世界市場と産業構造変化(4):ソーシャルゲーム編
スマートフォンやスマートテレビなど、世界市場において日本は苦戦を強いられている中、存在感を示しているのが、日本のゲーム業界です。
経済産業省の2011年8月11日の「産業構造審議会情報経済分科会中間とりまとめ」資料では「ゲーム」について以下のとおり整理しています。
○ゲーム分野では、ファミコン、プレイステーション等の日本のゲーム専用機がプラットフォームとして世界市場を席巻。他方、現在、PC等のネットワーク系ゲームやスマートフォン系ゲームの市場が拡大する中、専用機の市場が侵食されている。
○これに対し、日本企業は、専用ゲーム機をインターネット接続することで、新しいプラットフォームを構築し、スマートフォン経由で提供されるコンテンツや電子書籍経由で提供されるコンテンツも利用可能とするなど、逆にゲーム提供に留まらない新たな競争構造を作ろうとしている。
これまでは、任天堂のWiiやソニーのPlayStationなどが世界各地で利用され、存在感を見せていました。しかし、これまでのコンソール型のゲームビジネスはやや頭打ちの印象の感があり、Zynga、そして日本ではDeNAのモバゲーやGREEに代表されるようにソーシャルゲームが台頭しています。
本取りまとめでは、専用ゲーム機もネット接続して多様なコンテンツと利用可能なプラットフォーム構築を企図している一方で、スマートフォンやタブレットなどによる専用ゲーム機以外経由でのゲーム提供が急速に拡大している点をあげています。
また、世界市場では、単純にゲームの世界だけにとどまらず、電子書籍など多様なプレーヤーを含めたグローバル競争が激化する時代に突入しています。
最近では、ゲームの要素を他のサービスやアプリケーションなどに展開するゲーミフィケーション(Gamification)の次のトレンドとして注目を集めています。
日本のゲーム市場は、今後は縮小が見込まれる一方で、アジアなど世界市場では急速に成長する分野として期待されています。
調査会社のシード・プランニングが2010年12月21日に公表した「ソーシャルゲームの世界市場動向とビジネスモデル分析調査」によると、市場は継続的に成長するものの、2012年以降はやや鈍化する傾向が見られます。
国内で成功しているDeNAやGREEなどのゲーム業界も世界市場を視野にいれて、事業を推進しています。
DeNAの2010年度 決算説明会資料 2011.4.28を見ると、2014年度のビジョンにおいては、2010年度1,127億円から、国内事業を成長させつつ、2014年にはグループの売上高を4,000億円から5,000億円とし、国内・国外の事業構成を50:50に目指しています。世界市場ではほぼゼロのから国内市場と並ぶ事業収益に育てていくために、急速に舵を切ってくるでしょう。
出所:DeNAの2010年度 決算説明会資料 2011.4.28
また、GREEの2011年6月期の第4四半期決算を見ると、プラットフォームの仕様共通化を進め、海外事業の加速に向け、北米の現地法人に加え、中国の北京にGREE Beijing(仮称)を設立するなど、事業拠点もさらに増やして予定です。また、スマートフォン向けゲームなどを展開する企業とも資本提携し、さらにはさらに今後、欧州やアジア諸国など世界各地に拠点 を設ける予定です。
先日、JETRO主催の「ゲーム分野の海外最新事情および海外ビジネス展開セミナー」に参加をしてきましたが、中小企業のゲーム開発の業界においても海外に進出していかなければゲームビジネスが今後成り立たないという強い危機感と、世界に大きな市場がこれから大きなビジネスチャンスがあるという期待が入り混じったセミナーで、今後の大きな変化の予兆を感じました。
世界のゲーム市場において、日本がコンソール型、そしてソーシャルゲームともに、日本企業が競争環境で勝負できる環境は整っています。しかし、海外への展開を躊躇すれば、瞬く間に産業構造は変化し、苦戦を強いられる可能性があります。日本のソーシャルゲームは、サービス品質やビジネスモデル的にも世界をリードしていると考えられ、この先、さらに世界市場、特にアジアにおいて存在感を示すことができるか、重要な岐路に立っているのかもしれません。
※担当キュレーター「わんとぴ」
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