日本のICT国際競争力と世界一のICTインフラ
日本は“IT鎖国”、“ガラパゴス化”等ICT分野で国際競争力に乗り遅れていると指摘されるケースが増えてきています。特に、携帯電話の多様化多機能化は“ガラパゴス化”の象徴であり、三菱電機等の携帯電話メーカの撤退など携帯端末市場の淘汰が始まりつつあります。
総務省は3月18日、「日本のICTインフラに関する国際比較評価レポート」を公表しました。日本はICTインフラに関しては世界一の水準のようです。
ICTインフラの利用料金、高速性では引き続き世界最先端レベルを維持し、
- ブロードバンドの料金、速度、光ファイバー比率、Bot感染PC台数は世界一。
- 高度なサービス(ブロードバンド、3G携帯)で世界を先導。
一方、ICTインフラの普及度、社会基盤性は低調で、
- 普及率は携帯電話、インターネット、ブロードバンドのいずれも全般的に低調。
- ICT投資割合やインターネットホスト数も低調であり、社会基盤としての優先度が低い。
“NTTの再編議論”や“通信と放送の融合・連携”等の議論がなされており、“NGN”が普及すれば国際的に見てもさらにレベルの高いICTインフラ環境が整備されることが予想されます。
しかしながら、プラットフォームのレイヤに関しては、GoogleやYahooなどの海外の企業が占めており、日本の企業は太刀打ちできない状態が続いています。
佐々木 俊尚
(著)の「ウェブ国産力 日の丸ITが世界を制す」の中では、閉ざされた日本の要素技術の問題点をあげ、“要素技術の研究が大企業主導型になってしまい、その結果、要素技術が消費者向けのサービスに結びつかない構造にできあがってしまっている”と指摘しています。
1990年代半ばまで、IMDの国際競争力ランキングにおいて、米国とトップの座を争ってきました。しかし、近年日本の地位の落ち込みが激しく20位前後に低迷しているのが現状です。昨年5月22日、総務省は「ICT国際競争力強化プログラム」を公表し、ICT産業の国際競争力強化に必要な政策を包括的なパッケージとしてまとめており、ICT分野においても国際競争力への危機感は高まってきています。
単純に考えると世界一のICTインフラがあれば、ICTの国際競争力もそれなりに高い水準にあるのではないかと思うのですが、なかなか現状は厳しそうです。日本は技術水準の高い国産技術を数多く持っているので、それを消費者のためそして世界のために還元していく仕組みと環境をつくっていくことが今日本には求められているのではないかと考えています。