ネットマーケティングでまず押さえたい「FMOT」「ZMOT」という概念
作成者:中山陽平
前回の記事で「Shopper Marketing Summit」でのGoogleのプレゼンテーションをご紹介しました。
前回記事:「スマートフォンの発達がどのように消費者行動を変えていくか?」
この中で、
- 消費者が購買行動を起こす際には、ネット上の情報をチェックすることが当たり前になりつつある
- 「プレストア」でも「インストア」でも同様の傾向
といったことをご紹介しました。
今回は、その変化を抑える上で前提となる、大切な1つの概念について、再確認したいと思います。
それはZMOT(Zero Moment Of Truth)です。
ZMOT、Zero Moment of Truthという概念
「Shopper Marketing Summit」では、オンラインでの消費者の動きについて様々なカンファレンスが行われました。
そのサミットについてのブログの中に、以下のようなくだりがあります。
today’s tech-savvy consumer has often made up their mind before stepping in-store. Google coined this ZMOT, or the “zero moment of truth.”
(テクノロジーに詳しくなった現代の消費者は、しばしば実際に店舗に訪れる前に自分の意思決定を行っている。GoogleはそれをZMOT、Zero Moment of Truthと呼んでいる)
インターネット上での購買行動に慣れている方にとっては体感・皮膚感覚としてうなずける内容だと思います。
逆に、あまり経験の無い方にとっては、もしかしたらピンとこない部分があるかもしれません。
そこで、今回はこのZMOTについてご紹介したいと思います。
なぜなら、オンラインマーケティングを行う場合、押さえておくことが「必須」だからです。
ZMOTの前にある「FMOT」とは?
ZMOTの前に、FMOTという概念についてご紹介します。
FMOTとは、 "First Moment of Truth"のこと。
P&G(プロクター&ギャンブル)社が言い出した、インストアマーケティングの概念です。
一言でいえば
「消費者は並べられた商品を見て3~7秒で、それが魅力的かどうか見定める」
ということで、この3~7秒を「真実の瞬間(Moment of Truth)」と呼びました。
実際これでP&G社は成功。
マス広告だけではなく店舗でのプロモーションも重要なのだということを知らしめました。これがFMOTです。
FMOTが通用しなくなった
FMOT自体は
「消費者は店に来る前に欲しい物を決めているから、店の中でのマーチャンダイジングなんて意味が無いよ」
という当時の声に反対する意味もありました。なのでFMOTでの成功はそれに真っ向から反対した物と言えます。
ところが、今の消費者動向調査を見ると、どうも消費者は「店に来る前に欲しいものを決めている」時代に入っているようです。
やはりFMOTは間違っていたのでしょうか、P&Gが成功したのは偶然だったのでしょうか?
恐らくそうではありません、当時と今とでは状況が異なっているだけです。
消費者は店に来る前に欲しい物を決めている。その意思決定に至るまでに消費者が得ている情報が昔に比べて、今ははるかに多く、質がよいのです。
ただシンプルに
「今日はマスカラとコットンとハンドクリームが欲しい」
というのがFMOT以前だとすれば、今
「あの○○○さんが良いって言っていた△×社の最新のマスカラと、こないだ見たコスメサイトで評判がよくて安かったあのコットンと、テレビではもうCMを打たなくなっちゃったけれど、当時使い始めた人がまだみんな使い続けてるってツイートしてた、あのクリームを買おう、場所はこないだ特売のメールが来てた、駅前のドラッグストアで」
くらいまで決まっています。
ここまで決まっていると、もうストア内でいろいろなプローモーションをしても、以前のような効果は見込めません。アップセールするくらいしかできないかもしれません。
この状況を表したのがZMOT
この状況を表しているのがZMOTです。
陳列された実際の商品を手に取る前に、すでにもう「買っている」状態なのです。
Googleの ConsumerPackagedGoodsブログ記事から引用します。
While this first moment of truth is still important, the rise of full internet adoption and increased search engine use often lead to many brand interactions taking place between a consumer and a brand before that consumer ever sees a product on a shelf. This phenomena is what we are calling the "Zero Moment of Truth", or ZMOT.
FMOTはいまだに重要である。
だがその一方で、インターネットの大幅な普及と、検索エンジンが右肩上がりにたくさん利用されてきたことにより、
ブランドと消費者との間の交流が、実際に陳列棚に行く前からしばしば起きるようになっている。
我々はこれをZMOTと呼んでいる。
このように、すでに店に行く前に商品の選択が終わっている、というのが今の消費者の動きなんですね。
特に若い人にはその傾向が強いといわれています。消費活動で失敗したくないというメンタリズムが強いといわれています。
※このあたりは『「嫌消費」世代の研究』がお勧めです。
消費者の購買活動の流れこのように変化している。ZMOTと呼ばれる概念に表される方にシフトしている。これを踏まえた上で、モバイルマーケにしても通常のPCからのWEBマーケにしても、そして注目を浴び続けているソーシャルネットワークへのマーケティングについても、考えていかなければいけません。
ソーシャルメディアの活発化によって、この状況を促進する環境が整えられています。ほかの人のレビューや使用感などが昔より簡単にたくさん手に入るようになりました。
サクラかもしれないオフィシャルの感想ではなく、一般人の生の声を得られる環境が整ってきました。
ZMOTからFMOTに軸足が移ることは、しばらくはないと考えるのが妥当でしょう。
では、全てを考え直さなければいけないのか
では、マーケティングミックスの全てを、今すぐ1から考え直さなければいけないのか、というと、そうでは無いと思います。※もちろん、あえてゼロベースに立ち戻ることは重要かと思いますがプライオリティとして。
例えば今の状況も、見方を変えれば「陳列棚がネット上に移った」とも言えます。
その場合FMOT=ZMOTになってしまいます。
…というのは一種の言葉遊びですが、それはさておき、何が言いたかったかというと、「マーケティングの根底が覆ったわけではなく、消費者とのファーストタッチの場所が変わっただけ」ということです。
今までの自社ノウハウを生かして、その上でこの状況に合わせてメッセージングする場所や、それに合わせたメッセージの変更、商品の強みの打ち出し方の変更を戦術レベルで変更していくこと、それが順当な流れではないでしょうか。
それより大切なのは、こういった変化をきちんと感じ取れるように、マーケティング部全体の「デジタルネイティブ化」なのかもしれませんね。
みなさんのコメント
Togetterにて、皆様のコメントをいくつかまとめさせて頂きました(^_^)
こちらとしてもとても勉強になります、ありがとうございます!
Togetter -
「FMOTとZMOTの記事に対するみなさんのコメント集」 : http://togetter.com/li/132821
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