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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

「クラウド化する世界」を読んで

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クラウドコンピューティングに関して雑誌やニュースサイトで特集は組まれたことはあるのですが、書籍(翻訳版ですが・・)としてはおそらく始めてではないかと思いますので、早速発刊日の10月10日に購入をしてみました。

まず導入部分は、製造業とクラウドとの比較をしています。一例を引用してみましょう。 

製造企業は、発電所から電気を買うと、単にキロワット当たりの単価が安い以上の利点があることに気づくようになった。高価な機材を購入しないので、固定費を減らし、資本をより生産的な目的に使えるようになった。製造企業は従業員を削減し、技術の陳腐化や故障のリスクを減らし、幹部社員たちはよけいなことに気をとられずにすむようになった。かっては想像もできなかったが、発電所の電力を多いに利用するのは当然のこととなった。(中略)自社で発電を続けているのは、遠隔地で巨大な工場を経営している、ごく少数の製造企業だけとなった。

確かにわかりやすい比較です。クラウド化が進めば、自社でシステムを構築するよりも利用したほうが単価が安いことに気づくようになるかもしれません。固定費を減らし、資本をよりコアな事業に集中できるようになるかもしれません。増大するシステムの運用保守の稼動リスクや故障リスクを減らし、幹部社員は人材を余分に抱えるリスクとシステムダウンのリスクから気をとらわれずにすむようになるかもしれません。企業内にはクラウドにあずけることが難しい勘定系などのシステムは確かにありますが、時代の方向性としては、ITにおいても同様に発電所から電気を買うという流れに進んでいるのではないかと感じています。 

企業の生産性についても以下のことをあげています。   

クライアント/サーバーコンピューティング特有の無駄は、個々の企業にとって重荷である。さらに業界全体に目を向けると、事態ますます深刻化している。(中略)IT部門のほどんどの従業員が、他社のIT部門で行われているのと全く同じ定期保守の作業を行っている。何万という似たようなデータセンターが、似たようなハードウエアを使用し、似たようなソフトウエアを運用し、似たような従業員を雇って、経済に深刻な負担を強いているのだ。こうして、経済のあらゆる領域でIT資産が過剰に抱え込まれて、コンピューターによる自動化がもたらし得る生産性の向上を阻害しているのである。

というように、不健全な発展を遂げてきてしまったことを指摘しています。 

クラウドコンピューティングの効果については、Amazon(アマゾン)のEC2(Elastic Compute Cloud)とS3(Simple Strage Solution)の利用事例をあげながら以下のことを述べています。 

このサービスを利用すれば、企業はウェブサイトを運営したり、企業向けソフトウエアアプリケーションを利用したり、ネットビジネスそのもののを展開することもできる。サーバーコンピューターやストレージシステム、付随するソフトウエアなどに投資しなくてもよい。実際、先行投資は全く必要ない。企業は使用した容量分だけ料金を支払う。しかも賃貸するのは、通常のコンピューターシステムではない。現代のインターネットコンピューティングのために設計された最先端システムなのだ。信頼性は高く、応答時間は高速で、トラフィックが大きく変動しても柔軟に対応する。あらゆる企業が、たとえ一人でやっているホームビジネスでも、アマゾンが数年がかりで組み立てて調整したコンピューティングオペレーションを利用することができるのだ。

しかし、企業においては急速にクラウド化が進むわけではありません。米ガードナーの調査によると、2011年にはビジネス用ソフト市場の25%を占めるであろうと報告しています。つまり、2011年になっても4分の3は、自社でシステムを構築し運用しているということになります。しばらくは、どのシステムをクラウドに移行し、どのシステムを自社で運用するか、そして、どのようにクラウドと自社システムと連携していくかというのが企業において、そしてIT部門において重要な検討事項になるのではないでしょうか。 

今後クラウドというキーワード自体は忘れ去られ、別にキーワードに置き換わることになるかもしれませんが、企業が保有から使用にシフトする方向性はここしばらくは続きそうです。

 

 

 
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