium Report:201x年に情報システム部門はどうするべきか?」
データサイエンティストは日本は1,000人未満、米国は1万人以上
日経ITproなどの記事によると、
データサイエンティストに相当する人材は、日本では1000人にも満たないという。1万人以上いるとされる米国に大きく後れを取っている。米国では、FacebookやGoogleなどのIT企業をはじめとして、金融業や流通業といった多くの企業がデータサイエンティストの部隊を持っており、日々競争力の強化を図っている。
となっています。
政府も育成支援するデータサイエンティスト
政府もデータサイエンティストの育成について政策的な支援を検討しています。2012年7月に公表した「日本の再生戦略(科学技術イノベーション・情報通信戦略 )クラウド等を通じたデータ利活用による競争力確保のための環境整備」において、2013年度までに実施すべき事項として、データサイエンティストの育成をあげています。関連市場創出に向けてのデータサイエンティストの育成も重要施策としてあげています。
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2011/subcommittee/120803/item5_2.pdf
データサイエンティストのための能力を備えている人は稀な存在
データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」では、データサイエンティストに庵する人材不足について以下のように解説しています。
数学マーケターたちには、高度な数学知識を駆使sる能力だけでなく、自らの発見をマーケティングの文脈に載せ、専門知識のない人々に対しても説明できる能力が必要なのだ。この2つの能力を兼ね備えている人物は、非常に稀な存在