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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

プロフェッショナル・ブロガーは事業家

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2015031502.png前回予告した通り、「プロフェッショナル・ブロガーへの取材」に基づいて、「ブログ・ビジネス」について書きます。

月間PV数160万を誇るブログ「No Second Life」をベースに、執筆・セミナー・コンサルティングなど多方面で活躍している立花岳志さん(写真)にお話を伺いしました。

立花さんはブログをベースに高収入を稼ぎ出している人ですが、下の対談を読んでもらえれば分かるように、至極真っ当なビジネス・パーソンです。ブロガーに対する印象が変わる人もおそらくいるのではないでしょうか?

対談形式ですが、話の順序等はアレンジしています。対談したのは2月9日、場所は北千住のデニーズです。

●自分の人生を良いほうに劇的に変えた

森川:「No Second Life」って、いろんなことが書いてあるじゃないですか? 元々はiPhoneなどガジェットやアプリの話とダイエットの話が中心だったと思うんですが、今はどういうブログと捉えたらいいんでしょうか?

立花:元々僕の中には自分のすべてを数値化して記録したいという欲求があるんです。たとえば、体重は何キロだったとか、何歩あるいたとか、年に何冊本を読んだとか。そういうことを、自分では「呼吸をするように」ブログに書いているのですが、要するに人生の記録なんですね。だから、数字だけでなく、旅行したとか食事に行ったとかそういうことも紹介しています。

森川:それで読者が多数いるというのは、ある意味不思議ですね。

立花:それはもちろん自分のためだけでなく、人のために書いているというのがあるからでしょう。僕自身、どん底の時期があり、そこから這い上がってきました。「自分の人生を良いほうに劇的に変えた」というのが自分の強みであり、「いろんなことにチャレンジして自分のものにする」というのがブログのコンセプトなんです。

森川:借金・肥満・離婚などという事態がいっぺんに重なった時期があったとは、今の立花さんを見ていて想像できませんもんね。肥満どころか、今ではフルマラソンを完走するようになった。借金どころか都内の一等地で、再婚相手と仲睦まじく文化的な暮らしをしている。今の立花さんのライフスタイルに憧れる人は多いように思います。

立花:じゃあ、僕自身に特別才能があるかというとそうではなく、iPhoneのアプリ等を上手に活用しながら、悪い習慣を捨てて、良い習慣を身に着けるようにしてきただけ。同じアプリを同じように使えば、読者も簡単にまねすることができ、実践できたと喜んでくれています。

●炎上マーケや安易なタイアップはしない

森川:最近はPV数はどうなんですか?

立花:そうですね。以前よりもPV数にはこだわらなくなりました。アフィリエイトやGoogle AdSenseなどのオンライン広告の収入もあるので、あまりPV数を減らすわけには行かないのですが、目先のPV数を狙った記事は書かなくなりました。

たとえば、ガジェットに関してはそれなりに認められているので、関連記事を書けば大幅にPV数が伸びます。しかし、今日は何キロ走ったなどという記事は、やはりPV数は伸びません。それでも書くのは、「立花は走る人」だという認知をしてもらいたいからなのです。それがブランディングにつながってきます。ブログというのは、やはりブロガーという個人につくものなので、ブランディングについては、かなり真剣に考えてきました。

森川:立花さんのブランドというのは?

立花:先ほど言った、「いろんなことにチャンレンジして自分のものにしながら、人生を劇的に良い方向に変えた人間」ということですね。なので、「炎上マーケティング」や「安易なタイアップ」は絶対にしません。ブランドに傷がつくだけだからです。

●世間で言われている「プロフェッショナル・ブロガー」とは違うのかもしれない

森川:ブランドの一部になるのかもしれませんが、肩書きについてはいかがですか?

立花:現在は「作家、プロフェッショナル・ブロガー」と名乗っていますが、見直そうと思っています。実は、新しいビジネスにも挑戦しようと思っていて、肩書きを模索しているところなんですよ。

森川:ビジネス全般については後で改めて伺うとして、「プロフェッショナル・ブロガー」と呼ばれる人は多いのだけど、立花さんはユニークじゃないかなと思うんです。なんとなくネット色が強い人たちとは、別人種のように見えます。

立花:世間で言われている「プロフェッショナル・ブロガー」とは少し違うのかもしれないと思うようになりました。「ピュア・ブロガー」という言い方もするのですが、ブログそのもので稼ぐ人のことを「プロフェッショナル・ブロガー」と呼んでいるような気がします。

森川:と言いますと?

立花:つまり、アフィリエイトやオンライン広告等の収入が僕の感覚では8割かな? この辺を超える人たちですね。その中でPVを稼いでいる人からは、出版の機会を得て作家兼業になる人も出てきます。

ところが、僕の場合は、ブログから集客しているセミナーの収入の割合がとても大きいんですよ。そうなると、少なくとも「ピュア・ブロガー」とは言われない。

まあ、こんな区別はどうでもいいことかもしれませんが、おっしゃる通り肩書きはブランドを象徴しますので、これには気を使います。

●プロ・ブロガーは事業家

森川:ブロガーの世界での定義もいろいろとあるんでしょうが、ブログで稼いでいない、つまり「アマチュア・ブロガー」の僕から見ると、プロ・ブロガーってまさに事業家だと思うんですよ。そこがライターとの違いかなと。

ライターというのは職能、つまり言語化能力を提供するという意味では誰でもなれますが、一方職業と考えるとカメラマンのような「専門職」であり「事業家」とは違うものだと思うんですね。まあ、それこそどうでもいい区別かもしれませんが(笑)。

立花:少なくともブロガーに関しては、おっしゃる通りだと思います。先ほどの「ピュア・ブロガー」にしたって、それで食べられる人たちは、やはりビジネスのことをきっちりと考えています。僕の場合も、多角的にビジネスを営んでいる実感があります。

森川:僕が思うに、立花さんの事業はこんな図に表せると思うのです(下図。なお、取材当時は、コンサルティングとオンラインサロン、およびメルマガはまだ始めたばかり、あるいはこれから始めるとのことだった)。

2015031501.png

立花:まさにこんなイメージです。どれもブログをベースに派生してきたビジネスだと言えます。

●次にしたいのが人の育成

立花:この図でいうところのコンサルティングがこれからやりたいところなのですが、今のところ「情報発信コンサルタント」という肩書きを加えようと考えています。

森川:「ブログ・コンサルタント」ではないんですね?

立花:はい。そうでない理由は、今後はブログだけでなく、メルマガ・動画などメディアミックスでの情報発信をしていこうと考えているのが1つ、またコンテンツの作り方だけでなく集客などについても支援したいと考えているのがもう1つですね。

森川:なるほど。しかし、またどうしてコンサルタントに?

立花:ずっとセミナーをやってきたわけですが、やっぱり一部にブロガーがセミナーや研修をやるの?と、疑問符を投げつける人もいるんですね。僕自身も、ブロガーが研修をやるのはすわりが悪いと思っているのも事実でして、一方コンサルタントが研修をする分にはしっくりきますよね。だったら、いっそコンサルタントを名乗ってしまえと思ったのです。

森川:僕もコンサルタントをやっていましたが、挫折経験があるのでちょっとうまく感想が言えません。ただ、失敗したからこそ志望動機が気になります。研修をするのにちょうどいい肩書きだというだけならやめたほうがいいと思うんです。

立花:僕はブロガーとしてずっと情報発信してきたわけですが、今度は情報発信をする人を育成したいという気持ちがとても強くなってきているんです。しかし、今まで情報発信そのものについてはほとんど語ってきませんでした。そこで、新たに「情報発信コンサルタント」という肩書きを付け加えて、それを語ろうと思ったんです。

森川:それは、先ほどの図とは矛盾しないんですか? 「ブログ」と同じレベルで「コンサルティング」という大きな円が出てくるイメージもあり得ると思うのですが。

立花:いいえ。あくまでベースは「ブログ」です。ブログに「情報発信」というジャンルを追加し、「コンサルタントである立花岳志」が語っていくというスタンスを取ろうと思っています。

森川:コンサルタントがブログを書いてアルファ・ブロガーになるという例はいくつもあるようですが、プロ・プロガーがコンサルタントとして成功したという事例を、僕は知りません。興味深く見守らせていただきたいと思います。

今日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうござました。

(森川追記)3月から始まった立花さんの個人コンサルティング事業は順調な滑り出しでかなり先まで予約で埋まっているという。相談者の声も一部公開されているが好評のようだ。

2015031503.pngブロガーとライターは似て非なるものと再認識しつつも、ライターにも見習うべき点はたくさんあると思いました。

特にブランディングやそれを含むマーケティングに関しては、ライターもおろそかにしていては、やっぱり食べていけないと思うのです。単なる「日本語の職人」では仕事は来ません。

一方で、たとえば「ある一定水準以上の文章を、ものすごく早く書ける」というようなことが認知されていると、結構きつい仕事が多くなりますが(笑)、その分高い報酬の仕事が来るというようなこともあります。

ただ、立花さんクラスの「事業家」になってくると、これはもはや経営者と同じレベルで(実際、立花さんは会社員時代に、社長の右腕となって会社の事業を立て直した経験があります)、専門職としてのライターがここまで目指す必要はないと思うのです。しかし、専門職というよりは、今どきの新しい事業を目指すのであれば、立花さんの本やブログはとても参考になります。

▼ビジネスライター森川滋之オフィシャルサイト

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