グローバルビジネス:言葉の違いよりも、バックグラウンドの違いに苦労することのほうが多い。
その昔、外国人とコミュニケーションがなかなかとれないと、自分の英語が下手なせいだと思っていた。だから一生懸命「英語」の練習するのだが、それなりに上達しても、コミュニケーション上手になった気がしなかった。英語力のレベルが上がると、目標値もあがるので、いつまでたっても満足しないということもあるのだが、「やはり小さい時から海外に住んで、ネイティブのように流暢に話せないからダメなのだ」と、同じような悩みを持つ人々と慰めあっていたことがある。
しかしながら、文化のコンテクスト度という概念を知ってから、だいぶ考えが変わった。
「グローバルサイトの課題 組織・文化の壁をどう解消するか」でも触れたのだが、文化人類学者のE・ホールは、コミュニケーションにおけるコンテクストの依存の程度により、文化を類型化しているが、ビジネスの場面においても、非常に参考となる考察だ。
「コンテクスト」とは「背景、状況、事情、立場」のようなものと考えるとよい。
ハイコンテクスト文化とはコンテクストの共有性が高い文化のことで言葉そのものよりも、コンテクストから多くの情報を得て意思疎通を図り、日本がそれにあたる。
ハイコンテクスト文化では、明確な表現や主張を避け、状況から事態を察知することを好む。
対して、ローコンテクスト文化は、共有するコンテクストが少ないので、言葉による伝達を好む。アメリカがそれにあたり、論理的な飛躍を嫌い、直接的な表現を好む。
つまり、たとえ英語がいくら上手になったとしても、文化がハイコンテクストのままだと、言葉で情報を伝える(受け取る)術が弱く、ローコンテクスト文化に慣れ親しんでいる人々とは、コミュニケーションがとりづらいのだ。
英語が上手になりたい=日本語のように機微を表す豊かな表現力がほしいという欲求こそ、ハイコンテクスト文化の特長で、シンプルに誤解なく情報を伝えようというローコンテクスト文化に慣れ親しむことのほうが、英語でのコミュニケーション力を上達させる近道と感じる。
「TOEICの点数は高くないけど、話したいことが本当にあったら、伝わるもんなんですねぇ。」とおっしゃった方がいらっしゃったのだが、その方のほうがよっぽど私より、ローコンテクスト文化に親しんでいる(なじまざるを得なかった)ということだ。
素晴らしい!!
もっともコンテクスト度とは相対的なものなので、日本の中では、自分はローコンテクスト派だと思うのであった。