バーチャルプライベートクラウドという選択
いろいろ話題となっていますが、Amazonが、8月25日に、企業向けクラウドサービス「Virtual Private Cloud」を発表しました(関連記事)。AmazonのEC2にVPNで接続してセキュアな環境下でクラウドサービスを利用できるというものです。まだ、まだβ段階で、米国東部のエリアでした利用できないが、その他のサービスの提供も予定されており、今後アマゾンのサービスのVPN接続の形態の充実されることが予想されます。
日本においては、セールスフォース・ドットコムとNTTコミュニケーションズが提携し「Salesforce over VPN」を提供しています。導入事例としては、山梨県の甲府市の定額給付金のサービスにおいては、国民の個人情報を扱うということで、「Salesforce over VPN」を採用しています。「Salesforce over VPN」の場合は、国際VPN経由で海外のデータセンターまで接続しています。そのため、海外のサービスであってもVPN経由でセキュアな環境でサービスが利用できるということになります。
CIO Magazine米国版調査(2009年6月実施)『ユーザーの間に根強く残る「クラウドへの不信感」』によると、やはりセキュリティには不信感があるようです。アマゾンもクラウドサービスの利用企業の裾野を広げていくため、セキュアな回線をセットにしたサービスもランナップの一つに加えたと考えることができるでしょう。
クラウドコンピューティングの利用にあたって、これまではデータセンター側の仮想化やマルチテナント、そして分散処理など、クラウド側の処理についての議論が中心だったのですが、エンドユーザがより信頼性の高い環境下で利用するためには、ネットワークということを重要視しなければなりません。
また、海外のクラウド接続になれば、セキュリティだけでなく、様々な海底ルートを経由するため、故障というリスクも大きくなり、さらには国内と比べると遅延も大きくなることでしょう。
クラウドコンピューティングは大きく分けて、パブリッククラウドと、個別に用意するプライベートクラウドの二つに分類されることが一般的です。今回のアマゾンの「Virtual Private Cloud」というサービスは、その中間に位置する「バーチャルプライベートクラウド」と位置づけられ、各々の領域のいいとこ取りができると考えることもできるでしょう。
アマゾンの「Virtual Private Cloud」がどこまで普及するのか定かではありませんが、米国で普及が進むようになれば、日本国内もその影響を受け、クラウドサービスを利用するにあたって、回線の選択もしっかりと検討するようになるのかもしれません。