ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

まだまだ難しいChatBot

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自分を人間と偽れるコンピュータ(プログラム)が出てきましたが、本当の意味で会話するコンピュータはまだ先――なんだそうです。


ITに強いビジネスライターの森川滋之です。固有名詞はほとんど出せませんが、実際の取材や調査で得た知見をお伝えしています。

先日、Google Cloude関連の取材で、Googleのパートナー企業の社長A氏にAIの話を伺いました。

Googleといえば、「Googleの猫」でディープラーニング・ブームを巻き起こし、「アルファ碁」で人間の囲碁のチャンピオンを打ち負かしたDeepMind社を傘下に持ち(※)、「シンギュラリティ」で有名なレイ・カーツワイル氏をAI開発の総指揮者にしているというAI界の雄と言える企業(グループ)です。

※正確には、持ち株会社であるAlphabet社の傘下です。

カーツワイル氏が言っている「シンギュラリティ」というのは、コンピュータが人間の知能を超えるという意味も含みますが、しかしそれだけではありません。ましてや、AIに仕事が奪われるなんていうのとは程遠い話です。

どんなものか知りたい方は、彼の著作『シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき』を読むことをお勧めしますが、500ページを超える大著なので読むのは大変です。手っ取り早く知りたい方は、Wikipediaの「レイ・カーツワイル」の「未来予測」という項を読んでみてください。頭がクラクラしてくると思います。

まあ、ほとんどの人が「荒唐無稽」と思うでしょう。しかし、カーツワイル氏をAI開発の総指揮者にしているということは、Googleは本気でカーツワイル氏の未来予測を実現しようと考えているのだと思います(僕の憶測ですが)。

A氏もシンギュラリティが(カーツワイル氏の話通りではないとしても)来ると信じています。Googleをよく知る彼は、Googleならやれると考えています。

いずれにしろ、すごいことをやっているGoogleのパートナーで、AI関連開発もやっているA氏ですが、AIで難しいのは意外なことにChatBotだと言います。

SiriやOK Googleに慣れている人は、人間とコンピュータが会話するなどということは、もうとっくに実現していると思うかもしれません。

しかし、本当の意味で自然な会話をするために一般常識が必要になります。一般常識は多岐にわたっていて、それらを全て学習させるのはかなり難しい。また時代によって常識も変わります。

すごく卑近な例を出すと、「爆笑する」という意味で「草生える」という人がいます。ネット語ですが、結構多くの人が知っていると思います。

しかし、Google翻訳に「太郎の話がおかしくて、草生えた」と入れても、"Taro's story is strange and grew grass."としか訳してくれません(あれ?過去形になっていないw)。「草生える」に「爆笑する」という意味があることを知らないということです。

まあ「草生える」を知らなくても業務上の支障はありませんが(たぶん)、とはいえ、この手の「常識」はどこまで教え込んでいいかもよくわからない部分があり、なかなか人間と話すレベルで話ができるChatBotを開発するのは難しいわけです。

コンピュータが知能を持っているかどうかを判定するテストにチューリングテストがあります。音声だとさすがにハードルが高いので、テキストベースで会話し、会話相手がコンピュータではなく人間だと審査員の3割が判定すれば合格です。

3割とはハードルが低いと思うかもしれませんが、2014年まで合格するコンピュータはありませんでした。

初の「合格者」は「ユージーン」という人工知能です。審査委員の33%が人間だと判定しました。

ただ専門家から多数の物言いがつきました。設定がせこいというのですね。「ユージーンは、13歳の英語ネイティブでない少年」という設定が、です。

これについては、僕はこちらの意見に賛成です。チューリングテスト自体が知能や知性の判定という意味では不十分だが、人間をだますことができるコンピュータが登場したという意味では画期的なことなのだという意見です。

「一般常識が足りなく、言葉もたどたどしい」という設定なら「人間らしい会話」ができるコンピュータが出てきました。しかしながら、「13歳の言葉がたどたどしい外国人の少年」に業務が務まるかといえば無理です。

独力で業務が務まるChatBotが出てくるのはまだまだ先でしょう。ただ10年もかからないかもしれません。コンピュータが人間に碁で勝てるまでには10年以上かかると考えていた専門家がほとんどだったわけですから。

なおA氏によれば、「一般常識」を教え込むためには、脳を模倣したコンピュータに人間の子供と同じようなやり方で教育を施す必要があり、それには量子コンピュータがブレイクスルーになるだろうとのこと。Googleは、その量子コンピュータを今年中に実演すると言っています。


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 97ページ分(全体の44%)読めますので、お暇ならどうぞ。
 ただ電車で読むのはお勧めできません。


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