ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

今さら聞けないカスタマー・ジャーニー

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ITに強いビジネスライターの森川滋之です。

主にIT企業のホワイトペーパーやWeb記事、IT企業経営者がブランディング目的で出版する書籍制作支援等をやっています。

ここ最近は、アナリティクスとかAIとかそんなテーマの依頼が7割ぐらい(収入でいえば8割ぐらい)を占めています。

AIの詳細な技術とかデータサイエンスなどについて書くのであれば、僕よりもふさわしい人がたくさんいます。しかし、エンタープライズ・ビジネスへの応用ということになると、経営とかマーケティングとか業務とか経営コンサルタント的な知識が必要になり、書ける人があまりいないのか結構ご依頼をいただきます。

また元々はITインフラ屋だったので、データ基盤の構築とかDWHやデータレイクなどのデータ周りの、ビジネスパーソン向け技術解説記事の依頼もよくいただきます。

そういうことをやっているので、現時点でビジネスでのAIの応用事例が多いのは何かも知っています。

それは、コールセンターなどの問い合わせ対応、不正検知やロボットトレーダーなどの金融系、プレディクティブ・メンテナンス(予防保守)などのIoTとの連携、そしてWebマーケティングへの応用です。

いま先進企業がAIを活用して取り組んでいるのはだいたいこのあたりです。昨年2016年ではほとんどがPoC(概念実証)レベルでしたが、今年になってビジネス事例と言えるものが飛躍的に増えました。

● カスタマー・ジャーニーと聞いて、ふと浮かんだ松本伊代

ある取材で、楽天がいかにWebマーケティングに取り組んでいるかという講演を聴いていたときのことです。

見覚えのない言葉が、突然スライドに映し出されました。

「カスタマー・ジャーニー」ーーなんやそれ?

楽天なので「楽天トラベル」の事例解説を始めたのかなと思ったのですが、どうも違うようです。

しばらく聞いていてマーケティングの概念だということは分かってきました。

実はそれより先に「センチメンタル・ジャーニー」という言葉を思い出してしまい、脳内で「伊代はまだ16だから」という歌詞がヘビロテしたのでしたが。

ただ、その続きの「何かにさそわれて あなたにさらわれて」という歌詞は、ある意味カスタマー・ジャーニーの本質を突いているかなとも感じます。この歌詞は「何だか知らないけど気づいたら旅に出ていた」という意味合いだと思うのですが、カスタマー・ジャーニーの目的は「顧客が、何だか知らないけど買っちゃった」というところにあるからです。

● AIDMAなんかもカスタマー・ジャーニー?

カスタマージャーニーというのは顧客の購入プロセスのことだなと何となく分かったのですが、やはり知らない言葉は気持ちが悪い。早速スマホで調べてみたら、「顧客がどのように商品やブランドとの接点を持って認知し、関心を持ち、購入や登録に至るのか、というプロセスを旅に例えた言葉」と書いてありました。

すると次の疑問は、「AIDMAとかAIDCAとかAISASとか『消費者の購買意思決定プロセス』と呼ばれるものが昔からある、これらはカスタマー・ジャーニーではないのか?」というものでした。

これについては最近分かりました。『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』という本を買ったからです。

これに「カスタマー・ジャーニーを説明するフレームワークのひとつで、早い時期に打ち出され、広く使われているのがAIDA」と書いてありました(P93)。なお、海外ではAIDMAのMを外してAIDAということが多いんだそうです。確かに"Memory"っているの?と思います。

しかし、カスタマー・ジャーニー自体は新しい言葉だと思います。初出がハッキリしないのですが、昔はこんな言葉を聞きませんでした。2009年8月発行の『グロービスMBAマーケティング[改訂3版]』(ダイヤモンド社)には出てきません。横文字大好きのグロービスが、こんなインパクトのある言葉を書き逃すはずがありません。

AIDA等の「消費者の購買意思決定プロセス」はカスタマー・ジャーニーに似て、実は非なるものと僕は考えます。

これらは企業側から仕掛けていく企業主導マーケティング時代の言葉ですが、カスタマー・ジャーニーからは顧客主導な感じを受けます。しかも「ジャーニー」というぐらいですから、ワクワクして買い物をしている感じまで伝わってきます。顧客主導とワクワク感が「カスタマー・ジャーニー」という言葉に込められているのではないでしょうか。

● カスタマー・ジャーニー・マップ

さて、カスタマー・ジャーニーを知る人が思い浮かべるのは、AIDAやAISASといった手垢がついていそうなモデルではなく、カスタマー・ジャーニー・マップでしょう。

こんな感じのやつです(左の「こんな感じのやつ」をクリックすると画像が出ます)。

具体的なペルソナを決めて、その人が購買に至るまでの体験を洗い出して、時系列に並べるものです。

カスタマー・ジャーニー・マップを見ながら、顧客接点(タッチポイント)を洗い出し、主要なタッチポイントでどういう仕掛けをするかを考えます。

BtoCであれば、顧客の買いたい気持ちなんて一瞬で現れては消えていくものですから、「瞬間性」が非常に重要になります。たとえば店舗の近くを歩いているのを検知したら、クーポンを送るといった仕掛けを作らないといけません。

かといって、顧客属性やそのときの行動や感情を踏まえずに送ってもウザいと思われて接続を絶たれる怖れがあるので、むやみに送りつけてもいけません。この「接続を絶たれる」というのが、昨今の企業が最も怖れることですから、特に注意が必要です。

そこで顧客の属性、行動、感情などを見極めて、適切なタイミングに適切な情報を送るためにAIが活用されることになります。そして、ビッグデータを分析したり、AIに学習させるための仮説が、カスタマー・ジャーニー・マップということです。


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