長いプロセスを経てロゴがやっと決まる(6)
「ロゴを目立つようにシンボルマークのみにして正方形の形にしたいのはわかったけど、どうして一方、細長い長方形にしたいの?」
ロゴのリニューアルプロジェクトの最中に「そもそも社名が長い!」としごくごもっともの意見を出したマーケ担当に、全体の形になぜこだわっているのか聞いてみた。
「うちクラスの知名度のB to Bの会社がシンボルマークのみというのはやはり現実的でないと思っています。やっぱり社名がなきゃ。社名を入れると社名が長いから、どうしても横に長くなりますよね。だったら、せめて縦には短くしてほしいんです。」
「どうして?そこまで全体の形の影響がある?」
「ありますよ。縦まで大きかったら、ロゴをとるスペースがかなり必要になります。おまけに、ロゴは入ればよいものではなく、きれいに見えなければ意味がないんですから。おまけに余白をとりたくデザインなんですよね。バナー広告に今のロゴを入れる時などナミダものです。それに、大里さん、ノベルティを作るの、好きですよね。それも予算少なめで少量に作るのが好きだから、ロゴを入れるのにお金もかけられない。小さいグッズなどロゴをプリントするスペースがないから、ノベルティ自体の選択も限られてきます。」
「細長くしたい」という発言はかなりのインパクトがあった。ロゴはアートではないから、その会社にあった使い勝手を考えることはもちろん大事。細長くというコンセプトを取り入れると、今あるロゴ候補が一挙に絞り込めるので長きにわたった議論も収束するかもという下心もあり。
「結局アークコミュニケーションズという社名をもっとも美しく見せたいということですよね。シンボルをほどこしたもののほとんどはARCで遊んでまるでcommunicaionsは付け足しのようにおいています。でもプロジェクト最初の頃に議論したように、今のうちの会社においてcommunicationsという言葉は重要な意味をもっていますものね。だったらデザイン上もArcと同じように重みをつけたほうがよさそうです」
その言葉でなぜこの社名にしたのか思い出した。詳細は省くが、「アーク」まではすんなり決まったのだ。アークで登記しようかとも一瞬思ったのだけど、この会社が何者かわかりづらいなぁとも思ったのだ。Arcから想像できる単語はいくつもあるのだが、Architect,Archiveのイメージがあり、うちのビジネスドメインがわかるようにしたほうがよいと考えた。solutionとかserviceとかglobalとか色々考えたが、VerbalとVisualとTechnologyのすべての意味合いを網羅するのはcommunicationsかなと思い、アークコミュニケーションズに社名が決まったのであった。
「それだったら、僕はいっそのことタイポグラフィーだけで勝負するデザインを出しますよ!」と立候補するものもいた。
それからも紆余曲折あったのだが、結局シンボルのデザインは行わず、タイポグラフィーだけで勝負するロゴに決まった。
当初作成した40を超えるデザインの中にはないデザインだったが、決まるときは案外すんなり決まるものである。