特にパッケージグッズのマーケターには読んでほしい本:「買う」と決める瞬間
マーケティングの勉強をしたいと思いケロッグへ留学し、またマーケティングの仕事をしている自分がこういうのもおかしな話だが、自分自身のことをあまりマーケターのターゲットにならない、特殊な消費者だと思っていた。
買い物をすること自体がわずらわしく、企業広告に踊らされて(またはみんなが持っている)物を買うことを恰好が悪いと思い、それでいて、やっぱり仕事がら他人の眼はそこそこ気になる・・・・
クーポン券を使うことはまずない(面倒くさい)、価格弾力性(価格の変動によって、ある製品の需要や供給が変化する度合いを示す数値)の小さい消費者だ。
良く言えばブランドロイヤリティーが高く、買い物を時間的にも精神的にも効率的にしたい消費者なのだ。
さて、この「買う」と決める瞬間 をアークコミュニケーションズが翻訳することになったのだが、大変興味深い内容だった。
正直なところ、小売り業の経験もなく、知識もさして多くなかったのだが、小売りで何が起きているかわからずして、マーケティングを勉強するのは本当に片手落ちだと、今更ながら痛感した。
マーケティングリサーチで裏付けられた、小売りの消費者の行動についての分析がなかなか面白い。
まとめ買いのイメージが強いアメリカの消費者でさえ、スーパーでの買い物点数は5点以下が半数だそうで、びっくり。スーパーで購入する商品の数として一番一般的なのはなんと一つなのだそうだ。
5点以下の購入者は、買い物に要する時間は短く、回遊範囲も狭く、総じてゆっくり歩き、1分あたりの消費金額は高いのが特長だ。これらの客にあともう1つだけ効率的に買い物をさせることが一番売上増につながるという著者の主張も説得力がある。
そして、自分自身のことを特殊な消費者と思っていたのは、全くのうぬぼれで、皆同じ悩みを抱えていることがよくわかった。今や消費者はかける「お金」はもちろんのこと、かける「時間」と、商品選択の「迷い・悩み」の3つと格闘しながら買い物をしているのであるから。