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6重化を実現する拠点分散型クラウドストレージ本格サービス開始に向けて、キーパーソンに話を聞く

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IDCフロンティアでは、2013年4月に拠点分散型クラウドストレージの本格サービス提供を予定しています。2013年1月29日より先行提供を無償で開始し、すでに数十社のお客様が利用されているといいます。

今回は、IDCフロンティアのクラウドストレージの開発プロジェクトを担当している大屋氏、齋藤氏にお話をお伺いし、先行提供を開始してから、今後の本格サービス展開に向けての取り組み状況を、お伺いした情報をもとにブログでまとめてみました。

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サービス開発部 部長 大屋誠 (写真左)
サービス開発部 齋藤伸吾 (写真右)

「トライアングル・メガデータセンター構想」による高い堅牢性と可用性

IDCフロンティアは、これまで「トライアングル・メガデータセンター構想」を推進しており、西日本の2008年開設の北九州市、そして東日本は2012年開設の福島県白河市、そして首都圏と、3拠点による相互接続されたデータセンター群を構成しています。

IDCフロンティアでは、2013年1月29日に、新サービスとなる拠点分散型のクラウドストレージを1月29日より先行開始することを発表しています。(ニュースリリース記事

新サービスの特徴は、2012年7月に戦略的資本提携を行った米国のBasho Technologiesが持つ分散型データベース技術「Riak CS」を採用し、19ナインの99.99999999999999999%の堅牢性と6ナインの99.9999%の可用性を実現しています。

この高い堅牢性と可用性を実現できている背景には、「トライアングル・メガデータセンター構想」による複数拠点での分散化と、保存されたデータを自動的に異なるディスクに3重コピーし、さらに遠隔2拠点のデータセンター間で同期(レプリケーション)することにより高い信頼性を保持しています。

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これらの実現には、Riakのサービスと技術力が大きく寄与しているといいます。Bashoが提供するRiakの製品群には、オープンソースのNoSQLの分散型データベースの「Riak」と商用の分散型データベースの「Riak EnterpriseDS(EDS)」、そして、分散型クラウド・ストレージの「Riak CS」で構成されています。

クラウドストレージを提供するにあたって、なぜRiakを選んだか?

ビッグデータに代表されるように、大量のデータがアーカイブされるようになり、サービス事業者としてのデータの扱いが重要になっており、とにかく拡張性が高く、保存されたデータにいかに付加価値をつけて安全にご利用いただくかということを重視して、選定を行ったといいます。

Riakの場合、極力ボトルネックができないつくりになっており、かつ並列化に向いているので、DynamoDBに代表されるアーキテクチャーに関してもマスターレスで分散が可能となっています。

お客様が増えた場合においても、コンシステントハッシュでデータを格納&データを冗長化して保持し、負荷をバランシングするのに特化しているため、サービス事業者としては設計しやすいとのことです。

また、各ノードがすべてAPIで管理しており、ダウンしても他のノードがサービス継続でき、クラスタ間のレプリケーションが可能といったことで、サービスの堅牢性や信頼性を高めるといったメリットもあります。

そして、Riak CSは 分散型のデータストアのRiak EDS をベースにしており、データの解析、データストアとして優れている点も評価しています。

さらに、コンポーネント数や設定項目が少なく、サーバの追加が容易といったように運用しやすい環境となっています。また、S3APIと互換性が高い点も一つの選定理由となっているようです。

これらの広域分散を実現するRiakの製品群が、IDCフロンティアが推進する「トライアングル・メガデータセンター」の思想にあっていたことも大きかったといいます。

すでに数十社の顧客がクラウドストレージを採用

2013年1月29日に先行リリースを開始してから、無償提供の利用ですが、すでに数十社の顧客が利用しているといいます。主に、C向けのサービスのストレージ基盤から、サービスのバックアップ、東西のデータのレプリケーションなどで利用されているとのことです。たとえば、サービスのバックアップでは、ゲームのサービスで発生した大量のトランザクションデータのログ保存・バックアップを行なっています。

APIやSDK、s3fsなどを使って、ディスクをマウントした形での使用や、東西のデータのリアルタイムのリプレケーションしている事例もあるようです。遠隔地拠点間での自動でのレプリケーションは国内初の取り組みとのことです。

社内においても、ファイルサーバとしての試験利用を始め、その評価をしており、これまでのサーバ関連も含め、社内の情報システムの環境をクラウドへとシフトしつつあるとのことです。

アスクル社の「LOHACO(ロハコ)」でクラウドストレージを採用

アスクル社が提供する飲料・日用品のカタログ販売のサイト「LOHACO」(ロハコ)では、クラウドストレージを採用しています。「LOHACO」では、スマホサイト向けを中心に約20万弱の写真データをアーカイブし、カタログ写真のスムーズな画像表示を実現しています。

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http://lohaco.jp/

(IDCフロンティアの事例ページ)
http://www.idcf.jp/cloud/case/#ec01

Developers Summitでもアスクルの事例について、細かなデータも公表されています。
http://www.slideshare.net/devsumi/devsumi201314d6

データ

○登録件数 
・約20万件弱(データ移行は3時間程度)

○ファイルの種類/サイズ
・画像データ
・5k~500k

○リスクスト数
・450req/sec

○CDNのキャッシュヒット率
・97%

○レスポンス
・10ms~80ms(CDNキャッシュされている状態だと10ms程度)

構築からリリースまでの期間

・構成検討、各種検討(NW、サーバ調達)
・1週間
・構築&テスト・リリース
・構築:1日
・テスト&リリース:1週間

となっています。

クラウドストレージの特徴は?

4月に提供されるサービスでは、既存のトライアルで無償で提供しているサービスに加え、コントロールパネルや課金システムが実装され、SLAが提供されるようになります。

クラウドストレージの基本サービス仕様は以下のとおりです。

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REST APIを搭載し、データの格納拠点は東西の複数拠点により、データは同一拠点毎に3重のコピーを持ち、他の拠点に自動的にレプリケーションされます。

データは2拠点6冗長化保存されることで、99.99999999999999999%(19ナイン) の堅牢性と99.9999%(6ナイン)の可用性を実現しています。

さらに、お客様のオンプレミスのシステムとクラウドストレージ間をダイレクトに接続するサービスを提供する予定となっており、データのバックアップやファイルサーバの利用に適しているといえるでしょう。

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また、S3との互換性の高いAPIを提供しており、S3互換のソリューションやサービスとの連携も可能となるため、すでにS3互換の事業者とも交渉を進めているといいます。

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今後の展開・まとめ

IDCフロンティアでは、堅牢性や可用性の高いクラウドストレージサービスを、国内最安値のGBあたり10円を切る価格設定を目指し、2013年4月にサービスを提供する予定とのことです。

また、S3 APIとの互換性が高く、S3互換のソリューションやサービスを提供する事業者とも連携し、ストレージ周辺のエコシステムにも力を入れていくと考えられます。

ビッグデータの潮流や、ソーシャルゲームや写真や動画の保管、そして、企業のファイルサーバやバックアップの利用など、クラウドストレージは幅広い分野での利用が想定される中で、クラウドストレージの位置づけは益々高まっていくことでしょう。


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