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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

好きなことを仕事にすべきか?

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企業系のITに強いビジネスライターの森川滋之です。

今年度から「小規模事業白書」が発行されるようになりました。僕は以前「中小企業白書」を元ネタにしたコラムを日立システムズさんのサイトで書かせてもらっていたので、何だか感慨深いものがあります。

「小規模企業白書」の概要編のほうを流し読みしました。なかなか興味深いです。

その中に、日経新聞にも取り上げられていた、下記のような記述があります(「2015年版 小規模企業白書について(概要)」P21より)。

  • フリーランスは、「自由度・裁量」、「内容・やりがい」、「生活との両立」については、満足する傾向にあり、これらの回答が6割を超える。
  • 他方、「社会的評価」や「収入」については、満足する傾向が少ない。

「社会的評価」や「収入」についてはオブラートに包んだ書き方をしていますが、実態はそれぞれ19.2%と14.5%です。

個人事業主の手取り年収で300万円までが6割強(同書P8)ですので、満足する人が少ないのもうなずけます。実際には、生活費の結構な部分を「経費」にしたり家族の給料にしたりしている人もいるので、額面通りではありませんが、多くのフリーランスが金持ちでないのは事実です。

ですので、好きでないとやっていられないと思いがちですが、本当にそうでしょうか?――というのが、今回書きたいことです。

● やりたいことよりできること

以前、自分軸を作るための支援をしていたことがありました。その頃に独立したいという人からよく聞かれたのは、「やりたいこととできることが違う場合、どちらをやるべきでしょうか?」ということでした。「やりたいこと」は「好きなこと」と同義と捉えていいと思います。

当時は、「まず、できることをやりましょう。そのうち好きになります」と答えていました。今も基本姿勢は変わりません。理由は、「できること」のほうが誰かの役に立てる可能性が高いため、早く結果を得られる可能性も高いからです。

結果を得られ続けるようになれば、ほとんどの場合それは「好きなこと」になります。また、生活が安定すれば、当初「やりたい」と思っていたことにチャレンジすることもできます。

まあ、「大人の意見」だと思うのですが、でも、人間の心というのはそれほど単純ではないのです。

● うろうろしたが後悔はない

僕は、独立した当初は、企業に常駐するITコンサルタントをやっていました。報酬はとても良く、社会的評価も高く、仕事の究極の目的は税金の無駄遣いを抑制するということだったので社会貢献もしていたと言えます。

しかし、そのうちに「これは本当にやりたかったことなのだろうか?」と思い悩むようになり、鬱寸前までいってしまいました。

それでITコンサルタントの仕事は辞めてしまい、その後はいい歳して何年も「自分探し」を続けてしまいました。

何年もさまよい続けて、結局「できること」を始めました。今の仕事です。そして、まだまだ将来に不安を抱えつつも何とか一息ついているというのが現状です。

「もっと稼げる仕事を捨ててバカだね」という友人もいますが、不思議と後悔はないのです。

自分で選択したことだからしかたがないわけで、それを後悔するのは迷惑をかけた人たちへの最大の非礼だということもあります。

しかし、後悔していない理由はそれ以上に、やらなかったら余計後悔していたと思うからです。

ものにならなかったことやベストを尽くせなかったことばかりでしたが、それはやったから分かることです。あの可能性もあった、この可能性もあったなどと死ぬ前に後悔するのは、考えただけで怖ろしい。

ですので今、「やりたいこととできることが違う場合、どちらをやるべきでしょうか?」と聞かれたら、無責任かもしれませんが「直感で決めればいいです」と言います。

うまくいけば万々歳だし、僕のように失敗しても意外と今の仕事に役立っています。

● 手応えが重要

とはいえ、続けるという意味では大事なことがあります。それは、「手応え」です。

先ほどの引用の中の、"「自由度・裁量」、「内容・やりがい」、「生活との両立」"も、手応えそのものであり、6割から7割の人がこのように感じているからこそ、貧しくても続くと言えます。

では、「手応え」とは何でしょうか?

下は、先日執筆した日経SYSTEMSの特集記事の下絵です。元ネタは、図にある通りです(この図は、僕の主観で僕の言葉で書いていますので、興味のある方は原著をお読みください)。

2015051401.png菊入さんは、「モチベーター」という言葉を使っておられますが、このモチベーターが僕のいう「手応え」です。

「報酬は、手応えにはならないのか?」という疑問に対しては、「周囲から期待され評価されている」の一部だと答えておきます。

これは(菊入さんではなく)僕の考えですが、図の9つのモチベーターをまず3つのレベルに分けるといいです。

妥協できないこと、ケースバイケースのこと、どちらでもいいことの3つです。そして、それぞれに3つずつモチベーターを割り当てていき、それをベースに意思決定するようにすれば、余計なストレスから解放されます。

フリーランスでなくても同じです。すぐにやる気がなくなるという方は、試す価値があると思います。

▼「ITに強いビジネスライター」森川滋之オフィシャルサイト

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