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東北関東大震災による被災総額と経済や産業やICT市場に与える影響について

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今回の東北地方太平洋沖地震によって、想像以上を超える被害が出ています。実際の被害額はどれくらいで今後の日本経済にどのような影響を与えるのでしょうか?

内閣府は2011年3月23日、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議 震災対応特別会合資料-東北地方太平洋沖地震のマクロ経済的影響の分析-(PDF) 」を公表しました。政府が被害額を公表するのは今回が初めてとなります。被害額の試算は、甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島に北海道、青森、茨城、千葉を加えた7道県を対象に、期間を2011年間から2013年としています。数値は社会資本・住宅・民間企業設備などのストックである【直接的被害】と、フロー(GDP)への影響となる【間接的被害及びストックの再建】が分析の枠組みとなっています。

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そして、東日本大震災による道路や住宅などへの直接的な被害額が16兆~25兆円になるとの試算しています。今回の毀損額では、「ケース1」の16兆円と「ケース2」の25兆円の二つのパターンで算出しています。「ケース1(16兆円)」では、阪神大震災で住宅などの建築物や港湾などの社会インフラが被った損害の割合を基準とし、津波の被災地域でこの割合が2倍程度、津波被災地域の建築物の損害割合を30.6%などとした場合を想定しています。16兆円のうち岩手、宮城、福島の3県だけで約14兆円を占めています。被害をさらに大きく見積もった「ケース2(25兆円)」では、建築物の損害割合を80%と想定し、住宅や港湾、工場など被災地にある「資本ストック」の約14%が損害を受けた計算となります。

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地震や津波での生産設備などの損壊は9~16兆円で生産減により2011年度の実質国内総生産(GDP)が0.2~0.5%程度押し下げられると予測しています。

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そして、サプライチェーンを通じた影響です。東北地域での自動車工場の被災により、トヨタ、日産、ホンダなどの自動車各社は、工場での生産がストップしています。自動車業界だけでなく、他の産業にも影響があり、被災地からの中間財供給の減少により、他地域の生産減によるGDPの減少額は2011年前半に0.25兆円程度と算出しています。「自動車、電機は生産再開めど立たず モノ作り大国日本の根幹が揺らぐ」という記事にもあるように、国内拠点の操業停止が続けば海外への生産移転も増えてくことが予想されます。今後、グローバルマーケットにおいて、(既に出ているようなのですが)日本製品が放射能に汚染されているのではないかという風評被害、そして、地震の多い日本の工場を介さないサプライチェーンの日本外しも大変懸念されます。仮に工場が生産を開始し供給能力回復したとしても震災前に戻らない可能性もあり日本の産業空洞化が助長されるかもしれません。

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サマータイムの電力不足が懸念されていますが、電力供給の制約による影響も懸念されます。後ほどのシンクタンクの調査資料でも一部算出されていますが、計画停電を通じたGDPの減少は、本資料でも、2013年まで書かれているように、中長期において、大きな影響が出ることが予想されます。

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ストック再建の影響ですが、「ケース1(16兆円)」の場合は、2011年度が5兆円、2012年度が6兆円、2013年度が5兆円となっています。

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そして、まとめが以下の図です。ストックとなる直接的な被害額だけで16兆~25兆円。消費者心理の悪化、インフラなどの復興需要や原子力発電所の事故による計画停電や放射能汚染などによる影響を考えると、経済的な影響はさらに大きくなる可能性は高いでしょう。そして、今後は今後どうやって財源を確保していくか、大きな焦点となっていくでしょう。

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その他のシンクタンクの資料なども見てみましょう。

大和総研は3月18日、「日本経済見通し:東北地方太平洋沖地震の影響に関する暫定的な見解」を公表しました。被災の状況の全体像が把握できていない状況のため暫定の調査であるとし、福島第一原発の事故の影響などを考えると想定を上回る可能性が十分に考えられるとしています。

大和総研では、東北地方の経済活動の低迷、計画停電等による生産減、消費者マインド悪化等による個人消費の下振れ、5円の円高・ドル安進行、今後、原発事故の被害が拡大した場合の悪影響などで、11年度の実質GDPは▲0.7%以上、下振れする可能性があると指摘しています。

大和総研では、3月26日の毎日新聞の記事「東日本大震災:夏の電力不足、対策を総動員 営業時間短縮/夏休み分散/サマータイム」にもあるように、計画停電の経済への影響は、機械的な資産によると、「計画停電が1年間続けば、鉱工業生産が9・2%減少し、国内総生産(GDP)を2・8%(約15兆円)押し下げる。」としています。

 

富士通総研は3月22日、「巨大地震がわが国マクロ経済に与える影響」を公表しました。直接被害額については全体の数値は算出していないものの、住宅の直接被害は、阪神大震災時は1.6兆円、今回は3.3~6.1兆円となり、当時の2~4倍となるとしています。関節被害では経済活動の停滞や計画停電の影響などが記載されています。復興財源の捻出と復興計画にも触れられています。また、富士通総研は3月25日、「電力不足が日本経済に与える影響」を公表しました。夏場には深刻な電力不足となり、電力不足による日本経済への影響は1兆500億円にのぼると予測しています。

 

日経新聞(2011.3.26)の記事によると、野村證券金融経済研究所は24日までに、自動車用電子部品の生産停止と、電力供給の不足による主要420社の企業業績の影響を試算しています。企業の2011年度の経常利益は3割下がる可能性があると分析しています。

 

観光レジャーにも影響が出ています。JTBによると3月の国内旅行予約者数が20日時点で前年同月比33%減と震災前の同3%増から急減しています(関連記事)。今回の震災により東北での交通インフラの破損やガソリン不足も影響しています。計画停電や福島第一原発事故による放射線への不安もあり、今後予約が本格化するゴールデンウイークの国内旅行需要も冷え込む公算が大きいと予想しています。「ディズニーランド当分再開できず 東京ドーム10倍の電力量がネック(3月24日) 」によると、既に開園が可能な状態であるにも関わらず、東京ドームの約10倍に当たり、一般家庭なら5万世帯前後にもなる消費電力がネックとなり、開催の目処はたっていません。外国人観光客の大幅な減少も予想され、今後の観光レジャー産業への影響が懸念されます。

 

ダイヤモンド・オンラインの3月23日の記事「震災のマクロ経済へのインパクトは多極化 経済的コストは12~17兆円へ ――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト」では、震災による経済への影響は多極化しており、国内の実物経済への影響だけでも、建物被害、ライフラインの寸断、計画停電・自主節電、原子力発電のあり方など、考慮すべき項目は多岐に渡っている点が指摘されています。実物経済や金融経済、国内や対外取引などわかりやすく影響をがリスト化されています。

 

今回の被害額は保険金の規模から見てもその大きさがわかります。読売新聞(3月26日)の記事「保険対象損害額、最大2兆4千億円…米調査会社」によると、米リスク調査会社AIRワールドワイドは3月25日、東日本巨大地震と津波による保険対象の損害額が、200億~最大300億ドル(約2兆4400億円)に上るとの試算結果を発表しています。このうち地震と火災による損失が110億~210億ドル、津波の被害は80億~97億ドルと試算しています。保険金額は数兆円規模の膨大な金額ではありますが、全体の推定損害額から考えると約1割前後と考えられます。

 

そして、東京電力です。東京新聞(3月25日)の記事「東電負担 数兆円規模に 損害賠償」によると、住民や企業への損害賠償や福島第一原発の廃炉などでなどで少なくとも数兆円規模になると指摘されています。

損害賠償の対象は、住民の避難費用、休業補償、企業の損失、放射線や風評被害による農家の損害など多岐にわたる見通しであると分析しています。賠償制度を定めた原子力損害賠償法は、「異常に巨大な天災」が起きた場合、原発事業者の支払いを免除し、国が全面的に補償することになっていますが、枝野幸男官房長官は「まずは東電が責任を持ってもらう。できないときは国が責任を持つ」と述べており、東京電力の免責はないと見られます。

福島第一原発の場合は、6号機まである原子炉のうち損壊している1~4号機の廃炉は確実と見られています。原発関連の費用としては、放射性物質が飛散への対応や発電施設の復旧や新設、年間2900億円程度の代替燃料費負担などがあげられています。

これだけの規模になると、当然、東京電力だけでは対応は不可能です。東京電力では、既に三井住友銀行などに総額二兆円の融資を要請しており、事態が今後進展していく上で、資金調達が大きな課題となってくると予想されます。そのため、国も支援に乗り出す見通しとなっていますが、国民の税金負担、電気料金の値上げにより、利用者への負担がのしかかってくる可能性が考えられます。

 

資金調達が苦しいのは東京電力ではありません。

日経新聞(2011.3.27)の記事「企業の資金調達急増 震災2週間、3大銀へ融資要請4倍」によると、震災後の2週間で、三菱東京UFJ銀行など3メガ銀への融資要請は2兆6000億円に達し、調達額が突出する東京電力を除いても通常の4倍規模となっていることが明らかになっています。その背景には、復旧費や運転資金の確保や、操業停止などで収入が細った企業も人件費や原料費などの支払いで資金需要が膨らんでいるためとしています。主要行は原則として応じる方向としていますが、長期的な経済へのマイナス影響を考えると、貸し渋りも出てくる可能性は否定できません。また、地方銀行は被災した中小企業向け支援融資を打ち出していますが、大企業と比べると体力のない中小企業にとっては正念場となるでしょう。

 

海外のデータにも目を通してみましょう。

世界銀行は3月21日、「東アジア・太平洋地域の経済見通し」を公表し、過去の事例から見て、実質国内総生産(GDP)は2011年までマイナスの影響を受けると分析しています(関連記事)。その後、復興需要によって成長が見込まれるものの、今回の震災による打撃を桁日本の再建には、5年を用する可能性があると予想しています。また、世界銀行は民間試算を紹介する形で、被害総額が1220億~2350億ドル(約10兆~19兆円)に達すると述べた。中でも自動車や電子機器産業が最も影響を受ける公算が大きいと指摘しています。

 

最後にICT市場関連の影響も少し見てみたいと思います。

ガートナーは3月22日、「東日本大震災がICT市場/産業に及ぼす影響」を公表しました。。ITサービス、サーバー、通信、携帯電話端末、パソコン、半導体、複写機/複合機・プリンタの7つの市場について分析しています(関連記事)。国内ICT投資動向については、震災前、企業による2011年のICT投資を「微増」と見込んでいましたが、今回の震災の影響により、投資動向を「微減」に修正しています。

ICT市場/産業の今後にマイナスの影響を及ぼすものとして、以下の4つをあげています

・ICT市場/産業でのサプライチェーンにおけるボトルネックの発生
・ベンダーにおける被災施設/設備改修投資負担の発生
・需要サイド (一般消費者やユーザー企業) における消費/投資意欲および優先順位の変化
・地政学的な見地における、グローバル・ビジネス拠点としての日本の魅力度の低下

一方、ICT市場/産業の今後の需要を高める要素として、

・ユーザー企業における事業継続/リスク管理対応強化のためのICT投資
・震災復興への公共部門の投資による景気刺激
・個人におけるICT活用意識の向上
・社会インフラストラクチャ全般の見直しと刷新に向けた公共部門を中心とする投資拡大

今後、中長期的には、復興段階に入れば、ビジネスの事業継続によるセカンダリ・サイトや散型データセンターへの顧客の関心が一層高まるなど、データセンター・サービスの需要が新たに喚起されると予測しています。クラウドサービスへの評価や考え方も変化が生じていくことでしょう。

 

以上、今回の震災による被害額は、直接被害額のほか、計画停電や原発事故など、様々な間接的な被害が予想され、これまでに例を見ない経済的なマイナス影響が予想されます。財政難の国がどのように財源を確保し、復興策を示し、そして被災地の皆さんや企業をはじめ、日本がこの困難にどのように立ち向かい、私たち一人ひとりが考え行動していかなければならないのか、問われていると言えるでしょう。

 

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