ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

「新規開拓の神様」のすごいアポ取り

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あなたが新商品担当営業あるいは起業したての経営者だったしたら、新規先のアポはどうやって取りますか?

要するにあまり実績のない段階でのアポ取りです。

Webサイトを充実させて問い合わせを待つ。それはいい作戦ですね。でも、取扱い商品の販売実績がない段階では難しい(ただ、これは必ずやりましょう)。

名簿があれば、それに片っ端から電話したり、同報メールを送るのも手でしょう。ただ確率が低いのはご存知の通り。

cover_s.png紹介が最も確実です。しかし、紹介先は全て営業しつくしてしまった...、などということはしばしばあります。

私自身、「売れない営業マン」を1年足らずやっていた時期がありますが、辞めた理由は行き先がなくなってしまったからです。

営業パーソンや中小企業経営者、自営業者で、新規開拓のアポ取りのいい方法があったら教えてほしいという方は多いのではないでしょうか?

そこで、「新規開拓の神様」という異名のある吉見範一さん(2月22日発売予定の拙著『奇跡の営業所』の主人公のモデル)に教えてもらった方法をお伝えしましょう。

業態によって成功確率は違うかもしれませんが、ヒントにはなると思います。

● 受託開発ソフトをパッケージ化したのだが・・・

私は一時期、吉見さんと一緒に営業コンサル事業をやっていたことがあります。コンサルタントは吉見さんで、私はプロデューサー&エージェントという立場でした。

吉見さんが講師を務める安価なセミナーで経営者を集めて、無料相談に申し込んでくださった方とお会いして提案する、という流れで仕事をいただいていました。吉見さんほどの実績があれば、私でもこのぐらいの営業は可能です。

あるとき、社員30名ぐらいの小規模なソフトウェア受託開発企業(A社とします)の社長から相談がありました。

守秘義務等の関係で細かいことは書けませんが、A社は元請であるZ社から、ある企業向けのシステム開発を請け負いました。幸い仕事はうまくいき、エンドユーザーから好評をいただいたので、Z社からA社に次のようなオファーがありました。

「先日納品したシステムをパッケージソフト化してほしい。それを一緒に売ろう。A社さんで売った分からはマージンは取らない。うちが売った分は4割のマージンをいただく。開発費はA社さんで負担してほしい」

よくある話です。A社社長は迷いましたが、受託開発だけで経営するのは難しい。多少Z社に有利な条件だとは思いましたが、やってみることにしました。

開発には数百万円の投資をしましたが、蓋を開けてみると売れません。Z社は早々に諦めてしまい、A社社長のもとには売れないパッケージソフトだけが残ってしまいました。

そこで、我々に相談があったというわけです。

● 商品説明資料を一生懸命作っても売れない

A社は基本的に開発エンジニアしかいません。今まで紹介とリピートで受託開発の仕事をもらってきたので、客先で渉外をするプロマネ的なエンジニアはいますが、パッケージソフトの新規開拓の経験はありません。その上、彼らは忙しい。

そこで、社長自ら売りに行きたいというのです。

社長からの最初の具体的な要望は、「商品説明資料を作ったのだが、それに対するアドバイスが欲しい」ということでした。

それは、IT企業が作りがちな「商品の機能とメリットを書き連ねた資料」でした。

吉見さんと私の意見は同じでした。「これをいきなり持っていても、売るのは難しいでしょうね。そもそもアポが取れないのではないですか?」

「そうなんです。なかなかアポが取れないし、取れたとしても『考えておきます』で終わりなんです」とA社社長。

売れない営業マン時代の私と全く同じです。私は沈黙してしまいました。

そのときの吉見さんのアドバイスは「こんなのはじめて聞いた」というものでした。

● 商品説明ではアポは取れない

「社長が営業をされる立場だったら、いきなり商品説明をされるのは嫌ですよね?」と吉見さん。

「ええ。もちろんです。ですが、自分でやるとなるとそれしか思い浮かばないんですよ」

「分かります。みなさん、同じ『失敗』をされていますからね。ですがやり方はあります」と言ってから、吉見さんは次の通りのアドバイスをしました。

  • その商品を使わないと生じるはずの不利益に関する新聞記事やネット記事を集めて資料にする
  • その商品を欲しそうな業種を1つ決めて、電話でアポを取る
  • アポを取る際には、「こういう商品のニーズ調査をやっています。御社では既に何らかの商品を入れていますか?」と切り出す
    • Yesなら「その商品についていろいろと教えてください」とお願いする
    • Noなら「現在どのように業務対応されているか教えてください」とお願いする
  • 面談の時間は30分ぐらいで依頼する
  • 決めた業種を一巡したら、次の業種に行く
  • 聞けた話は、資料に追加する

ポイントは、けっして「商品について説明させてください」と言わないことです。それだと売り込みとしか思ってもらえません。会いたいと思う人はほとんどいないでしょう。

しかし、人は「教えてください」というお願いには弱いのです。よほど忙しい人でなければ、対応してくれます。もちろん全員ではありませんが、「商品について説明したい」とお願いするのに比べれば成功率は1桁違うはずです。

● 実際にアポが取れた

吉見さんはこのようにアドバイスしたのですが、私は半信半疑でした。こんな簡単なことでアポが取れるなら、私の1年足らずの売れない経験はなんだったんだろう――。

ところが1週間後、「A社社長からアポが取れたので次はどうしたらいいか教えてほしい」と連絡があったのです。

それも、アドバイスしたこちらが驚くような超有名企業でした(その後、これ以外の有名企業とのアポも次々と取れたのです)。

吉見さんのアドバイスは以下の通りでした。

「最初に『その商品を使わないと生じるはずの不利益に関する新聞記事やネット記事』を見せながら、『御社ではこういうことの対策は取られていますか?』と聞いてみてください。

おそらく何らかの対策は取られていると思うので、それを熱心にメモしながら、業務のやり方などを詳しく聞き出します。最後に現在困っていることと、その業務にかけているコストについて聞き出してください。

そこまで聞き出せたら、『より良くより安くできる提案ができると思うのですが』と言って、次のアポを取ってください。取れないところはあきらめたほうがいいでしょう。ただ、得られた情報は他の会社で使えるので、次回訪問がなくても無駄ではありません

「ところで、業種を絞るのはなぜですか?」

「何社か回るうちに、その業種に精通したプロと相手が思ってくれるようになるからです」

なるほど。トップ営業はこのようにして新規開拓していたのだと、私は大いに感心しました。そして、売れない営業マン時代に知り合えていたらなあとつくづく思いました。

● 初心者同然の営業スタッフにも同じことをやらせた

吉見さんは、全国100ある営業所の中で最下位だった営業所を半年で3カ月連続ダントツの1位にした実績があります。

そのときに、その営業所の派遣スタッフにやらせたことも実はこれと同じことでした。

詳しくは、拙著『奇跡の営業所』に書きました。

※現在、「はじめに」から第1部の終わり(P97)までPDFで無料で読むことができます。読みたい方はこちらから。

同じような営業テクニックについては他にも、同書の「解説編」にいろいろと書いてあります。

営業パーソンや中小企業経営者、自営業者で売り方が分からない、あるいはもっと売れるようになりたいという方はぜひお読みになってください。必ず何らかのヒントが得られると思います。

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