No1とかより、スパコンはそもそもスーパーなのか?についても議論が必要だと思う
巷では、スパコン開発の是非や世界No1を目指すべきか?などが話題です。
まあ、そりゃ開発した方がいいでしょうし、その結果が世界No1なのにこしたことはないと思いますが、それ以前に、このご時世、スパコンってそもそも目くじらを立てて開発をしなければならないようなシロモノなのかを、議論した方がいいと思います。
個人的にはスパコン開発も、F1と同じように転換期にあると思います。つまり、「F1に勝つ=世界1の自動車会社」という時代ではないように、「スパコンNo1=先進国」って時代じゃないと思うわけです。
スパコンといえば、たいそうに聞こえますが、いわゆるスカラー型が主流になってからは、基本的にはCPU数やノードを増やすだけという進化なので、必要な時に、必要なCPUを買ってくればいいだけではないでしょうか?CPUもどんどんIntelになってますし(最新ではOpteron搭載がNo1ですけど)。
現に、昨年のスパコンランキングでは、スパコン用のWindowsOSを搭載したスパコン?が10位にランキングしています。180TFLOPSです(MSのまわしものじゃないですよ)。地球シミュレータは131TFLOPSです。
まあ、極論すれば金と時間さえあれば、誰でもスパコンを作れる時代です。
実際、ラインキング上位には、お手製のLinuxクラスタもいっぱいあります。
ちなみに、最新No1のマシン構成は、ここで見ることができます。
メーカーこそCrayですが、OSはLinuxだわ、CPUはAMDだわで、人によっては、10億くれたら、俺が作ってやるぞ!と思うような構成です。少なくとも、先端科学の英知を結集してうんぬん・・・というものではありません。
なので、一か所にでかいスパコンをどん!と作るより、1TFLOPSくらいの普通のスパコンが各大学に1台ずつあるくらいの方が利便性が高いと思うのですが。。。結局でかいスパコンも一人(1プログラム)が占有できるCPU時間は少ないし、利用にあたって気をつかうので、個人的には、1TFLOPSのスパコンをプログラムのデバッグをしながらだらだら一人で自由にさせてもらう方がずっといいです。
あと、スパコンの活用目的として、気象予想やドラッグデザインなどをあげる人がおりますが、実は、気象予想やドラッグデザインという分野にまじめにコンピュータを利用しようとするとスパコンだろうがパソコンだろうがあまりに非力で、「無いよりはまし」程度にしか役に立ちません(まあ、一部モデル化がフィットする分野もありますが)。自然現象を相手に正確な計算をするには、地球人類が誇るスパコンとやらは、あまりに非力です。
スパコンの非力さ?の例としてよく出る話題に巡回セールスマン問題があります。いくつかある拠点をセールスマンが回るのに、どういう順番で回れば一番効率が良いか?という簡単な問題です。
例えば、あなたが30件の得意先を持っていて、どういう順番で回れば一番営業車の燃費がいいか?といった、身近でシンプルな問題です。
こんなシンプルな問題を計算をするのに、世界No1のスパコンでも気が遠くなる時間がかかるのをご存じですか?
30件の得意先を回るパターンは30!(階乗)個あります。なので、1番効率の良いパターンを見つけ出すためには、最大で30!回計算する必要があります。
世界No1のスパコンは1ペタFLOPS程度(1000兆計算/秒:10の15乗)なので、30!回数の計算にかかる時間(年:おいおいそもそも年かよです)は、、
30! / ((10^15)*60*60*24*365) = 8411113008(84億)年です。
計算間違ってます?間違っててほしい気もしますが・・・。いずれにせよ、とんでもない時間がかかるのです!世界最速でもですよ!!!
こんな、ありふれた普通の計算をするだけで、このありさまです。なので、もし、計算目的が30!を計算することであれば、世界No1だろうと、No2だろうと、誤差です。
自然界を相手にすると、理論上は、30!どころか、50!、100!、1000!を計算しないといけない(できませんけど)ニーズはごまんとあります。
ちなみに100!ってどれくらいの数字でしょうか。FACT(100!)ってエクセルに入れても無理です。はい。
あまりに、数字が大きいので桁数だけ調べると、
log(10)100!ですから、= 157.9700037となるので、157桁です。
1000!だと、同様に、、
2567桁です。
計算にかかる時間(年)は、
1000! / ((10^15)*60*60*24*365) = 1.275961631e2545年(1.2x10の2525乗年)
宇宙が何度繰り返されても計算は終わらないでしょう。
話は変わりますが(戻りますが)、日本の面積は377914Km2だそうです。それを、1Km2で区切り、ある区画の空気が移動した場合の、他の区画への影響を計算するとか、インスリン(C257H383N65O77S6)の分子間相互作用を計算するなんて、どんな計算量になるんでしょうか・・・?
もちろん、実際にこういった分野に応用するときは、事象のモデル化(シンプルにする)などを行い、計算量を削減するわけですが・・・・。
まあ、スパコンの開発自体、それはそれでいいと思うのですが、
・量子コンピュータなどの新しいアーキテクチャの開発
・並列処理ソフトウエアの開発
など、スパコンの欠点を補う技術への投資の方が優先されるべきだと思います(詳細予算に含まれてるのかもしれませんが)。だって、今より1兆倍速いスパコンを作れたところで、ある意味、焼け石に水的なところは確かにあるのですから。