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ソーシャルゲームの市場性とビジネスモデル

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テレビのコマーシャルでは、DeNAやGREEなど著名な芸能人を起用したソーシャルゲームのコマーシャルが流れる頻度が増えています。

DeNA は、TBSからプロ野球球団を買収したことで、ソーシャルゲーム業界への認知度や信頼感も高まっています。これまでのプロ野球球団のオーナーの歴史を見ると、その時代において最も活力のある企業が多く、ソーシャルゲーム業界の球団買収は、その勢いを示す象徴的な出来事といえるでしょう。

調査会社のシード・プランニングの 2010年12月の調査によると、2010年のソーシャルゲーム市場は対前年プラス305%で成長し、市場規模は1,219億円規模に達しています。 2011年のソーシャルゲーム市場は、対前年プラス49.3%の成長、そして、2014年以降は2,500億円規模に達すると見込まれています。

一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は2012年3月9日、「ソーシャルゲームの正体を探る(Ⅴ)」というレポートを発行し、2012年の市場は4643億円、2013年の市場を5766億円と予測しています。

ソーシャルゲーム業界は、コンプリートガチャ(コンプガチャ)の廃止の影響により、市場は若干鈍化する可能性が予想されますが、それでもなお、今後の成長分野として期待されています。

ソーシャルゲームのビジネスモデル

ソー シャルゲームとは、ソーシャルプラットフォーム上に時間軸にとらわれないユーザコミュニケーション機能を持つゲームで、普及の背景には、SNSやネットにつながる携帯電話やスマートフォンが普及し、従来のゲームの利用者層よりも、手軽に利用するライトユーザまで対象を拡大できている点にあります。

ソーシャルゲームの大きな特徴は、「アイテム課金」のビジネスモデルです。MobageやGREEでは、ゲームの中で仮想課金を購入し、ゲームを利用する際に、ゲームで利用するアイテムを購入するシステムとなっています。アイテムがあることで、ゲームが有利になり次のステージに進めたり、キャラクターをおしゃれに飾ることもできるなど、有料のアイテムを購入したくなるなどの仕組みが取り入れられています。

ソーシャルゲームは無料から利用でき、ユーザが継続的に楽しみながら、対抗意識をもたせるなどの消費者マインドを的確につかみ、ある一定のステージに行くことで課金されるといったマネタイズのモデルを確立しています。

これまでゲーム分野では、任天堂のWiiやソニーのPlayStationなどの日本のコンソール型のゲーム専用機がプラットフォームとして世界市場を席巻してきました。ソーシャルゲームの台頭により、ゲーム専用機にパッケージのゲームソフトを売る「売り切り」モデルの市場が侵食される状況となっています。

ソーシャルゲームの「アイテム課金」モデルは、まずは、無料でたくさんの利用ユーザを集め、サービスへの評価とロイヤリティを高めることで、無料ユーザが広告塔となり、さらに利用ユーザを増やしていくことが可能となります。

その中で、「アイテム課金」をする利用ユーザを増やし、習慣化させることができれば、「売り切り」のパッケージソフトと比べても、デジタルのため在庫を持つこともなく収益率の高い持続的なビジネスとなります。

さらに、月額制などとは異なり、顧客単価の上限がないため、月間課金額(ARPPU)を上昇させていく施策が展開できれば、さらなる利益を見込むことができます。DeNAやGREEでは、営業利益率はおよそ50%と驚異的な利益率を出しています。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の調査では、2010年のARPPUが2,365円に対して、2013年は倍以上の5,510円になると予測しており、コンプリートガチャの逆風を克服し、さらなる新たなサービス展開によるARPPUの上昇が期待されます。

ゲーム事業から総合サービス事業へ

ソーシャルゲームは無料から利用でき、ユーザが継続的に楽しみながらある一定のステージに行くことで課金されるといったマネタイズのモデルを確立しています。

たとえば、角川グループがGREE上でソーシャル機能付き電子書籍配信サービス「BOOK☆WALKER for GREE」を提供するといったように、ゲームの提供にとどまらずサービス領域を拡大させています。

ソーシャルゲームの勢いは、様々なサービスにも波及しています。ソーシャルゲームの要素を他のサービスやビジネスなどに展開するゲーミフィケーション(Gamification)というコンセプトが、注目を集めています。

ユーザが夢中になるための条件や継続的に使わせたいといった手法を展開することで、ユーザとのエンゲージメントを深めてくことができます。たとえば、ランキングや難易度設定などの課題を与えることや、経験値やレベルアップやポイントなどの報酬、そしてチャットやアバターなどのユーザコミュニケーション(交流)などの要素などがあげられます。

世界でも通用する日本のソーシャルゲーム

DeNAやGREEは海外展開に向けて急速に舵を切っています。DeNAが2011年4月28日に発表した「2010年度 決算説明会資料(2011.4.28)」によると、2014年度の事業ビジョンにおいては、2010年度の売上高1,127億円から、国内事業を成長させつつ、2014年にはグループの売上高を4,000億円から5,000億円まで拡大させ、さらには、国内・国外の事業構成50:50を目指しています。DeNAでは、海外への展開にあたって、開発者に最適なソーシャルゲームの開発環境をグローバルに提供するMobageオープンプラットフォーム戦略を推進しています。

また、GREEは、2011年6月期の第4四半期決算によると、プラットフォームの仕様共通化を進め、北米の現地法人に加え、中国の北京にGREE Beijingを設立するなど、海外事業の加速に向け、事業拠点を増やしています。スマートフォン向けゲームなどを展開する企業とも資本提携し、さらにはさらに今後、欧州やアジア諸国など世界各地に拠点を設けるなど、事業展開を強化しています。

特に両社ともアジアを中心にゲーム事業者などの買収を繰り返しており、アジア市場におけるソーシャルゲーム市場におけるシェア獲得競争が始まっています。

ソーシャルゲームの開発におけるクラウド活用

ソーシャルゲームの提供において、事業の収益性を大きく左右するのがクラウドです。ソーシャルゲームの開発事業者の多くは、GREEやMobageのプラット フォームに参加し、それぞれ数百社以上の企業が参加しています。ソーシャルゲームの多くは少人数で開発が行われ、サービスの開発段階では、サーバなどのインフラへの投資は最小限に抑える必要があります。ソーシャルゲームは、人気に旬があり、自前でサーバを構築するよりも、利用者数や利用頻度によるトラフィックの増減に応じて順次リソースを追加・削除できるクラウドを採用するのが有効です。

ソーシャルゲームは、ヒットすれば、莫大な収益と膨大なトラフィックを生み出します。そのため、多くの事業者をソーシャルゲーム事業に引き寄せ、パブリッククラウドを提供する事業者においても、ソーシャルゲーム業界向けを想定した課金体系やサービス機能、一定期間の無償提供やパッケージプランの提供、さらには開発者向けのコンテストによる資金面の支援など、それぞれ工夫を凝らした囲い込みを強化しています。

ソーシャルゲーム業界におけるクラウドの活用は、開発事業者にとっては、効率的なコンピューティングリソースの活用、クラウド提供事業者にとっては短期間で多くの収益を確保できるなど、双方にとってWin-Winの関係が構築できるビジネスモデル構造となっています。

開発者向けの支援プラットフォーム

さらに、DeNAやGREEは、「DeNA デベロッパーサイト」「GREE デベロッパーセンター」など、開発者が効率的にソーシャルゲームなどを開発するための支援プラットフォームを提供しています。 

DeNAの場合は、Mobageに提供する「Mobage API」を公開し、Mobageオープンプラットフォームで展開するソーシャルゲームの開発を支援環境を整えています。

また、パートナーサポートプログラム提供し、個々のニーズに対応するため、開発者の資金面やプロモーションなどの立ち上げサポートや、課金、広告などのマネタイズのサポート、そして、インフラやデバックなどの運用といったトータルなサポートをしています。インフラにおいては、パブリッククラウドを提供する事業者も参加しており、Mobageクラウド○○○プランといったように、ソーシャルゲームに適したプラン構成や料金構成を提供しています。

GREEも同様に開発者の支援体制を充実させており、各社のソーシャルゲームのプラットフォームの拡大に向けて、開発者支援による囲い込みを急いでいます。
今後、日本国内にとどまらず、欧米やアジアなど、海外へのサービスを展開していく上では、こういったサポートプログラムなどは重要となるでしょう。


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担当キュレーター「わんとぴ
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