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PaaS市場の行方

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PaaS市場の動きが加速しています。

米Engine Yardは2012年9月4日、日本での本格的な業務を開始したことを発表しました(関連記事)。Engine Yardは、Ruby、PHP、Node.jsの言語に対応したPaaSで、現在、Amazon Web Services上でサービスを提供しています。Engine YardのPaaSは、1つのスモールインスタンスで月額6480円からとやや高めの設定ですが、シングルテナントで提供するため信頼性が高くエンタープライズの利用用途に適していると言えるでしょう。

そして、Publickeyの記事によると、Ruby PaaSのIIJ「Mogok」10月にオープンβとして無償公開される予定となっています。IIJ は、2011年4月に島根県松江市に「松江データセンターパーク」を開設しており、「Ruby」を開発したまつもとゆきひろ氏が在住しているRuby発祥の地である松江市と、ビジネスコンテストの支援など、地域密着を図ることで、Ruby特化型のPaaS展開を強化しています。

最近の動きでは、ニフティは2012年7月31日、ニフティクラウドのaPaaSである「ニフティクラウド C4SA」の正式提供の開始を発表しました。ニフティクラウド C4SAは、ニフティクラウドのインフラ上に、PHP、Ruby、Python、Perlなどの言語、Ruby on Railsなどのフレームワーク、WordPressなど汎用的なアプリケーションを標準で用意しています。また、MongoDBなど、対応する言語やデータベースの拡充を図るとともに「顧客管理機能」や「決済代行機能」などの機能を追加する予定となっています。

また、GMOインターネットグループのpaperboy&co.は2012年8月22日、月額940円からのPaaS「Sqale」を開始しています。言語はRubyをサポートし、2012年内にPHPにも対応する予定です(関連記事)。

NTTコミュニケーションズも2012年6月27日の日本データセンターサービス開始のニュースリリースにおいて、パブリッククラウドサービス「Cloudn(クラウド・エヌ)」のオプションサービスにオープンソースのCloud Foundryを採用したPaaSを提供することを明らかにしています。

SaaSレイヤに近いPaaSでは、サイボウズの「kintone」やパイプドビッツの「SPIRAL(スパイラル) 」があり、いずれも急速にユーザ数を伸ばしています。

これまでの代表的なPaaSは、セールスフォース・ドットコムが提供する「Heroku」や「Force.com」やグーグルの「Google App Engine」、マイクロソフトの「Windows Azure」などがあります。

AWSは、PaaSサービスのElastic Beanstalkをβ版として無償で提供しています。2012年5月9日、これまで、OSがLinux、開発言語がJavaとPHPのみだったものを、 OSにはマイクロソフトのWindows Server、開発言語には「.NET」への対応、2012年8月にはPythonにも対応するなど、競合他社のOSや複数の言語を取り込み、PaaSレイヤにおいてもサービスの拡充を図っています。

 

ここ数年、各事業者からIaaSレイヤーのパブリッククラウドサービスが提供され、価格競争による低価格化とコモディティー化が急速に進んでいます。IaaS レイヤーにおいては、AWSや、OpenStack、CloudStackといったオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアを採用するサービス事業者が増加傾向にあり、IaaSレイヤは汎用的なITインフラストラクチャーとなりつつあります。IaaSレイヤーでのコモディティ化により、サービスの差別化が困難な状況になりつつあり、今後のクラウドサービスの主戦場はPaaSレイヤに次第にシフトしていくことが予想されます。 

調査会社IDC Japanが2012年5月8日に発表した「国内パブリッククラウドサービス市場予測」によると、クラウド市場の2011年の市場規模は前年比45.9%増の662億円で、2016年の市場規模は2011年比5.2倍の3412億円になると見込んでいます。特に注目されるのはPaaS市場で、2015年には1000億円規模を超え、国内パブリッククラウドサービス市場で最大規模のセグメントになると予測しています。

調査会社のガートナーが2012年2月に発表した調査レポート「Gartner Says Platform as a Service Is On the Cusp of Several Years of Strategic Growth」によると、数多くのソフウェア・アプリケーション・ベンダーが、自社のソリューションを販売するためにPaaS を採用し、ベンダーによるPaaSへの膨大な投資が進み、今後数年で PaaS 市場が戦略的成長市場として急速に拡大すると予測しています。その結果、クラウドにおけるすべてのテクノロジーとビジネスにおいてイノベーションとブレークスルーをもたらすと見込んでいます。 

PaaS市場が成長する背景には、顧客ニーズの多様化と高度化が急速に進み、クラウド事業者もその顧客ニーズへの対応するためサービス拡充を図っている点があげられます。PaaS の場合は、IaaSと比べるとサーバーやネットワーク、そして、セキュリティの知識が必要なく、開発や運用が容易に実行でき、SaaSよりもアプリケーションの改変の自由度の高いことが特徴で、より多くのユーザが利用できる環境が整うことになります。

また、ユーザは、IaaSレイヤで仮想マシンのリソースを増減するといった快適性を知り、次第に上位レイヤを求めてPaaS環境を使いサービスを開発し、提供するといった流れにシフトしていくことが予想されます。

サービス提供事業者は、ユーザの多様化・高度化するニーズに対応していくために、IaaSレイヤにとどまらず、今後の成長分野であるPaaSレイヤまで含めたサービスのポートフォリオを充実させていくことが重要となってきているといえるでしょう。


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担当キュレーター「わんとぴ
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