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犬の混合ワクチンの接種目的や接種頻度について

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私が獣医であることを知った人からよく受ける質問の1つが、

「ワクチンって毎年うたないといけないんですかね?」

というものです。

まず、整理しなければならないのは、対象となる動物およびワクチンの種類です。

ここでは、話の混乱を避けるために、対象となる動物を「」に限定して説明します。

なお、本記述は、獣医師としての個人的見解ですので、あらかじめご了承ください。

さて、

獣医業界で「(犬の)ワクチン」と言えば、一般に、

  • 狂犬病ワクチン
  • 混合ワクチン(6種とか、7種とかそういうやつ)

の2つを指します。

で、まず、狂犬病ワクチンについてですが、これは、その接種が法律で定められていますので、

狂犬病ワクチンは毎年1回、必ずうたないといけません。

ちなみに法律とは、「狂犬病予防法」というもので、その5条の1にて、

犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。

と定められています。ちなみに接種だけでなく、そもそも飼育登録や注射済書を犬につけておくこととセットになっていますので、法令遵守を目的とするなら、接種だけでなく、そのあたりにも気をつける必要があります。

次に、いわゆる混合ワクチンについてですが、これは法律で接種を義務づけられているわけではありませんので、

混合ワクチンは必ずうたなければならいものではありません。

あくまでも、飼い主さんの任意です。とはいえ、そもそも接種すべきか迷っている人に「任意ではありません」という説明は、説明になっていないでしょう。という訳で、個人的な解釈で接種目的について説明しますと、「混合ワクチン接種」には大きく下記の2つの目的があると思います。

  • 病気の予防
  • 接種証明書の取得

また、うたないという選択肢を検討する材料としては

  • 費用が高い
  • 法的義務はない
  • 接種にアレルギーなどのリスクがある

などがあるげられるかと思います。まあ、費用、法的義務はさておき、リスクについては、気になる方もいるかと思いますので、その件は、別途記事として改めて記述したいと思います。

まず、病気の予防についてですが、ワクチンなので、当然、病気の予防効果はあります。飼い主の方はよくご存知だと思いますが、予防できる病気の種類により、3種くらいから、9種くらいまでのワクチンがあります。それぞれの病気については、今回は説明をしませんが、犬において感染の可能性が高い、あるいは、リスクが高いジステンパーやパルボウイルスなどに起因する疾患予防が可能です。メーカーにより、若干対応する疾患が異なりますので、詳しくはメーカーHPか、かかりつけの獣医さんに聞いてください。

接種頻度ですが、日本では慣習的に1年に一度となっているようです。

ですので、仮にうつとしても、

1年に1回うたななければならないものではありません。

海外では、3年に1度という慣習のところもあるようです(私は海外で獣医師として従事したことはないので、わかりませんが)。ちなみに、世界小動物獣医師協会?(WSAVA)というところが「GUIDELINES FOR THE VACCINATION OF DOGS AND CATS(2007)」の中で、主たるワクチンの再接種に関して、

Revaccination (booster) at 1 year, then not more often than every 3 years

と記述しているので、そういう文化はあるのだと思います。

時折、

「日本の獣医は、3年に1度でいいワクチンを毎年打って暴利をむさぼっている」

的なことを言われるときがあるのですが、個人的な感想としては、

獣医はそこまで考えて仕事していない(そこまで気が回っていない)

と思います(もちろん、悪徳?獣医がいないとはいいませんが)。

日本で1年に1回なのは、「狂犬病ワクチン」の文化を引き継いでいるのでそうなっているだけだと思います。暴利をむさぼるなら、1ヶ月に1度と言ってもいいじゃないですかね。

ちなみに、「狂犬病ワクチンの年1回の接種」についても、

「既に日本で撲滅された病気について義務づけ、獣医が暴利をむさぼっている」

と批判されることがあるのですが、先ほど紹介した狂犬病予防法が施行されたのは昭和25年で、まだ、小動物臨床医がビジネスとして確率する前の話であり、少なくとも獣医が暴利をむさぼるために作ったものではないでしょう(ほとんどの先生が生まれる前だと思うし)。そう言うと、

「役割を終えた古い法律を残して暴利をむさぼっている」

と言われるかもしれませんが、ちなみに「狂犬病予防法」の管轄省庁は「厚生労働省」であり、獣医事を担当する「農林水産省」ではありませんので、残念ながら我々獣医師の手の及ぶところではありません。ちなみに、管轄が厚労省ということは、「狂犬病予防法」は、人を狂犬病から守るための法律であり、犬を狂犬病やその接種によるリスクから守る法律ではないということを意味しています。もちろん獣医を保護するための法律ではありません。

話はそれましたが、病気の予防という目的でワクチン接種はもちろん効果がありますのでワクチンで防げる病気が心配な方は接種した方がよいでしょう。また、その効果を維持するためには、免疫効果が持続する範囲内(3年以内)に1度はうった方がいいということになります。

つづいて、「接種証明書」の取得の意味ですが、、

トリミング、ペットホテル、ドッグカフェ、ドッグランなど、ペットが集まる施設の利用の際に「接種証明書」の提示を求められる場合があります。もっと正確に言えば「1年以内の接種証明書」を求められる場合があります。ですので、

そういった施設を利用される方は、病気の予防(免疫の持続性)という問題とは切り分けて、混合ワクチン接種を検討する必要があるかと思います。

接種を行うと、「接種証明書」を獣医さんが発行してくれますので、大切に保管、支所時してください(フォーマットは獣医さんによって違います)。くどいようですが、「1年以内の接種証明書」を求められるのは、ペット業界において「ワクチンは1年に1度うつもの」という慣習があるからで、学術的根拠に基づくものではありません。が、そういった施設は「安心、安全」をPRする必要がありますので、「まあ、3年以内だからいいでしょう」とはならないと思います。どうしても納得がいかない方がいらっしゃいましたら、運営会社さんと個別に相談する必要があると思います。

まとめ

犬におけるワクチンの話をまとめますと、

  • 狂犬病ワクチンは年に1度、法的義務により接種する必要があります。
  • 混合ワクチンについては任意です。
  • 混合ワクチンの持続効果は3年程度と見なされています。
  • だだし、日本では慣習的に1年に1度となっているので、「接種証明書」の信頼性において「3年前」等のものではペットホテルなどを利用できない場合があります。
  • 混合ワクチンについては稀ですが、アレルギー等のリスクもあります。

ということになります。ご参考まで。

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