世界市場と産業構造変化(3):スマートテレビ編
パソコン、携帯(スマートフォン)に続いて、今後大きなビジネスモデルの進化が予想されているのが、「スマートテレビ」です。
経済産業省の2011年8月11日の「産業構造審議会情報経済分科会中間とりまとめ」資料では「スマートテレビ」について以下のとおり整理しています。
○放送でも通信でもコンテンツ提供が可能なスマートTVの出現により、通信型のコンテンツ提供サービスがTV画面へ進出。従来の競争構造が大きく変化する可能性。
○また、スマートTVにおいては、コンテンツストアとハード(OS)をグーグル等が仕切る世界が生まれることとなり、従来の日本のお家芸であった、液晶テレビ等においても、ハードのみのビジネスではレントが大きく喪失する可能性(他方、多数の日本企業は3Dの品質を競争の基軸として事業展開)。
これまで、放送と通信の融合について、政策的や技術的などの視点から様々な議論や検討が時間をかけて進められてきましたが、ここにきて、動画配信サイトのHuluの日本市場進出など、国内にテレビ産業においてもグローバル化が進み、産業構造が大きく変化していく可能性が考えられます。
本取りまとめでは、電波の割当てに応じた国内市場向けビジネスからインターネット網を前提としたグローバル展開の可能性の高まりをあげています。そして、テレビのOSはグーグル等が握る可能性があり、インターネットTVへの進化によるTVメーカーの付加価値の喪失の可能性があると指摘しています。テレビは、パソコンやスマートフォンと同様の設計で製造できるようになれば、価格競争が激化し、日本のTVメーカーの競争優位性は弱まると考えられます。さらに、スマートフォンなどと同様に、AndroidやiOSがプラットフォームの覇権を握る可能性が十分に考えられます。
国内におけるテレビ視聴時間の推移は、情報通信白書2011の調査によると、5年前と比べると「全体は微減」「若年層は大きく減少」「シニア層は増加」という傾向となっています(関連記事)。これらの調査を見る限り、テレビの視聴率の減少は進むと考えられ、「スマートテレビ」のデマンド型へのニーズが高まっていくと予想されます。
ブラウン管のテレビの時代から、テレビは日本メーカーがグローバル市場において、存在感を示していた市場ですが、産業構造の変化に伴い、日本の放送局、テレビメーカー、そして、テレビCM向けの広告事業者などは、事業の見直しをしつつ、グローバル市場を視野にいれたテレビ向けサービスのあり方についてもさらに踏み込んだ議論や検討を進めていく必要が出てくると考えられます。
「スマートテレビ」の産業構造変化は、多くの規制に守られている領域で、テレビの購入サイクルが長いため、パソコンやスマートフォンと比べると、時間がかかると思われますが、市場へのインパクトは大きく、グローバル市場を視野にいれ着実に産業構造が変化していく可能性が考えられます。今後さらに競争の厳しい市場になると予想されますが、多くの事業者にとっては、またとないビジネスチャンスと考えられ、創造的破壊と新しいビジネスが創造される分野として期待されるところです。
※担当キュレーター「わんとぴ」
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