3.11 「ITで日本を元気に!」主催セミナに150名が集結『震災から2年 東北は変わったか?変われるのか?』
2013年3月11日、「ITで日本を元気に!」主催の「 「震災から2年 東北は変わったか?変われるのか?」~東北の発展のため我々は何をすべきか/何ができるか考えよう~」」というテーマでのイベントが開催され、私自身も参加してきました。
会場は満席となっており、震災から2年が経ち、ITによる震災復興支援の取り組みへの注目も高まっていることが伺えます。
「ITで日本を元気に!」代表の佐々木賢一氏の挨拶では、参加者全員が黙祷をし、3月10日の東北沿岸部の視察の様子などこれまでの活動やこれからどう東北を復興させていくかといった視点でお話されました。
避難所や仮説住宅や被災企業へのIT化支援を行う「ITで日本を元気に!」の取り組み
次に、運営委員の志子田有言氏より「ITで日本を元気に!」が震災からこれまでの取り組み内容について紹介しています。
「ITで日本を元気に!」は、仙台や東京を中心としたIT業界の経営者やCSR、マーケティング技術部門の責任者が中心となり、ITで震災復興取り組む団体です。2011年の初期のころは、物資供給が中心でしたが、2011年7月以降は、被災地のニーズもあり、避難所や仮説住宅や被災企業へのパソコンやプリンター設置などのIT化支援、ツイッターやフェイスブックを活用した情報発信支援、自治体のIT環境復旧支援などの活動を行なっています。これまで、合計500台のPCを提供しています。
企業のCSR活動支援の活動も行なっており、楽天株式会社と連携し、共同で被災地支援やワークショップなどの活動も行っています。
長期的支援での復興では、NTTや地元の通信会社、無線ルータを提供するワイヤ・アンド・ワイヤレス社、地元ボランディアなどと共同で、被災地の仮設住宅の光インフラをはじめとした総合的なIT支援を行なっています。
これまでの取り組みでは、宮古市、登米市、南三陸街、女川街、石巻市、東松山市など19の拠点(含む予定)を行なっています。
今後は、中長期的視点に立った「地元の復興を支援する基盤づくり」というような、固定的・継続的な取り組みを実施していく目標を掲げています。たとえば、サテライトラボ、IT研修センター、IT教育支援、ITイベントの誘致といったようにソフトウェアの視点から支援の検討を進めています。
最後に動画が紹介され、被災地支援の実際の現場の取り組みや、被災現場の方のインタビューなどが紹介されました。
動画には佐々木代表のインタビューも掲載されており、「私達が被災地と世界を情報で結ぶハブを作る。いろんな分野で飛び抜けた街になるチャンス、先進的な田舎になるチャンス、面白い夢のある仕事ができる環境を作って行きたい」といったコメントで、締めくくられています。
次の大災害に対処する NICTの耐災害ICT研究
NICTからは、国の災害に関する情報の取り組みが紹介されています。NICTでは東北大学にNICTの出先組織を設け産官学連携による実証を進めています。今回、特に中心に紹介されたのが、災害時の情報を効率的に把握・整理し、適切に情報を伝達する「対災害情報分析システム」です。
被災地のベンチャー・中小企業を支援する MAKOTOの活動
MAKOTOは、志を持っている起業家を応援するNPO法人で、東北最大級のコワーキングスペースを提供やCHALLNGE STARによる起業家とファンドのマッチングなどの起業家の支援活動を行なっています。
事例では、「復興美容院」や「夜明け市場」などの取り組みが紹介されています。東北地域では、震災後に全国平均に比べて起業する比率が1.5倍となっており、起業家意識の高い地域となっているといいます。
MAKOTOでは、東北を企業&再チャレンジできる地域として、起業家の流入を促進や、倒産経験者の再チャレンジを容易にし、さらに人を誘致することで、国内外の支援ネットワークを作り、被災地を起業家にとってパラダイスのような働きやすい環境にし、日本全体を変えていくという志を持って活動しています。
9社による熱いライトニングトーク
次に、スタートアップ起業を中心に、9社の取り組みが約5分のライトニングトークで紹介されています。
・東北人の交流を促すシステム「マイクローク」を展開する株式会社エム・エス・アイ
・介護業務支援サービスなどに力を入れる株式会社グッドツリー
・20名弱の雇用を生み出したKLab株式会社 仙台事業所
・世界中の恋愛の悩みを解決できるサービスを提供するサトリバ
・東北・宮城県からアプリ革命を目指すサンキュロット
・Androidアプリ開発者の育成・教育訓練を行い、アセアンへの人材支援を目指す株式会社Sola.com
・仙台・東北のスマートフォンアプリ開発を通じて東北版リバース・イノベーションを目指すFandroid EAST JAPAN
・ウェブガーデン仙台を設置するなど、ウェブ市場で「超会社」で継続的な地域貢献を目指す株式会社メンバーズ 仙台クリエイティブ室
・グローバルなオポチュニティを提供する楽天株式会社 新サービス部
産業創造やビジネスの持続性が議論の中心となったパネルディスカッション
最後にパネルディスカッションが行われました。震災復興に関して政府の支援やボランティアという視点ではなく、新しい産業の創造やビジネスの持続性や雇用などが議論の中心となりました。
<パネリスト>
有限責任監査法人トーマツ 北海道・東北担当パートナー 谷藤雅俊氏
日本アイビーエム株式会社 東北復興支援事業部 担当部長 後藤浩幸氏
株式会社ピンポンプロダクションズ 創業者 藤井靖史氏
一般社団法人MAKOTO 代表理事 竹井智宏
<コーディネーター>
ITで日本を元気に! 佐々木賢一
トーマツからは、復興支援室を設置するなど、組織的に様々な復興支援に関する取り組みに参加している状況について紹介しています。
IBMも東北復興フォーラムを開催するなど、東北各地でスマートシティをはじめとした取り組みを行なっています。
MAKOTOでは、被災地のベンチャー+中小企業を支援し、「志」の求心力をベースとした事業創造を行う起業家支援団体。行政とも深く連携し、ファンドの組成も行っています。
ピンポンプロダクションズ 創業者でシリアルアントレプレナー(連続起業家)の藤井氏からは、オープンデータの話が中心となり、オープンデータを通じて新たなビジネスを創造することの可能性について紹介しています。
パネルディスカッションとして、テーマの中心となったのはビジネスとしての可能性です。
藤井氏は、課題先進地域である東北が示すデータは、日本国内や世界の何処かの未来を示しており、今の東北には世界の未来があり、チャンスがきている点や、このチャレンジに成功すれば、オープンデータの世界のスタンダードになる可能性がある点を指摘しています。
データを「解析・共有」することで街を「市民が理解・関与できる」サイズにし、行政のデータを市民が自ら解析することで改善させていくための活動の必要性を述べ、東北でオープンデータが最も進んでいる地域にし新しい産業を創造したいという思いを伝えています。
IBMでは、復興支援部門を設置したもののビジネスとして成立しにくい問題点をあげています。人を作る、産業を作る、現地化する、国の予算がなくなったときに、企業も事業化して継続する仕組みを考えないといけないと、予算がなくなったとたんに、事業が成り立たなく問題点を指摘しています。課題先進地域の東北が、真の復興を果たし将来の日本の社会的課題の解決モデルとプロセスを示すことの重要性を示しています。
東北の地では、様々な復興支援活動で、多くの人の交流が生まれ、新しく日本を変えるという大きなビジョンが、大義名分になり、大きく変わったところで、自分がひっぱっていこうという人が増えてきており、ビジネスのチャンスの可能性も広がりを見せています。
また、首都圏と比べるとプレイヤーが少ない分、支援機会も多く起業しやすい環境にあるといいます。
パネルディスカッションの最後の各パネリストからのコメントをまとめてみたいと思います。
トーマツ 谷藤氏
東北で生まれて、東北で育ってきた。東北の地で新しく起こす、大きなチャンス、行動する。ノウハウの現地化、産業化、人を育てる。東北で新しいモノが生まれる土地にしていきたい。
IBM 後藤氏
コンテンツが必要。うまく組み合わせながら知恵を出し、イノベーションを起こす。課題先進国というビジネスチャンスがある。企業はもうからなければ続かない。もうかる仕組みをみんなで考えたい。
ピンポンプロダクションズ 創業者 藤井氏
PDCAのActionの段階にいる。自分たちに何が足りないのか。お金をまだ生み出せていないのが、課題。産業創出をしたい。いろんなビジネスモデルを並行して考えている。いろんな方を巻き込んで人脈を使う。お金にしていくことが大切。
MAKOTO 竹井氏
自信をもっていただきたい。各社技術に自信がないということをよく聞くが、そんなことはなく、ITが使われていない分野に対して、最先端の技術が必要なわけではない。イノベーションは何も技術ではない。東北の地は最先端の街になってしまった。チャンスがあふれている土地になっている。行動につなげていける。起業家のパラダイスにしたい。
ITで日本を元気に!佐々木氏
震災から2年が経ち、東北が変わらなければいけない責任がある。まさに、皆さんの集合体である。どう意識して、何を考え、どうアクションするのか。これからの東北、世界に対して、いい結果を生む種になっていくのではないかと思っています。
新たなビジネスのつながりが生まれた懇親会
懇親会では100名前後が集まり、東北や首都圏のIT企業の関係者やメディア関係者などが集まり、活発な情報交流が行われました。この場から新しいビジネスが生まれ、東北に新しい流れができることが期待されるところです。
最後に
震災から2年が経ち、私たち一人ひとりができることは些細なことかもしれません。私自身ができることは、微力ながら震災復興をITやクラウドで支援する取り組みや、それらの活動を情報発信を通じて、世の中に伝えていくことだと考えています。これからもこういった活動に参加し、ブログなどを通じて、情報を発信していければと考えています。