IT技術についてのトレンドや、ベンダーの戦略についての考察などを書いていきます。

HTML5 への各社の対応の違い

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先々週のエントリでHTML5へのGoogleの取り組みについて書きました。

Googleが躍起になってPWAやAMPなどの技術を開発しているのは、このためとも言えるでしょう。

どこかで書いたと思いますが、「クラウドコンピューティング」という言葉を生み出したのは、Googleのシュミット(当時)CEOです。2006年のカンファレンス中のスピーチで使ったのが初めてと言われています。Googleのサイトに書き起こしが載っています。

What's interesting [now] is that there is an emergent new model, (中略) We call it cloud computing - they should be in a "cloud" somewhere. And that if you have the right kind of browser or the right kind of access, (以下略)

この中で、シュミット氏は新しいコンピューティングモデルをクラウドコンピューティングと呼ぼうと提案し、それにはブラウザまたは適切なアクセス手段でアクセスすると言っています。つまり、Googleが発想したいクラウドコンピューティングは、最初からブラウザによるアクセスを想定していたと言えます。

もちろんこのとき、SalesforceやAWSはサービスを開始していましたから、クラウドと言う形態や仕組みそのものをGoogleが定義したわけではありませんが、ネット上のサーバーにブラウザからアクセスするというサービスに名前を付け、一つのジャンルとして確立させたのはGoogleなのです。

WHATWGとは

ただ、当然ながらGoogleだけがこの動きに注目していたわけではありません。「Flashにとどめを刺したのはJobsだ」でも書いたように、インターネットの世界では、プロプライエタリを許容しない空気があったことも事実で、標準技術によるネット利用の方向性としてクラウドが生まれてきたという側面もあるわけです。そのような中で、2004年にWHATWGというコミュニティが誕生しました。HTML4を拡張しようとしないW3Cに反発した民間企業のエンジニア達が、次世代のHTMLを開発しようとして立ち上げたコミュニティです。これがGoogleのAjaxなどと組み合わさり、後のHTML5に繋がって行くわけですが、最初にこのコミュニティを立ち上げたのが、ブラウザ専業のMozilla、Operaと、なんとAppleだったのです。

HTML5にコミットしていたApple

Appleが2007年にiPhoneを発表したとき、Flashをサポートしなかったことは「Flashにとどめを刺したのはJobsだ」でも書きました。そして、iPhone発表当初はApp Storeも存在していませんでした。つまり、iPhoneの発表当初は、ネイティブアプリでは無くWebアプリ(≑クラウドの利用)を想定していたということです。iPhoneは世界初のモバイルクラウド端末だったということができます。そのために、JavaScriptをサポートしたフル機能のブラウザが搭載されていました。ここにもあるように、当初からHTML5の利用を想定していたのです。

当時世界最先端を行っていた日本のケータイに搭載されていたブラウザはJavaScriptのサポートは限定的で、独自のJava実装によってアプリの開発環境を提供しており、ネイティブアプリに近いものでした。

HTML5に消極的だったMicrosoft

このように、GoogleもAppleも新しいHTML(=後のHTML5)に積極的でしたが、Microsoftは少し違っていたようです。元々Microsoftはネイティブアプリ指向ですし、Windows95以降ほぼPC市場を独占したからには、独自技術でユーザーを囲い込むというのが戦略としては正しいからです。2001年に発表されたWindowsXPにはInternet Explorer 6(IE6)が搭載されていましたが、IE7の発表は2006年と、実に5年間もメジャーバージョンアップされていません。MicrosoftにとってWebブラウザはそれほど重要度ではなかったのかもしれません。Microsoftにとってみれば、自社の独占状態を脅かしかねないクラウドへの移行を積極的に助けるという考えが無かったとしても、不思議ではありません。

IE7にしても、IE6よりも進化したとはいえ、独自の拡張機能が残っていたり、JavaScriptのチューニングが不十分で実行速度が遅いなど、中途半端なものでした。Googleが2008年にChromeを出したのは、MicrosoftがIEの強化に消極的なことに業を煮やしたためとも言われています。Googleはさらに、IEをHTML5対応にするためのプラグインまで出したことがあります。動かないMicrosoft、どうしても動かそうとするGoogleの構図が見えて面白いですね。

戦略を変えたMicrosoft、Appleは?

FlashはiPhoneの大成功が一因で終了に追い込まれましたが、Microsoftもまた、大きな影響を受けました。PCの出荷台数は信悩み、スマホへの転換はうまくいかず、クラウドへの転向を迫られたのです。

Microsoftは戦略を大転換し、最近のMicrosoftのオープン化戦略・クラウド移行は効を奏しています。Windows10ではIEを捨ててEdgeというHTML5対応の新設計のブラウザを標準としました。

その一方で、PWAへの消極的な態度もそうですが、AppleはHTML5から距離を置き始めているように見えます。HTML5の機能やパフォーマンスがまだ不十分なこともあるでしょうが、App Storeが収益の柱として育ってきたこともあるのでは無いでしょうか。以前のMicrosoftと同様、高いシェアを撮ったからには独自技術で囲い込む方が戦略としては正しいのです。

元々AppleはMicrosoft以上に自社技術への拘りが強い会社です。iPhoneの成功とクラウドへの普及は、MicrosoftとAppleの立場を逆転させただけ、ということなのかも知れません。Microsoftは戦略の転換で息を吹き返しました。そういえば、Microsoftはインターネットの普及のときも波に乗り遅れかけたことがありました。戦略の転換が上手な会社と言えるのかもしれません。

成長の鈍化が指摘されるAppleですが、今後どのように戦略を転換していくのか、9月の発表が注目されます。それにしてもGoogleはぶれませんね。

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