同じ話ばかりする人の通訳
中国語が全く出来ないまま北京に送り込まれ、2年ほど通信関連の仕事をしていたことがある。1992-1994年のことで、最後は武漢に支店を開き、日本人1人で生活していた。
その頃の話をしだすと止まらなくなるのだが、今回は、ビジネスシーンでの通訳のことを少々書きたい。
今から約15年前というと、グローバルな仕事をした経験のあるごく一握りの人を除けば、文革で大変な苦労をした後ドメスティックなビジネスを行っている人が、キーパーソンのほとんどであった。
少々乱暴だがステレオタイプ化すると、後者の方の話は基本的に長く、同じ話を繰り返し行う。(もちろん、英語は話せない)
私は中国語が話せないので、英語が話せる中国人を部下にしてもらった。彼らは本来営業であってプロの通訳ではないが、私と仕事をする上で、仕事の大部分を通訳として費やす。
ケース1:
顧客:「・・・・・・・・・」(と中国語で数分間一方的に話す)
A:英語で私に「基本的にさっきと言っていることは全く同じ」
私:「そりゃそうなんだろうけど、数分間も話しているのにたった一言で通訳を済ませるわけにもいかないでしょ。」
A:「そんなこと言ったって、同じだからね。僕もまた同じことを言うのは嫌だし、大里さんも、同じことを聞くのは嫌でしょう?」
私:「そうは言ったって、格好がつかないでしょう。気を悪くするんじゃない?」
A:「・・・・。それじゃぁ、今日泊まる所は、○○ホテルで、夕食は○○料理にしておいた。ここのレストランは蛇が有名。大里さんは何でも食べられるから、試してごらんよ。それから・・・・・・もうこれくらい長く英語で話せば十分かなぁ?」
ケース2
顧客:「・・・・・・・・」(と中国語で長々話し出す)
B:中国語で顧客に対し「そんなに長く話すと訳せないから、ちょっと待って。」
B:英語で私に「まずいよ、また同じ話を長々しだしている。大里さん、何か質問考えてよ。」
私:「それじゃぁ、どうせ知らないだろうけど市場における○○社の販売台数を聞いてみてよ」
B:中国語で「・・・・・」
顧客:「・・・・・・・」
B:私に向って英語で「あ~、また話が戻っちゃった。次の質問を早く考えて!」
相手の話をよく聞くのがコミュニケーションの基本とわかっていても、あまり意味のない話を長々聞くのは正直つらい。
外国人の私よりも、中国人の部下たち(彼らはごく一握りの人である)のほうが、はるかにつらかったであろう。
当時の私は「外国人だから」という免罪符でコミュニケーションに不適切なことがあっても許してもらえる特権があったから、不都合はあまりなかったような気がするが。
AもBも今も中国にいる。アメリカ資本の会社で働いているけど、現在はどのような通訳振りを発揮しているのだろうか。私も今ならもう少し上手に話を聞き出せるのだろうか?