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地域ソーシャルメディアの概要と歴史

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地域向けにコミュニティを形成するソーシャルメディアには、大きく分けて「地域SNS」、「地域ツイッター」、「地域ブログ」、「地域フェイスブック」に分類されます。各地域ソーシャルメディアの概要とその歴史的背景について整理してみましょう。

地域SNS

地域SNSは、日常的にサイト内の日記や電子掲示板やコミュニティなどを利用し、行政情報、地域情報などを入手できる地域向けの交流・情報提供サービスです。マイフレンド機能などで、友人や知人など、クローズドな環境で安全安心に情報のやりとりができ、「日記」や「コミュニティ」など個人の興味に応じて、コミュニケーションをとることができ、一般住民でも気軽に参加をすることができます。

地域SNSに参加することで、地域住民同士の新たな繋がりが生まれ、繋がりが生まれることで、様々な機会が生まれ、地域が活性化し、地域課題への解決に結びつくといったことが期待されています。

行政との接点についても、自治体などが運営する地域SNSを通じて、日常的に緩やかなコミュニケーションを継続的に行うことで、地域活動なども協力・協調的な関係を築きやすくなります。

地域SNSの歴史は、地域ソーシャルメディアの中では最も古く、最も早く地域SNSを活用したのは、熊本県八代市の「ごろっとやっちろ」です。電子掲示板であった市のコミュニティサイトから地域SNSに発展させ、現在では、3,000人以上の市民などが、子育てや近所のお店の情報など、活発な情報交換を行っています。

総務省は、この八代市の地域SNSによる地域コミュニティの取り組みに注目し、2005年12月、「地域SNS等を活用した地域社会への住民参画に関する実証実験」を公表し、2005年12月から2006年1月まで、新潟県(長岡市地域SNS おここなごーか)と東京都(千代田区地域SNS ちよっピー)で実証実験を行いました。実証実験の主な目的は、地域SNSが、行政への住民参画や防災情報の共有などに活用できるかといったことで、その効果は高いと報告されました。

その頃から、SNSのオープンソースの登場も後押しし、自治体において、地域SNSの採用がブームとなり、千葉県の西千葉SNS「あみっぴい」などに代表されるようにNPOや民間事業者においての成功事例も多く登場しました。地域SNSを使って地域の街づくりや地域通貨、観光振興など、全国に広がりを見せました。

また、2007年8月からは国際大学GLOCOMが主催する「地域SNS全国フォーラム」が開催され、地域SNSに関心を持つ人々や団体が集まり、地域SNS同士の連携やノウハウを共有する場として定着をしてきました。2011年3月5、6日には、福井県坂井市で第8回のフォーラムが開催され、全国から参加者が集まるなど大きな盛り上がりを見せています。第9回のフォーラムは、2011年10月22日、23日に福岡県久留米市で開催されました。

一方、地域SNSを活用する自治体・団体の数は、頭打ちとなっています。地域SNSは2005年ごろから急速に増加し、国際大学GLOCOMの調査によると、2010年2月時点で519まで増加したが、2011年2月には469と減少に転じています。その背景には、地域に閉じた環境であるために、参加者人数にも限りがあり、盛り上がりが長続きしないケースも少なくないためです。また、地域SNSの設置運営のコスト負担も足かせとなっており、無料で利用できる地域ツイッターや地域フェイスブックに移行するケースも見られます。

 

地域ブログ

地域ブログは、地域の情報などを各々のブロガーが発信する地域密着型のブログポータルサイトであり、基本的には誰もが閲覧をすることができるオープンなサービスです。地域ブログでは、地域住民だけでなく、多くは地域外の人も気軽にブログに参加できます。また、地域の名産品など、ECサイトと連携するケースも多く、地域ブログ経由で収益をあげているケースも多くみられます。

地域ブログには、民間運営では沖縄の「てぃーだブログ」や岐阜の「ギフログ」など、全国でも非常に多くのNPOや民間事業者などが運営しています。

自治体では、2007年6月21日、人口約500人の和歌山県の北山村が、全国自治体初のブログポータルサイト「北山ブログ村ぶろ」を立ち上げています。開設目的は、北山村及び紀州熊野地域のPRと地域発展への寄与などで、全国から「バーチャル村民」となるブロガーを募り、観光客の誘致や特産物の販売促進を図っています。

バーチャル村民となる会員数は村民の約500名をはるかに多い約16,000人、一日のPV(ページビュー)は30万を越えています。「村ぶろ」のシステムは1自治体、1NPOのほか、12の企業に利用されている。「村ぶろ」は、「2007年日経地域情報化大賞日経MJ賞」、「平成22年度地域づくり総務大臣表彰」などを受賞し、高い評価を受けています。

地域ブログは、PV数を伸ばしECサイトとの連携をはかるなどで、全国的にも成功している事例が多くみられます。一方、ブロガーなどによる一方的な情報発信が多く、地域の住民同士のつながりやコミュニケーションの機会を増やすには十分とはいえず、SNSやツイッターなど併用することで相乗効果が発揮されます。

 

地域ツイッター

昨今、最も注目をされており、利用者数を伸ばしているのが、地域ツイッターです。地域ツイッターの場合は、無料で地域向けの交流・情報提供から、地元情報の発信まで幅広い範囲で情報のやりとりをすることができ、オープンでリアルタイム性を重視したコミュニケーションが行えます。また、地域内だけでなく、地域以外にもクチコミなどで情報を広げていくことができます。

自治体においては、青森県庁( @AomoriPref)の採用が最も早く、2009年7月13日に公式に開設している。自治体が運営する千代田区や長岡市の地域SNS(2005年12月)や和歌山県北山村の地域ブログ(2007年6月)と比べると、まだ歴史は浅い状況です。

JOIN(移住・交流推進機構)が2010年7月12日に公表した7月7日現在の「初の全国調査「自治体ツイッター公式アカウント」活用実態」によると、公式にツイッターを活用している自治体はわずか18件にとどまっていました。約9ヶ月後の2011年4月に経済産業省が発表した調査によると、4月4日時点で148件、5月末には190まで増加しています。自治体のツイッターの活用への評価が自治体間で広がり、さらに震災などの影響もあり、急速に自治体での採用が増えています。

地域ツイッターの場合は、フォロワー数が少ないと情報の影響力が少ないため、地道な情報発信などを通じてフォロワー数を増やしていく必要があります。また、投稿できる文字数が140文字と限定されているため、十分な表現ができずに、住民とのやりとりの中で誤解を招く恐れもあります。そのため、URLを表記し公式ホームページなどへ誘導するなど、他のサービスとの連携などで内容を充実させていく必要があるでしょう。

 

地域フェイスブック

地域フェイスブックは地域SNSと同じ部分が多いが、無償で利用できることや世界で8億人以上のアクティブユーザがいるということから、幅広い対象でコミュニケーションをとることができます。地域フェイスブックという表現は一般的ではないが、フェイスブックを地域で活用するという意味でここでは地域フェイスブックと呼ぶこととします。

自治体では、公式情報を発信する自治体公式のフェイスブックページとして、日本で最も早いのは、2010年11月1日に開設した長野県小諸市と考えられます(自治体のゆるキャラのファンページを除く)。フェイスブックページを開設している自治体は2011年12月時点で40前後と予想され、他のソーシャルメディアと比べると少ない状況です。

佐賀県武雄市は2011年4月1日、企画課、広報課、市民恊働課などを統括する「つながる部」を創設し、その配下にフェイスブック係(秘書広報課)を新設しました。フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを市政に取り込み、市民と市役所、市民と市民を相互につなぐ役割を担っています。

同日には市のフェイスブックページを正式にオープンしました。「くらしの便利帳」や「申請書」や「市政情報」など市民向けのページも設けています。市の公式ホームページを徐々にフェイスブックに一元化し、2011年8月1日には、市のホームページを閉鎖し、フェイスブックページに完全移行しています。フェイスブックの利用者数の増加やサービスの充実度などを見ると、地域コミュニティの活用や行政サービスの提供において、最も潜在的な可能性をもっているといえます。

※修正 2012.1.21
 修正前:八千代市 修正後:八代市

 

 

 

 

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※担当キュレーター「わんとぴ

 
   

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